1 創世記
創世記
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1章
創世記 1:01初めに、神は天地を創造された。
創世記 1:02地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。
創世記 1:03神は言われた。「光あれ。」こうして、光があった。
創世記 1:04神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、
創世記 1:05光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。
創世記 1:06神は言われた。「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」
創世記 1:07神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。
創世記 1:08神は大空を天と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第二の日である。
創世記 1:09神は言われた。「天の下の水は一つ所に集まれ。乾いた所が現れよ。」そのようになった。
創世記 1:10神は乾いた所を地と呼び、水の集まった所を海と呼ばれた。神はこれを見て、良しとされた。
創世記 1:11神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。
創世記 1:12地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。神はこれを見て、良しとされた。
創世記 1:13夕べがあり、朝があった。第三の日である。
創世記 1:14神は言われた。「天の大空に光る物があって、昼と夜を分け、季節のしるし、日や年のしるしとなれ。
創世記 1:15天の大空に光る物があって、地を照らせ。」そのようになった。
創世記 1:16神は二つの大きな光る物と星を造り、大きな方に昼を治めさせ、小さな方に夜を治めさせられた。
創世記 1:17神はそれらを天の大空に置いて、地を照らさせ、
創世記 1:18昼と夜を治めさせ、光と闇を分けさせられた。神はこれを見て、良しとされた。
創世記 1:19夕べがあり、朝があった。第四の日である。
創世記 1:20神は言われた。「生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛べ。」
創世記 1:21神は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。神はこれを見て、良しとされた。
創世記 1:22神はそれらのものを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。」
創世記 1:23夕べがあり、朝があった。第五の日である。
創世記 1:24神は言われた。「地は、それぞれの生き物を産み出せ。家畜、這うもの、地の獣をそれぞれに産み出せ。」そのようになった。
創世記 1:25神はそれぞれの地の獣、それぞれの家畜、それぞれの土を這うものを造られた。神はこれを見て、良しとされた。
創世記 1:26神は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の獣、地を這うものすべてを支配させよう。」
創世記 1:27神は御自分にかたどって人を創造された。神にかたどって創造された。男と女に創造された。
創世記 1:28神は彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ。」
創世記 1:29神は言われた。「見よ、全地に生える、種を持つ草と種を持つ実をつける木を、すべてあなたたちに与えよう。それがあなたたちの食べ物となる。
創世記 1:30地の獣、空の鳥、地を這うものなど、すべて命あるものにはあらゆる青草を食べさせよう。」そのようになった。
創世記 1:31神はお造りになったすべてのものを御覧になった。見よ、それは極めて良かった。夕べがあり、朝があった。第六の日である。
2章
創世記 2:01天地万物は完成された。
創世記 2:02第七の日に、神は御自分の仕事を完成され、第七の日に、神は御自分の仕事を離れ、安息なさった。
創世記 2:03この日に神はすべての創造の仕事を離れ、安息なさったので、第七の日を神は祝福し、聖別された。
創世記 2:04これが天地創造の由来である。主なる神が地と天を造られたとき、
創世記 2:05地上にはまだ野の木も、野の草も生えていなかった。主なる神が地上に雨をお送りにならなかったからである。また土を耕す人もいなかった。
創世記 2:06しかし、水が地下から湧き出て、土の面をすべて潤した。
創世記 2:07主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。
創世記 2:08主なる神は、東の方のエデンに園を設け、自ら形づくった人をそこに置かれた。
創世記 2:09主なる神は、見るからに好ましく、食べるに良いものをもたらすあらゆる木を地に生えいでさせ、また園の中央には、命の木と善悪の知識の木を生えいでさせられた。
創世記 2:10エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。
創世記 2:11第一の川の名はピションで、金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。
創世記 2:12その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリも産出した。
創世記 2:13第二の川の名はギホンで、クシュ地方全域を巡っていた。
創世記 2:14第三の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第四の川はユーフラテスであった。
創世記 2:15主なる神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた。
創世記 2:16主なる神は人に命じて言われた。「園のすべての木から取って食べなさい。
創世記 2:17ただし、善悪の知識の木からは、決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう。」
創世記 2:18主なる神は言われた。「人が独りでいるのは良くない。彼に合う助ける者を造ろう。」
創世記 2:19主なる神は、野のあらゆる獣、空のあらゆる鳥を土で形づくり、人のところへ持って来て、人がそれぞれをどう呼ぶか見ておられた。人が呼ぶと、それはすべて、生き物の名となった。
創世記 2:20人はあらゆる家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名を付けたが、自分に合う助ける者は見つけることができなかった。
創世記 2:21主なる神はそこで、人を深い眠りに落とされた。人が眠り込むと、あばら骨の一部を抜き取り、その跡を肉でふさがれた。
創世記 2:22そして、人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた。主なる神が彼女を人のところへ連れて来られると、
創世記 2:23人は言った。「ついに、これこそわたしの骨の骨わたしの肉の肉。これをこそ、女(イシャー)と呼ぼう。まさに、男(イシュ)から取られたものだから。」
創世記 2:24こういうわけで、男は父母を離れて女と結ばれ、二人は一体となる。
創世記 2:25人と妻は二人とも裸であったが、恥ずかしがりはしなかった。
3章
創世記 3:01主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。蛇は女に言った。「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」
創世記 3:02女は蛇に答えた。「わたしたちは園の木の果実を食べてもよいのです。
創世記 3:03でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、と神様はおっしゃいました。」
創世記 3:04蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。
創世記 3:05それを食べると、目が開け、神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」
創世記 3:06女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。
創世記 3:07二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。
創世記 3:08その日、風の吹くころ、主なる神が園の中を歩く音が聞こえてきた。アダムと女が、主なる神の顔を避けて、園の木の間に隠れると、
創世記 3:09主なる神はアダムを呼ばれた。「どこにいるのか。」
創世記 3:10彼は答えた。「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」
創世記 3:11神は言われた。「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」
創世記 3:12アダムは答えた。「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」
創世記 3:13主なる神は女に向かって言われた。「何ということをしたのか。」女は答えた。「蛇がだましたので、食べてしまいました。」
創世記 3:14主なる神は、蛇に向かって言われた。「このようなことをしたお前は、あらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で呪われるものとなった。お前は、生涯這いまわり、塵を食らう。
創世記 3:15お前と女、お前の子孫と女の子孫の間にわたしは敵意を置く。彼はお前の頭を砕きお前は彼のかかとを砕く。」
創世記 3:16神は女に向かって言われた。「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。お前は、苦しんで子を産む。お前は男を求め彼はお前を支配する。」
創世記 3:17神はアダムに向かって言われた。「お前は女の声に従い取って食べるなと命じた木から食べた。お前のゆえに、土は呪われるものとなった。お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。
創世記 3:18お前に対して土は茨とあざみを生えいでさせる。野の草を食べようとするお前に。
創世記 3:19お前は顔に汗を流してパンを得る。土に返るときまで。お前がそこから取られた土に。塵にすぎないお前は塵に返る。」
創世記 3:20アダムは女をエバ(命)と名付けた。彼女がすべて命あるものの母となったからである。
創世記 3:21主なる神は、アダムと女に皮の衣を作って着せられた。
創世記 3:22主なる神は言われた。「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、永遠に生きる者となるおそれがある。」
創世記 3:23主なる神は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。
創世記 3:24こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。
4章
創世記 4:01さて、アダムは妻エバを知った。彼女は身ごもってカインを産み、「わたしは主によって男子を得た」と言った。
創世記 4:02彼女はまたその弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。
創世記 4:03時を経て、カインは土の実りを主のもとに献げ物として持って来た。
創世記 4:04アベルは羊の群れの中から肥えた初子を持って来た。主はアベルとその献げ物に目を留められたが、
創世記 4:05カインとその献げ物には目を留められなかった。カインは激しく怒って顔を伏せた。
創世記 4:06主はカインに言われた。「どうして怒るのか。どうして顔を伏せるのか。
創世記 4:07もしお前が正しいのなら、顔を上げられるはずではないか。正しくないなら、罪は戸口で待ち伏せており、お前を求める。お前はそれを支配せねばならない。」
創世記 4:08カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
創世記 4:09主はカインに言われた。「お前の弟アベルは、どこにいるのか。」カインは答えた。「知りません。わたしは弟の番人でしょうか。」
創世記 4:10主は言われた。「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。
創世記 4:11今、お前は呪われる者となった。お前が流した弟の血を、口を開けて飲み込んだ土よりもなお、呪われる。
創世記 4:12土を耕しても、土はもはやお前のために作物を産み出すことはない。お前は地上をさまよい、さすらう者となる。」
創世記 4:13カインは主に言った。「わたしの罪は重すぎて負いきれません。
創世記 4:14今日、あなたがわたしをこの土地から追放なさり、わたしが御顔から隠されて、地上をさまよい、さすらう者となってしまえば、わたしに出会う者はだれであれ、わたしを殺すでしょう。」
創世記 4:15主はカインに言われた。「いや、それゆえカインを殺す者は、だれであれ七倍の復讐を受けるであろう。」主はカインに出会う者がだれも彼を撃つことのないように、カインにしるしを付けられた。
創世記 4:16カインは主の前を去り、エデンの東、ノド(さすらい)の地に住んだ。
創世記 4:17カインは妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたが、その町を息子の名前にちなんでエノクと名付けた。
創世記 4:18エノクにはイラドが生まれた。イラドはメフヤエルの父となり、メフヤエルはメトシャエルの父となり、メトシャエルはレメクの父となった。
創世記 4:19レメクは二人の妻をめとった。一人はアダ、もう一人はツィラといった。
創世記 4:20アダはヤバルを産んだ。ヤバルは、家畜を飼い天幕に住む者の先祖となった。
創世記 4:21その弟はユバルといい、竪琴や笛を奏でる者すべての先祖となった。
創世記 4:22ツィラもまた、トバル・カインを産んだ。彼は青銅や鉄でさまざまの道具を作る者となった。トバル・カインの妹はナアマといった。
創世記 4:23さて、レメクは妻に言った。「アダとツィラよ、わが声を聞け。レメクの妻たちよ、わが言葉に耳を傾けよ。わたしは傷の報いに男を殺し打ち傷の報いに若者を殺す。
創世記 4:24カインのための復讐が七倍ならレメクのためには七十七倍。」
創世記 4:25再び、アダムは妻を知った。彼女は男の子を産み、セトと名付けた。カインがアベルを殺したので、神が彼に代わる子を授け(シャト)られたからである。
創世記 4:26セトにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名付けた。主の御名を呼び始めたのは、この時代のことである。
5章
創世記 5:01これはアダムの系図の書である。神は人を創造された日、神に似せてこれを造られ、
創世記 5:02男と女に創造された。創造の日に、彼らを祝福されて、人と名付けられた。
創世記 5:03アダムは百三十歳になったとき、自分に似た、自分にかたどった男の子をもうけた。アダムはその子をセトと名付けた。
創世記 5:04アダムは、セトが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:05アダムは九百三十年生き、そして死んだ。
創世記 5:06セトは百五歳になったとき、エノシュをもうけた。
創世記 5:07セトは、エノシュが生まれた後八百七年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:08セトは九百十二年生き、そして死んだ。
創世記 5:09エノシュは九十歳になったとき、ケナンをもうけた。
創世記 5:10エノシュは、ケナンが生まれた後八百十五年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:11エノシュは九百五年生き、そして死んだ。
創世記 5:12ケナンは七十歳になったとき、マハラルエルをもうけた。
創世記 5:13ケナンは、マハラルエルが生まれた後八百四十年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:14ケナンは九百十年生き、そして死んだ。
創世記 5:15マハラルエルは六十五歳になったとき、イエレドをもうけた。
創世記 5:16マハラルエルは、イエレドが生まれた後八百三十年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:17マハラルエルは八百九十五年生き、そして死んだ。
創世記 5:18イエレドは百六十二歳になったとき、エノクをもうけた。
創世記 5:19イエレドは、エノクが生まれた後八百年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:20イエレドは九百六十二年生き、そして死んだ。
創世記 5:21エノクは六十五歳になったとき、メトシェラをもうけた。
創世記 5:22エノクは、メトシェラが生まれた後、三百年神と共に歩み、息子や娘をもうけた。
創世記 5:23エノクは三百六十五年生きた。
創世記 5:24エノクは神と共に歩み、神が取られたのでいなくなった。
創世記 5:25メトシェラは百八十七歳になったとき、レメクをもうけた。
創世記 5:26メトシェラは、レメクが生まれた後七百八十二年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:27メトシェラは九百六十九年生き、そして死んだ。
創世記 5:28レメクは百八十二歳になったとき、男の子をもうけた。
創世記 5:29彼は、「主の呪いを受けた大地で働く我々の手の苦労を、この子は慰めてくれるであろう」と言って、その子をノア(慰め)と名付けた。
創世記 5:30レメクは、ノアが生まれた後五百九十五年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 5:31レメクは七百七十七年生き、そして死んだ。
創世記 5:32ノアは五百歳になったとき、セム、ハム、ヤフェトをもうけた。
6章
創世記 6:01さて、地上に人が増え始め、娘たちが生まれた。
創世記 6:02神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、おのおの選んだ者を妻にした。
創世記 6:03主は言われた。「わたしの霊は人の中に永久にとどまるべきではない。人は肉にすぎないのだから。」こうして、人の一生は百二十年となった。
創世記 6:04当時もその後も、地上にはネフィリムがいた。これは、神の子らが人の娘たちのところに入って産ませた者であり、大昔の名高い英雄たちであった。
創世記 6:05主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、
創世記 6:06地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。
創世記 6:07主は言われた。「わたしは人を創造したが、これを地上からぬぐい去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する。」
創世記 6:08しかし、ノアは主の好意を得た。
創世記 6:09これはノアの物語である。その世代の中で、ノアは神に従う無垢な人であった。ノアは神と共に歩んだ。
創世記 6:10ノアには三人の息子、セム、ハム、ヤフェトが生まれた。
創世記 6:11この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた。
創世記 6:12神は地を御覧になった。見よ、それは堕落し、すべて肉なる者はこの地で堕落の道を歩んでいた。
創世記 6:13神はノアに言われた。「すべて肉なるものを終わらせる時がわたしの前に来ている。彼らのゆえに不法が地に満ちている。見よ、わたしは地もろとも彼らを滅ぼす。
創世記 6:14あなたはゴフェルの木の箱舟を造りなさい。箱舟には小部屋を幾つも造り、内側にも外側にもタールを塗りなさい。
創世記 6:15次のようにしてそれを造りなさい。箱舟の長さを三百アンマ、幅を五十アンマ、高さを三十アンマにし、
創世記 6:16箱舟に明かり取りを造り、上から一アンマにして、それを仕上げなさい。箱舟の側面には戸口を造りなさい。また、一階と二階と三階を造りなさい。
創世記 6:17見よ、わたしは地上に洪水をもたらし、命の霊をもつ、すべて肉なるものを天の下から滅ぼす。地上のすべてのものは息絶える。
創世記 6:18わたしはあなたと契約を立てる。あなたは妻子や嫁たちと共に箱舟に入りなさい。
創世記 6:19また、すべて命あるもの、すべて肉なるものから、二つずつ箱舟に連れて入り、あなたと共に生き延びるようにしなさい。それらは、雄と雌でなければならない。
創世記 6:20それぞれの鳥、それぞれの家畜、それぞれの地を這うものが、二つずつあなたのところへ来て、生き延びるようにしなさい。
創世記 6:21更に、食べられる物はすべてあなたのところに集め、あなたと彼らの食糧としなさい。」
創世記 6:22ノアは、すべて神が命じられたとおりに果たした。
7章
創世記 7:01主はノアに言われた。「さあ、あなたとあなたの家族は皆、箱舟に入りなさい。この世代の中であなただけはわたしに従う人だと、わたしは認めている。
創世記 7:02あなたは清い動物をすべて七つがいずつ取り、また、清くない動物をすべて一つがいずつ取りなさい。
創世記 7:03空の鳥も七つがい取りなさい。全地の面に子孫が生き続けるように。
創世記 7:04七日の後、わたしは四十日四十夜地上に雨を降らせ、わたしが造ったすべての生き物を地の面からぬぐい去ることにした。」
創世記 7:05ノアは、すべて主が命じられたとおりにした。
創世記 7:06ノアが六百歳のとき、洪水が地上に起こり、水が地の上にみなぎった。
創世記 7:07ノアは妻子や嫁たちと共に洪水を免れようと箱舟に入った。
創世記 7:08清い動物も清くない動物も、鳥も地を這うものもすべて、
創世記 7:09二つずつ箱舟のノアのもとに来た。それは神がノアに命じられたとおりに、雄と雌であった。
創世記 7:10七日が過ぎて、洪水が地上に起こった。
創世記 7:11ノアの生涯の第六百年、第二の月の十七日、この日、大いなる深淵の源がことごとく裂け、天の窓が開かれた。
創世記 7:12雨が四十日四十夜地上に降り続いたが、
創世記 7:13まさにこの日、ノアも、息子のセム、ハム、ヤフェト、ノアの妻、この三人の息子の嫁たちも、箱舟に入った。
創世記 7:14彼らと共にそれぞれの獣、それぞれの家畜、それぞれの地を這うもの、それぞれの鳥、小鳥や翼のあるものすべて、
創世記 7:15命の霊をもつ肉なるものは、二つずつノアのもとに来て箱舟に入った。
創世記 7:16神が命じられたとおりに、すべて肉なるものの雄と雌とが来た。主は、ノアの後ろで戸を閉ざされた。
創世記 7:17洪水は四十日間地上を覆った。水は次第に増して箱舟を押し上げ、箱舟は大地を離れて浮かんだ。
創世記 7:18水は勢力を増し、地の上に大いにみなぎり、箱舟は水の面を漂った。
創世記 7:19水はますます勢いを加えて地上にみなぎり、およそ天の下にある高い山はすべて覆われた。
創世記 7:20水は勢いを増して更にその上十五アンマに達し、山々を覆った。
創世記 7:21地上で動いていた肉なるものはすべて、鳥も家畜も獣も地に群がり這うものも人も、ことごとく息絶えた。
創世記 7:22乾いた地のすべてのもののうち、その鼻に命の息と霊のあるものはことごとく死んだ。
創世記 7:23地の面にいた生き物はすべて、人をはじめ、家畜、這うもの、空の鳥に至るまでぬぐい去られた。彼らは大地からぬぐい去られ、ノアと、彼と共に箱舟にいたものだけが残った。
創世記 7:24水は百五十日の間、地上で勢いを失わなかった。
8章
創世記 8:01神は、ノアと彼と共に箱舟にいたすべての獣とすべての家畜を御心に留め、地の上に風を吹かせられたので、水が減り始めた。
創世記 8:02また、深淵の源と天の窓が閉じられたので、天からの雨は降りやみ、
創世記 8:03水は地上からひいて行った。百五十日の後には水が減って、
創世記 8:04第七の月の十七日に箱舟はアララト山の上に止まった。
創世記 8:05水はますます減って第十の月になり、第十の月の一日には山々の頂が現れた。
創世記 8:06四十日たって、ノアは自分が造った箱舟の窓を開き、
創世記 8:07烏を放した。烏は飛び立ったが、地上の水が乾くのを待って、出たり入ったりした。
創世記 8:08ノアは鳩を彼のもとから放して、地の面から水がひいたかどうかを確かめようとした。
創世記 8:09しかし、鳩は止まる所が見つからなかったので、箱舟のノアのもとに帰って来た。水がまだ全地の面を覆っていたからである。ノアは手を差し伸べて鳩を捕らえ、箱舟の自分のもとに戻した。
創世記 8:10更に七日待って、彼は再び鳩を箱舟から放した。
創世記 8:11鳩は夕方になってノアのもとに帰って来た。見よ、鳩はくちばしにオリーブの葉をくわえていた。ノアは水が地上からひいたことを知った。
創世記 8:12彼は更に七日待って、鳩を放した。鳩はもはやノアのもとに帰って来なかった。
創世記 8:13ノアが六百一歳のとき、最初の月の一日に、地上の水は乾いた。ノアは箱舟の覆いを取り外して眺めた。見よ、地の面は乾いていた。
創世記 8:14第二の月の二十七日になると、地はすっかり乾いた。
創世記 8:15神はノアに仰せになった。
創世記 8:16「さあ、あなたもあなたの妻も、息子も嫁も、皆一緒に箱舟から出なさい。
創世記 8:17すべて肉なるもののうちからあなたのもとに来たすべての動物、鳥も家畜も地を這うものも一緒に連れ出し、地に群がり、地上で子を産み、増えるようにしなさい。」
創世記 8:18そこで、ノアは息子や妻や嫁と共に外へ出た。
創世記 8:19獣、這うもの、鳥、地に群がるもの、それぞれすべて箱舟から出た。
創世記 8:20ノアは主のために祭壇を築いた。そしてすべての清い家畜と清い鳥のうちから取り、焼き尽くす献げ物として祭壇の上にささげた。
創世記 8:21主は宥めの香りをかいで、御心に言われた。「人に対して大地を呪うことは二度とすまい。人が心に思うことは、幼いときから悪いのだ。わたしは、この度したように生き物をことごとく打つことは、二度とすまい。
創世記 8:22地の続くかぎり、種蒔きも刈り入れも寒さも暑さも、夏も冬も昼も夜も、やむことはない。」
9章
創世記 9:01神はノアと彼の息子たちを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地に満ちよ。
創世記 9:02地のすべての獣と空のすべての鳥は、地を這うすべてのものと海のすべての魚と共に、あなたたちの前に恐れおののき、あなたたちの手にゆだねられる。
創世記 9:03動いている命あるものは、すべてあなたたちの食糧とするがよい。わたしはこれらすべてのものを、青草と同じようにあなたたちに与える。
創世記 9:04ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない。
創世記 9:05また、あなたたちの命である血が流された場合、わたしは賠償を要求する。いかなる獣からも要求する。人間どうしの血については、人間から人間の命を賠償として要求する。
創世記 9:06人の血を流す者は人によって自分の血を流される。人は神にかたどって造られたからだ。
創世記 9:07あなたたちは産めよ、増えよ地に群がり、地に増えよ。」
創世記 9:08神はノアと彼の息子たちに言われた。
創世記 9:09「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。
創世記 9:10あなたたちと共にいるすべての生き物、またあなたたちと共にいる鳥や家畜や地のすべての獣など、箱舟から出たすべてのもののみならず、地のすべての獣と契約を立てる。
創世記 9:11わたしがあなたたちと契約を立てたならば、二度と洪水によって肉なるものがことごとく滅ぼされることはなく、洪水が起こって地を滅ぼすことも決してない。」
創世記 9:12更に神は言われた。「あなたたちならびにあなたたちと共にいるすべての生き物と、代々とこしえにわたしが立てる契約のしるしはこれである。
創世記 9:13すなわち、わたしは雲の中にわたしの虹を置く。これはわたしと大地の間に立てた契約のしるしとなる。
創世記 9:14わたしが地の上に雲を湧き起こらせ、雲の中に虹が現れると、
創世記 9:15わたしは、わたしとあなたたちならびにすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた契約に心を留める。水が洪水となって、肉なるものをすべて滅ぼすことは決してない。
創世記 9:16雲の中に虹が現れると、わたしはそれを見て、神と地上のすべての生き物、すべて肉なるものとの間に立てた永遠の契約に心を留める。」
創世記 9:17神はノアに言われた。「これが、わたしと地上のすべて肉なるものとの間に立てた契約のしるしである。」
創世記 9:18箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。
創世記 9:19この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。
創世記 9:20さて、ノアは農夫となり、ぶどう畑を作った。
創世記 9:21あるとき、ノアはぶどう酒を飲んで酔い、天幕の中で裸になっていた。
創世記 9:22カナンの父ハムは、自分の父の裸を見て、外にいた二人の兄弟に告げた。
創世記 9:23セムとヤフェトは着物を取って自分たちの肩に掛け、後ろ向きに歩いて行き、父の裸を覆った。二人は顔を背けたままで、父の裸を見なかった。
創世記 9:24ノアは酔いからさめると、末の息子がしたことを知り、
創世記 9:25こう言った。「カナンは呪われよ奴隷の奴隷となり、兄たちに仕えよ。」
創世記 9:26また言った。「セムの神、主をたたえよ。カナンはセムの奴隷となれ。
創世記 9:27神がヤフェトの土地を広げ(ヤフェト)セムの天幕に住まわせカナンはその奴隷となれ。」
創世記 9:28ノアは、洪水の後三百五十年生きた。
創世記 9:29ノアは九百五十歳になって、死んだ。
10章
創世記 10:01ノアの息子、セム、ハム、ヤフェトの系図は次のとおりである。洪水の後、彼らに息子が生まれた。
創世記 10:02ヤフェトの子孫はゴメル、マゴグ、メディア、ヤワン、トバル、メシェク、ティラスであった。
創世記 10:03ゴメルの子孫は、アシュケナズ、リファト、トガルマであった。
創世記 10:04ヤワンの子孫は、エリシャ、タルシシュ、キティム、ロダニムであった。
創世記 10:05海沿いの国々は、彼らから出て、それぞれの地に、その言語、氏族、民族に従って住むようになった。
創世記 10:06ハムの子孫は、クシュ、エジプト、プト、カナンであった。
創世記 10:07クシュの子孫はセバ、ハビラ、サブタ、ラマ、サブテカであり、ラマの子孫はシェバとデダンであった。
創世記 10:08クシュにはまた、ニムロドが生まれた。ニムロドは地上で最初の勇士となった。
創世記 10:09彼は、主の御前に勇敢な狩人であり、「主の御前に勇敢な狩人ニムロドのようだ」という言い方がある。
創世記 10:10彼の王国の主な町は、バベル、ウルク、アッカドであり、それらはすべてシンアルの地にあった。
創世記 10:11彼はその地方からアッシリアに進み、ニネベ、レホボト・イル、カラ、
創世記 10:12レセンを建てた。レセンはニネベとカラとの間にある、非常に大きな町であった。
創世記 10:13エジプトにはリディア人、アナミム人、レハビム人、ナフトヒム人、
創世記 10:14上エジプト人、カスルヒム人、カフトル人が生まれた。このカフトル人からペリシテ人が出た。
創世記 10:15カナンには長男シドンとヘト、
創世記 10:16また、エブス人、アモリ人、ギルガシ人、
創世記 10:17ヒビ人、アルキ人、シニ人、
創世記 10:18アルワド人、ツェマリ人、ハマト人が生まれた。その後、カナン人の諸氏族が広がった。
創世記 10:19カナン人の領土は、シドンから南下してゲラルを経てガザまでを含み、更に、ソドム、ゴモラ、アドマ、ツェボイムを経てラシャまでを含んだ。
創世記 10:20これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたハムの子孫である。
創世記 10:21セムにもまた子供が生まれた。彼はエベルのすべての子孫の先祖であり、ヤフェトの兄であった。
創世記 10:22セムの子孫はエラム、アシュル、アルパクシャド、ルド、アラムであった。
創世記 10:23アラムの子孫は、ウツ、フル、ゲテル、マシュであった。
創世記 10:24アルパクシャドにはシェラが生まれ、シェラにはエベルが生まれた。
創世記 10:25エベルには二人の息子が生まれた。ひとりの名は、その時代に土地が分けられた(パラグ)ので、ペレグといい、その兄弟はヨクタンといった。
創世記 10:26ヨクタンには、アルモダド、シェレフ、ハツァルマベト、イエラ、
創世記 10:27ハドラム、ウザル、ディクラ、
創世記 10:28オバル、アビマエル、シェバ、
創世記 10:29オフィル、ハビラ、ヨバブが生まれた。これらは皆、ヨクタンの息子であった。
創世記 10:30彼らはメシャからセファルに至る東の高原地帯に住んでいた。
創世記 10:31これらが、氏族、言語、地域、民族ごとにまとめたセムの子孫である。
創世記 10:32ノアの子孫である諸氏族を、民族ごとの系図にまとめると以上のようになる。地上の諸民族は洪水の後、彼らから分かれ出た。
11章
創世記 11:01世界中は同じ言葉を使って、同じように話していた。
創世記 11:02東の方から移動してきた人々は、シンアルの地に平野を見つけ、そこに住み着いた。
創世記 11:03彼らは、「れんがを作り、それをよく焼こう」と話し合った。石の代わりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを用いた。
創世記 11:04彼らは、「さあ、天まで届く塔のある町を建て、有名になろう。そして、全地に散らされることのないようにしよう」と言った。
創世記 11:05主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、
創世記 11:06言われた。「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。
創世記 11:07我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう。」
創世記 11:08主は彼らをそこから全地に散らされたので、彼らはこの町の建設をやめた。
創世記 11:09こういうわけで、この町の名はバベルと呼ばれた。主がそこで全地の言葉を混乱(バラル)させ、また、主がそこから彼らを全地に散らされたからである。
創世記 11:10セムの系図は次のとおりである。セムが百歳になったとき、アルパクシャドが生まれた。それは洪水の二年後のことであった。
創世記 11:11セムは、アルパクシャドが生まれた後五百年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:12アルパクシャドが三十五歳になったとき、シェラが生まれた。
創世記 11:13アルパクシャドは、シェラが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:14シェラが三十歳になったとき、エベルが生まれた。
創世記 11:15シェラは、エベルが生まれた後四百三年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:16エベルが三十四歳になったとき、ペレグが生まれた。
創世記 11:17エベルは、ペレグが生まれた後四百三十年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:18ペレグが三十歳になったとき、レウが生まれた。
創世記 11:19ペレグは、レウが生まれた後二百九年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:20レウが三十二歳になったとき、セルグが生まれた。
創世記 11:21レウは、セルグが生まれた後二百七年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:22セルグが三十歳になったとき、ナホルが生まれた。
創世記 11:23セルグは、ナホルが生まれた後二百年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:24ナホルが二十九歳になったとき、テラが生まれた。
創世記 11:25ナホルは、テラが生まれた後百十九年生きて、息子や娘をもうけた。
創世記 11:26テラが七十歳になったとき、アブラム、ナホル、ハランが生まれた。
創世記 11:27テラの系図は次のとおりである。テラにはアブラム、ナホル、ハランが生まれた。ハランにはロトが生まれた。
創世記 11:28ハランは父のテラより先に、故郷カルデアのウルで死んだ。
創世記 11:29アブラムとナホルはそれぞれ妻をめとった。アブラムの妻の名はサライ、ナホルの妻の名はミルカといった。ミルカはハランの娘である。ハランはミルカとイスカの父であった。
創世記 11:30サライは不妊の女で、子供ができなかった。
創世記 11:31テラは、息子アブラムと、ハランの息子で自分の孫であるロト、および息子アブラムの妻で自分の嫁であるサライを連れて、カルデアのウルを出発し、カナン地方に向かった。彼らはハランまで来ると、そこにとどまった。
創世記 11:32テラは二百五年の生涯を終えて、ハランで死んだ。
12章
創世記 12:01主はアブラムに言われた。「あなたは生まれ故郷父の家を離れてわたしが示す地に行きなさい。
創世記 12:02わたしはあなたを大いなる国民にしあなたを祝福し、あなたの名を高める祝福の源となるように。
創世記 12:03あなたを祝福する人をわたしは祝福しあなたを呪う者をわたしは呪う。地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入る。」
創世記 12:04アブラムは、主の言葉に従って旅立った。ロトも共に行った。アブラムは、ハランを出発したとき七十五歳であった。
創世記 12:05アブラムは妻のサライ、甥のロトを連れ、蓄えた財産をすべて携え、ハランで加わった人々と共にカナン地方へ向かって出発し、カナン地方に入った。
創世記 12:06アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン人が住んでいた。
創世記 12:07主はアブラムに現れて、言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。」アブラムは、彼に現れた主のために、そこに祭壇を築いた。
創世記 12:08アブラムは、そこからベテルの東の山へ移り、西にベテル、東にアイを望む所に天幕を張って、そこにも主のために祭壇を築き、主の御名を呼んだ。
創世記 12:09アブラムは更に旅を続け、ネゲブ地方へ移った。
創世記 12:10その地方に飢饉があった。アブラムは、その地方の飢饉がひどかったので、エジプトに下り、そこに滞在することにした。
創世記 12:11エジプトに入ろうとしたとき、妻サライに言った。「あなたが美しいのを、わたしはよく知っている。
創世記 12:12エジプト人があなたを見たら、『この女はあの男の妻だ』と言って、わたしを殺し、あなたを生かしておくにちがいない。
創世記 12:13どうか、わたしの妹だ、と言ってください。そうすれば、わたしはあなたのゆえに幸いになり、あなたのお陰で命も助かるだろう。」
創世記 12:14アブラムがエジプトに入ると、エジプト人はサライを見て、大変美しいと思った。
創世記 12:15ファラオの家臣たちも彼女を見て、ファラオに彼女のことを褒めたので、サライはファラオの宮廷に召し入れられた。
創世記 12:16アブラムも彼女のゆえに幸いを受け、羊の群れ、牛の群れ、ろば、男女の奴隷、雌ろば、らくだなどを与えられた。
創世記 12:17ところが主は、アブラムの妻サライのことで、ファラオと宮廷の人々を恐ろしい病気にかからせた。
創世記 12:18ファラオはアブラムを呼び寄せて言った。「あなたはわたしに何ということをしたのか。なぜ、あの婦人は自分の妻だと、言わなかったのか。
創世記 12:19なぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。だからこそ、わたしの妻として召し入れたのだ。さあ、あなたの妻を連れて、立ち去ってもらいたい。」
創世記 12:20ファラオは家来たちに命じて、アブラムを、その妻とすべての持ち物と共に送り出させた。
13章
創世記 13:01アブラムは、妻と共に、すべての持ち物を携え、エジプトを出て再びネゲブ地方へ上った。ロトも一緒であった。
創世記 13:02アブラムは非常に多くの家畜や金銀を持っていた。
創世記 13:03ネゲブ地方から更に、ベテルに向かって旅を続け、ベテルとアイとの間の、以前に天幕を張った所まで来た。
創世記 13:04そこは、彼が最初に祭壇を築いて、主の御名を呼んだ場所であった。
創世記 13:05アブラムと共に旅をしていたロトもまた、羊や牛の群れを飼い、たくさんの天幕を持っていた。
創世記 13:06その土地は、彼らが一緒に住むには十分ではなかった。彼らの財産が多すぎたから、一緒に住むことができなかったのである。
創世記 13:07アブラムの家畜を飼う者たちと、ロトの家畜を飼う者たちとの間に争いが起きた。そのころ、その地方にはカナン人もペリジ人も住んでいた。
創世記 13:08アブラムはロトに言った。「わたしたちは親類どうしだ。わたしとあなたの間ではもちろん、お互いの羊飼いの間でも争うのはやめよう。
創世記 13:09あなたの前には幾らでも土地があるのだから、ここで別れようではないか。あなたが左に行くなら、わたしは右に行こう。あなたが右に行くなら、わたしは左に行こう。」
創世記 13:10ロトが目を上げて眺めると、ヨルダン川流域の低地一帯は、主がソドムとゴモラを滅ぼす前であったので、ツォアルに至るまで、主の園のように、エジプトの国のように、見渡すかぎりよく潤っていた。
創世記 13:11ロトはヨルダン川流域の低地一帯を選んで、東へ移って行った。こうして彼らは、左右に別れた。
創世記 13:12アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。
創世記 13:13ソドムの住民は邪悪で、主に対して多くの罪を犯していた。
創世記 13:14主は、ロトが別れて行った後、アブラムに言われた。「さあ、目を上げて、あなたがいる場所から東西南北を見渡しなさい。
創世記 13:15見えるかぎりの土地をすべて、わたしは永久にあなたとあなたの子孫に与える。
創世記 13:16あなたの子孫を大地の砂粒のようにする。大地の砂粒が数えきれないように、あなたの子孫も数えきれないであろう。
創世記 13:17さあ、この土地を縦横に歩き回るがよい。わたしはそれをあなたに与えるから。」
創世記 13:18アブラムは天幕を移し、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところに来て住み、そこに主のために祭壇を築いた。
14章
創世記 14:01シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨク、エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアルが、
創世記 14:02ソドムの王ベラ、ゴモラの王ビルシャ、アドマの王シンアブ、ツェボイムの王シェムエベル、ベラ、すなわちツォアルの王と戦ったとき、
創世記 14:03これら五人の王は皆、シディムの谷、すなわち塩の海で同盟を結んだ。
創世記 14:04彼らは十二年間ケドルラオメルに支配されていたが、十三年目に背いたのである。
創世記 14:05十四年目に、ケドルラオメルとその味方の王たちが来て、アシュテロト・カルナイムでレファイム人を、ハムでズジム人を、シャベ・キルヤタイムでエミム人を、
創世記 14:06セイルの山地でフリ人を撃ち、荒れ野に近いエル・パランまで進んだ。
創世記 14:07彼らは転進して、エン・ミシュパト、すなわちカデシュに向かい、アマレク人の全領土とハツェツォン・タマルに住むアモリ人を撃った。
創世記 14:08そこで、ソドムの王、ゴモラの王、アドマの王、ツェボイムの王、ベラすなわちツォアルの王は兵を繰り出し、シディムの谷で彼らと戦おうと陣を敷いた。
創世記 14:09エラムの王ケドルラオメル、ゴイムの王ティドアル、シンアルの王アムラフェル、エラサルの王アルヨクの四人の王に対して、これら五人の王が戦いを挑んだのである。
創世記 14:10シディムの谷には至るところに天然アスファルトの穴があった。ソドムとゴモラの王は逃げるとき、その穴に落ちた。残りの王は山へ逃れた。
創世記 14:11ソドムとゴモラの財産や食糧はすべて奪い去られ、
創世記 14:12ソドムに住んでいたアブラムの甥ロトも、財産もろとも連れ去られた。
創世記 14:13逃げ延びた一人の男がヘブライ人アブラムのもとに来て、そのことを知らせた。アブラムは当時、アモリ人マムレの樫の木の傍らに住んでいた。マムレはエシュコルとアネルの兄弟で、彼らはアブラムと同盟を結んでいた。
創世記 14:14アブラムは、親族の者が捕虜になったと聞いて、彼の家で生まれた奴隷で、訓練を受けた者三百十八人を召集し、ダンまで追跡した。
創世記 14:15夜、彼と僕たちは分かれて敵を襲い、ダマスコの北のホバまで追跡した。
創世記 14:16アブラムはすべての財産を取り返し、親族のロトとその財産、女たちやそのほかの人々も取り戻した。
創世記 14:17アブラムがケドルラオメルとその味方の王たちを撃ち破って帰って来たとき、ソドムの王はシャベの谷、すなわち王の谷まで彼を出迎えた。
創世記 14:18いと高き神の祭司であったサレムの王メルキゼデクも、パンとぶどう酒を持って来た。
創世記 14:19彼はアブラムを祝福して言った。「天地の造り主、いと高き神にアブラムは祝福されますように。
創世記 14:20敵をあなたの手に渡されたいと高き神がたたえられますように。」アブラムはすべての物の十分の一を彼に贈った。
創世記 14:21ソドムの王はアブラムに、「人はわたしにお返しください。しかし、財産はお取りください」と言ったが、創世記 14:22アブラムはソドムの王に言った。「わたしは、天地の造り主、いと高き神、主に手を上げて誓います。
創世記 14:23あなたの物は、たとえ糸一筋、靴ひも一本でも、決していただきません。『アブラムを裕福にしたのは、このわたしだ』と、あなたに言われたくありません。
創世記 14:24わたしは何も要りません。ただ、若い者たちが食べたものと、わたしと共に戦った人々、すなわち、アネルとエシュコルとマムレの分は別です。彼らには分け前を取らせてください。」
15章
創世記 15:01これらのことの後で、主の言葉が幻の中でアブラムに臨んだ。「恐れるな、アブラムよ。わたしはあなたの盾である。あなたの受ける報いは非常に大きいであろう。」
創世記 15:02アブラムは尋ねた。「わが神、主よ。わたしに何をくださるというのですか。わたしには子供がありません。家を継ぐのはダマスコのエリエゼルです。」
創世記 15:03アブラムは言葉をついだ。「御覧のとおり、あなたはわたしに子孫を与えてくださいませんでしたから、家の僕が跡を継ぐことになっています。」
創世記 15:04見よ、主の言葉があった。「その者があなたの跡を継ぐのではなく、あなたから生まれる者が跡を継ぐ。」
創世記 15:05主は彼を外に連れ出して言われた。「天を仰いで、星を数えることができるなら、数えてみるがよい。」そして言われた。「あなたの子孫はこのようになる。」
創世記 15:06アブラムは主を信じた。主はそれを彼の義と認められた。
創世記 15:07主は言われた。「わたしはあなたをカルデアのウルから導き出した主である。わたしはあなたにこの土地を与え、それを継がせる。」
創世記 15:08アブラムは尋ねた。「わが神、主よ。この土地をわたしが継ぐことを、何によって知ることができましょうか。」
創世記 15:09主は言われた。「三歳の雌牛と、三歳の雌山羊と、三歳の雄羊と、山鳩と、鳩の雛とをわたしのもとに持って来なさい。」
創世記 15:10アブラムはそれらのものをみな持って来て、真っ二つに切り裂き、それぞれを互いに向かい合わせて置いた。ただ、鳥は切り裂かなかった。
創世記 15:11禿鷹がこれらの死体をねらって降りて来ると、アブラムは追い払った。
創世記 15:12日が沈みかけたころ、アブラムは深い眠りに襲われた。すると、恐ろしい大いなる暗黒が彼に臨んだ。
創世記 15:13主はアブラムに言われた。「よく覚えておくがよい。あなたの子孫は異邦の国で寄留者となり、四百年の間奴隷として仕え、苦しめられるであろう。
創世記 15:14しかしわたしは、彼らが奴隷として仕えるその国民を裁く。その後、彼らは多くの財産を携えて脱出するであろう。
創世記 15:15あなた自身は、長寿を全うして葬られ、安らかに先祖のもとに行く。
創世記 15:16ここに戻って来るのは、四代目の者たちである。それまでは、アモリ人の罪が極みに達しないからである。」
創世記 15:17日が沈み、暗闇に覆われたころ、突然、煙を吐く炉と燃える松明が二つに裂かれた動物の間を通り過ぎた。
創世記 15:18その日、主はアブラムと契約を結んで言われた。「あなたの子孫にこの土地を与える。エジプトの川から大河ユーフラテスに至るまで、
創世記 15:19カイン人、ケナズ人、カドモニ人、
創世記 15:20ヘト人、ペリジ人、レファイム人、
創世記 15:21アモリ人、カナン人、ギルガシ人、エブス人の土地を与える。」
16章
創世記 16:01アブラムの妻サライには、子供が生まれなかった。彼女には、ハガルというエジプト人の女奴隷がいた。
創世記 16:02サライはアブラムに言った。「主はわたしに子供を授けてくださいません。どうぞ、わたしの女奴隷のところに入ってください。わたしは彼女によって、子供を与えられるかもしれません。」アブラムは、サライの願いを聞き入れた。
創世記 16:03アブラムの妻サライは、エジプト人の女奴隷ハガルを連れて来て、夫アブラムの側女とした。アブラムがカナン地方に住んでから、十年後のことであった。
創世記 16:04アブラムはハガルのところに入り、彼女は身ごもった。ところが、自分が身ごもったのを知ると、彼女は女主人を軽んじた。
創世記 16:05サライはアブラムに言った。「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです。女奴隷をあなたのふところに与えたのはわたしなのに、彼女は自分が身ごもったのを知ると、わたしを軽んじるようになりました。主がわたしとあなたとの間を裁かれますように。」
創世記 16:06アブラムはサライに答えた。「あなたの女奴隷はあなたのものだ。好きなようにするがいい。」サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた。
創世記 16:07主の御使いが荒れ野の泉のほとり、シュル街道に沿う泉のほとりで彼女と出会って、
創世記 16:08言った。「サライの女奴隷ハガルよ。あなたはどこから来て、どこへ行こうとしているのか。」「女主人サライのもとから逃げているところです」と答えると、
創世記 16:09主の御使いは言った。「女主人のもとに帰り、従順に仕えなさい。」
創世記 16:10主の御使いは更に言った。「わたしは、あなたの子孫を数えきれないほど多く増やす。」
創世記 16:11主の御使いはまた言った。「今、あなたは身ごもっている。やがてあなたは男の子を産む。その子をイシュマエルと名付けなさい主があなたの悩みをお聞きになられたから。
創世記 16:12彼は野生のろばのような人になる。彼があらゆる人にこぶしを振りかざすので人々は皆、彼にこぶしを振るう。彼は兄弟すべてに敵対して暮らす。」
創世記 16:13ハガルは自分に語りかけた主の御名を呼んで、「あなたこそエル・ロイ(わたしを顧みられる神)です」と言った。それは、彼女が、「神がわたしを顧みられた後もなお、わたしはここで見続けていたではないか」と言ったからである。
創世記 16:14そこで、その井戸は、ベエル・ラハイ・ロイと呼ばれるようになった。それはカデシュとベレドの間にある。
創世記 16:15ハガルはアブラムとの間に男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだ男の子をイシュマエルと名付けた。
創世記 16:16ハガルがイシュマエルを産んだとき、アブラムは八十六歳であった。
17章
創世記 17:01アブラムが九十九歳になったとき、主はアブラムに現れて言われた。「わたしは全能の神である。あなたはわたしに従って歩み、全き者となりなさい。
創世記 17:02わたしは、あなたとの間にわたしの契約を立て、あなたをますます増やすであろう。」
創世記 17:03アブラムはひれ伏した。神は更に、語りかけて言われた。
創世記 17:04「これがあなたと結ぶわたしの契約である。あなたは多くの国民の父となる。
創世記 17:05あなたは、もはやアブラムではなく、アブラハムと名乗りなさい。あなたを多くの国民の父とするからである。
創世記 17:06わたしは、あなたをますます繁栄させ、諸国民の父とする。王となる者たちがあなたから出るであろう。
創世記 17:07わたしは、あなたとの間に、また後に続く子孫との間に契約を立て、それを永遠の契約とする。そして、あなたとあなたの子孫の神となる。
創世記 17:08わたしは、あなたが滞在しているこのカナンのすべての土地を、あなたとその子孫に、永久の所有地として与える。わたしは彼らの神となる。」
創世記 17:09神はまた、アブラハムに言われた。「だからあなたも、わたしの契約を守りなさい、あなたも後に続く子孫も。
創世記 17:10あなたたち、およびあなたの後に続く子孫と、わたしとの間で守るべき契約はこれである。すなわち、あなたたちの男子はすべて、割礼を受ける。
創世記 17:11包皮の部分を切り取りなさい。これが、わたしとあなたたちとの間の契約のしるしとなる。
創世記 17:12いつの時代でも、あなたたちの男子はすべて、直系の子孫はもちろんのこと、家で生まれた奴隷も、外国人から買い取った奴隷であなたの子孫でない者も皆、生まれてから八日目に割礼を受けなければならない。
創世記 17:13あなたの家で生まれた奴隷も、買い取った奴隷も、必ず割礼を受けなければならない。それによって、わたしの契約はあなたの体に記されて永遠の契約となる。
創世記 17:14包皮の部分を切り取らない無割礼の男がいたなら、その人は民の間から断たれる。わたしの契約を破ったからである。」
創世記 17:15神はアブラハムに言われた。「あなたの妻サライは、名前をサライではなく、サラと呼びなさい。
創世記 17:16わたしは彼女を祝福し、彼女によってあなたに男の子を与えよう。わたしは彼女を祝福し、諸国民の母とする。諸民族の王となる者たちが彼女から出る。」
創世記 17:17アブラハムはひれ伏した。しかし笑って、ひそかに言った。「百歳の男に子供が生まれるだろうか。九十歳のサラに子供が産めるだろうか。」
創世記 17:18アブラハムは神に言った。「どうか、イシュマエルが御前に生き永らえますように。」
創世記 17:19神は言われた。「いや、あなたの妻サラがあなたとの間に男の子を産む。その子をイサク(彼は笑う)と名付けなさい。わたしは彼と契約を立て、彼の子孫のために永遠の契約とする。
創世記 17:20イシュマエルについての願いも聞き入れよう。必ず、わたしは彼を祝福し、大いに子供を増やし繁栄させる。彼は十二人の首長の父となろう。わたしは彼を大いなる国民とする。
創世記 17:21しかし、わたしの契約は、来年の今ごろ、サラがあなたとの間に産むイサクと立てる。」
創世記 17:22神はこう語り終えると、アブラハムを離れて昇って行かれた。
創世記 17:23アブラハムは、息子のイシュマエルをはじめ、家で生まれた奴隷や買い取った奴隷など、自分の家にいる人々のうち、男子を皆集めて、すぐその日に、神が命じられたとおり包皮に割礼を施した。
創世記 17:24アブラハムが包皮に割礼を受けたのは、九十九歳、
創世記 17:25息子イシュマエルが包皮に割礼を受けたのは、十三歳であった。
創世記 17:26アブラハムと息子のイシュマエルは、すぐその日に割礼を受けた。
創世記 17:27アブラハムの家の男子は、家で生まれた奴隷も外国人から買い取った奴隷も皆、共に割礼を受けた。
18章
創世記 18:01主はマムレの樫の木の所でアブラハムに現れた。暑い真昼に、アブラハムは天幕の入り口に座っていた。
創世記 18:02目を上げて見ると、三人の人が彼に向かって立っていた。アブラハムはすぐに天幕の入り口から走り出て迎え、地にひれ伏して、
創世記 18:03言った。「お客様、よろしければ、どうか、僕のもとを通り過ぎないでください。
創世記 18:04水を少々持って来させますから、足を洗って、木陰でどうぞひと休みなさってください。
創世記 18:05何か召し上がるものを調えますので、疲れをいやしてから、お出かけください。せっかく、僕の所の近くをお通りになったのですから。」その人たちは言った。「では、お言葉どおりにしましょう。」
創世記 18:06アブラハムは急いで天幕に戻り、サラのところに来て言った。「早く、上等の小麦粉を三セアほどこねて、パン菓子をこしらえなさい。」
創世記 18:07アブラハムは牛の群れのところへ走って行き、柔らかくておいしそうな子牛を選び、召し使いに渡し、急いで料理させた。
創世記 18:08アブラハムは、凝乳、乳、出来立ての子牛の料理などを運び、彼らの前に並べた。そして、彼らが木陰で食事をしている間、そばに立って給仕をした。
創世記 18:09彼らはアブラハムに尋ねた。「あなたの妻のサラはどこにいますか。」「はい、天幕の中におります」とアブラハムが答えると、
創世記 18:10彼らの一人が言った。「わたしは来年の今ごろ、必ずここにまた来ますが、そのころには、あなたの妻のサラに男の子が生まれているでしょう。」サラは、すぐ後ろの天幕の入り口で聞いていた。
創世記 18:11アブラハムもサラも多くの日を重ねて老人になっており、しかもサラは月のものがとうになくなっていた。
創世記 18:12サラはひそかに笑った。自分は年をとり、もはや楽しみがあるはずもなし、主人も年老いているのに、と思ったのである。
創世記 18:13主はアブラハムに言われた。「なぜサラは笑ったのか。なぜ年をとった自分に子供が生まれるはずがないと思ったのだ。
創世記 18:14主に不可能なことがあろうか。来年の今ごろ、わたしはここに戻ってくる。そのころ、サラには必ず男の子が生まれている。」
創世記 18:15サラは恐ろしくなり、打ち消して言った。「わたしは笑いませんでした。」主は言われた。「いや、あなたは確かに笑った。」
創世記 18:16その人たちはそこを立って、ソドムを見下ろす所まで来た。アブラハムも、彼らを見送るために一緒に行った。
創世記 18:17主は言われた。「わたしが行おうとしていることをアブラハムに隠す必要があろうか。
創世記 18:18アブラハムは大きな強い国民になり、世界のすべての国民は彼によって祝福に入る。
創世記 18:19わたしがアブラハムを選んだのは、彼が息子たちとその子孫に、主の道を守り、主に従って正義を行うよう命じて、主がアブラハムに約束したことを成就するためである。」
創世記 18:20主は言われた。「ソドムとゴモラの罪は非常に重い、と訴える叫びが実に大きい。
創世記 18:21わたしは降って行き、彼らの行跡が、果たして、わたしに届いた叫びのとおりかどうか見て確かめよう。」
創世記 18:22その人たちは、更にソドムの方へ向かったが、アブラハムはなお、主の御前にいた。
創世記 18:23アブラハムは進み出て言った。「まことにあなたは、正しい者を悪い者と一緒に滅ぼされるのですか。
創世記 18:24あの町に正しい者が五十人いるとしても、それでも滅ぼし、その五十人の正しい者のために、町をお赦しにはならないのですか。
創世記 18:25正しい者を悪い者と一緒に殺し、正しい者を悪い者と同じ目に遭わせるようなことを、あなたがなさるはずはございません。全くありえないことです。全世界を裁くお方は、正義を行われるべきではありませんか。」
創世記 18:26主は言われた。「もしソドムの町に正しい者が五十人いるならば、その者たちのために、町全部を赦そう。」
創世記 18:27アブラハムは答えた。「塵あくたにすぎないわたしですが、あえて、わが主に申し上げます。
創世記 18:28もしかすると、五十人の正しい者に五人足りないかもしれません。それでもあなたは、五人足りないために、町のすべてを滅ぼされますか。」主は言われた。「もし、四十五人いれば滅ぼさない。」
創世記 18:29アブラハムは重ねて言った。「もしかすると、四十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その四十人のためにわたしはそれをしない。」
創世記 18:30アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう少し言わせてください。もしかすると、そこには三十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「もし三十人いるならわたしはそれをしない。」
創世記 18:31アブラハムは言った。「あえて、わが主に申し上げます。もしかすると、二十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その二十人のためにわたしは滅ぼさない。」
創世記 18:32アブラハムは言った。「主よ、どうかお怒りにならずに、もう一度だけ言わせてください。もしかすると、十人しかいないかもしれません。」主は言われた。「その十人のためにわたしは滅ぼさない。」
創世記 18:33主はアブラハムと語り終えると、去って行かれた。アブラハムも自分の住まいに帰った。
19章
創世記 19:01二人の御使いが夕方ソドムに着いたとき、ロトはソドムの門の所に座っていた。ロトは彼らを見ると、立ち上がって迎え、地にひれ伏して、
創世記 19:02言った。「皆様方、どうぞ僕の家に立ち寄り、足を洗ってお泊まりください。そして、明日の朝早く起きて出立なさってください。」彼らは言った。「いや、結構です。わたしたちはこの広場で夜を過ごします。」
創世記 19:03しかし、ロトがぜひにと勧めたので、彼らはロトの所に立ち寄ることにし、彼の家を訪ねた。ロトは、酵母を入れないパンを焼いて食事を供し、彼らをもてなした。
創世記 19:04彼らがまだ床に就かないうちに、ソドムの町の男たちが、若者も年寄りもこぞって押しかけ、家を取り囲んで、
創世記 19:05わめきたてた。「今夜、お前のところへ来た連中はどこにいる。ここへ連れて来い。なぶりものにしてやるから。」
創世記 19:06ロトは、戸口の前にたむろしている男たちのところへ出て行き、後ろの戸を閉めて、
創世記 19:07言った。「どうか、皆さん、乱暴なことはしないでください。
創世記 19:08実は、わたしにはまだ嫁がせていない娘が二人おります。皆さんにその娘たちを差し出しますから、好きなようにしてください。ただ、あの方々には何もしないでください。この家の屋根の下に身を寄せていただいたのですから。」
創世記 19:09男たちは口々に言った。「そこをどけ。」「こいつは、よそ者のくせに、指図などして。」「さあ、彼らより先に、お前を痛い目に遭わせてやる。」そして、ロトに詰め寄って体を押しつけ、戸を破ろうとした。
創世記 19:10二人の客はそのとき、手を伸ばして、ロトを家の中に引き入れて戸を閉め、
創世記 19:11戸口の前にいる男たちに、老若を問わず、目つぶしを食わせ、戸口を分からなくした。
創世記 19:12二人の客はロトに言った。「ほかに、あなたの身内の人がこの町にいますか。あなたの婿や息子や娘などを皆連れてここから逃げなさい。
創世記 19:13実は、わたしたちはこの町を滅ぼしに来たのです。大きな叫びが主のもとに届いたので、主は、この町を滅ぼすためにわたしたちを遣わされたのです。」
創世記 19:14ロトは嫁いだ娘たちの婿のところへ行き、「さあ早く、ここから逃げるのだ。主がこの町を滅ぼされるからだ」と促したが、婿たちは冗談だと思った。
創世記 19:15夜が明けるころ、御使いたちはロトをせきたてて言った。「さあ早く、あなたの妻とここにいる二人の娘を連れて行きなさい。さもないと、この町に下る罰の巻き添えになって滅ぼされてしまう。」
創世記 19:16ロトはためらっていた。主は憐れんで、二人の客にロト、妻、二人の娘の手をとらせて町の外へ避難するようにされた。
創世記 19:17彼らがロトたちを町外れへ連れ出したとき、主は言われた。「命がけで逃れよ。後ろを振り返ってはいけない。低地のどこにもとどまるな。山へ逃げなさい。さもないと、滅びることになる。」
創世記 19:18ロトは言った。「主よ、できません。
創世記 19:19あなたは僕に目を留め、慈しみを豊かに示し、命を救おうとしてくださいます。しかし、わたしは山まで逃げ延びることはできません。恐らく、災害に巻き込まれて、死んでしまうでしょう。
創世記 19:20御覧ください、あの町を。あそこなら近いので、逃げて行けると思います。あれは小さな町です。あそこへ逃げさせてください。あれはほんの小さな町です。どうか、そこでわたしの命を救ってください。」
創世記 19:21主は言われた。「よろしい。そのこともあなたの願いを聞き届け、あなたの言うその町は滅ぼさないことにしよう。
創世記 19:22急いで逃げなさい。あなたがあの町に着くまでは、わたしは何も行わないから。」そこで、その町はツォアル(小さい)と名付けられた。
創世記 19:23太陽が地上に昇ったとき、ロトはツォアルに着いた。
創世記 19:24主はソドムとゴモラの上に天から、主のもとから硫黄の火を降らせ、
創世記 19:25これらの町と低地一帯を、町の全住民、地の草木もろとも滅ぼした。
創世記 19:26ロトの妻は後ろを振り向いたので、塩の柱になった。
創世記 19:27アブラハムは、その朝早く起きて、さきに主と対面した場所へ行き、
創世記 19:28ソドムとゴモラ、および低地一帯を見下ろすと、炉の煙のように地面から煙が立ち上っていた。
創世記 19:29こうして、ロトの住んでいた低地の町々は滅ぼされたが、神はアブラハムを御心に留め、ロトを破滅のただ中から救い出された。
創世記 19:30ロトはツォアルを出て、二人の娘と山の中に住んだ。ツォアルに住むのを恐れたからである。彼は洞穴に二人の娘と住んだ。
創世記 19:31姉は妹に言った。「父も年老いてきました。この辺りには、世のしきたりに従って、わたしたちのところへ来てくれる男の人はいません。
創世記 19:32さあ、父にぶどう酒を飲ませ、床を共にし、父から子種を受けましょう。」
創世記 19:33娘たちはその夜、父親にぶどう酒を飲ませ、姉がまず、父親のところへ入って寝た。父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。
創世記 19:34あくる日、姉は妹に言った。「わたしは夕べ父と寝ました。今晩も父にぶどう酒を飲ませて、あなたが行って父と床を共にし、父から子種をいただきましょう。」
創世記 19:35娘たちはその夜もまた、父親にぶどう酒を飲ませ、妹が父親のところへ行って寝た。父親は、娘が寝に来たのも立ち去ったのも気がつかなかった。
創世記 19:36このようにして、ロトの二人の娘は父の子を身ごもり、
創世記 19:37やがて、姉は男の子を産み、モアブ(父親より)と名付けた。彼は今日のモアブ人の先祖である。
創世記 19:38妹もまた男の子を産み、ベン・アミ(わたしの肉親の子)と名付けた。彼は今日のアンモンの人々の先祖である。
20章
創世記 20:01アブラハムは、そこからネゲブ地方へ移り、カデシュとシュルの間に住んだ。ゲラルに滞在していたとき、
創世記 20:02アブラハムは妻サラのことを、「これはわたしの妹です」と言ったので、ゲラルの王アビメレクは使いをやってサラを召し入れた。
創世記 20:03その夜、夢の中でアビメレクに神が現れて言われた。「あなたは、召し入れた女のゆえに死ぬ。その女は夫のある身だ。」
創世記 20:04アビメレクは、まだ彼女に近づいていなかったので、「主よ、あなたは正しい者でも殺されるのですか。
創世記 20:05彼女が妹だと言ったのは彼ではありませんか。また彼女自身も、『あの人はわたしの兄です』と言いました。わたしは、全くやましい考えも不正な手段でもなくこの事をしたのです」と言った。
創世記 20:06神は夢の中でアビメレクに言われた。「わたしも、あなたが全くやましい考えでなしにこの事をしたことは知っている。だからわたしも、あなたがわたしに対して罪を犯すことのないように、彼女に触れさせなかったのだ。
創世記 20:07直ちに、あの人の妻を返しなさい。彼は預言者だから、あなたのために祈り、命を救ってくれるだろう。しかし、もし返さなければ、あなたもあなたの家来も皆、必ず死ぬことを覚悟せねばならない。」
創世記 20:08次の朝早く、アビメレクは家来たちを残らず呼び集め、一切の出来事を語り聞かせたので、一同は非常に恐れた。
創世記 20:09アビメレクはそれから、アブラハムを呼んで言った。「あなたは我々に何ということをしたのか。わたしがあなたにどんな罪を犯したというので、あなたはわたしとわたしの王国に大それた罪を犯させようとしたのか。あなたは、してはならぬことをわたしにしたのだ。」
創世記 20:10アビメレクは更に、アブラハムに言った。「どういうつもりで、こんなことをしたのか。」
創世記 20:11アブラハムは答えた。「この土地には、神を畏れることが全くないので、わたしは妻のゆえに殺されると思ったのです。
創世記 20:12事実、彼女は、わたしの妹でもあるのです。わたしの父の娘ですが、母の娘ではないのです。それで、わたしの妻となったのです。
創世記 20:13かつて、神がわたしを父の家から離して、さすらいの旅に出されたとき、わたしは妻に、『わたしに尽くすと思って、どこへ行っても、わたしのことを、この人は兄ですと言ってくれないか』と頼んだのです。」
創世記 20:14アビメレクは羊、牛、男女の奴隷などを取ってアブラハムに与え、また、妻サラを返して、
創世記 20:15言った。「この辺りはすべてわたしの領土です。好きな所にお住まいください。」
創世記 20:16また、サラに言った。「わたしは、銀一千シェケルをあなたの兄上に贈りました。それは、あなたとの間のすべての出来事の疑惑を晴らす証拠です。これであなたの名誉は取り戻されるでしょう。」
創世記 20:17アブラハムが神に祈ると、神はアビメレクとその妻、および侍女たちをいやされたので、再び子供を産むことができるようになった。
創世記 20:18主がアブラハムの妻サラのゆえに、アビメレクの宮廷のすべての女たちの胎を堅く閉ざしておられたからである。
21章
創世記 21:01主は、約束されたとおりサラを顧み、さきに語られたとおりサラのために行われたので、
創世記 21:02彼女は身ごもり、年老いたアブラハムとの間に男の子を産んだ。それは、神が約束されていた時期であった。
創世記 21:03アブラハムは、サラが産んだ自分の子をイサクと名付け、
創世記 21:04神が命じられたとおり、八日目に、息子イサクに割礼を施した。
創世記 21:05息子イサクが生まれたとき、アブラハムは百歳であった。
創世記 21:06サラは言った。「神はわたしに笑いをお与えになった。聞く者は皆、わたしと笑い(イサク)を共にしてくれるでしょう。」
創世記 21:07サラはまた言った。「誰がアブラハムに言いえたでしょうサラは子に乳を含ませるだろうと。しかしわたしは子を産みました年老いた夫のために。」
創世記 21:08やがて、子供は育って乳離れした。アブラハムはイサクの乳離れの日に盛大な祝宴を開いた。
創世記 21:09サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムとの間に産んだ子が、イサクをからかっているのを見て、
創世記 21:10アブラハムに訴えた。「あの女とあの子を追い出してください。あの女の息子は、わたしの子イサクと同じ跡継ぎとなるべきではありません。」
創世記 21:11このことはアブラハムを非常に苦しめた。その子も自分の子であったからである。
創世記 21:12神はアブラハムに言われた。「あの子供とあの女のことで苦しまなくてもよい。すべてサラが言うことに聞き従いなさい。あなたの子孫はイサクによって伝えられる。
創世記 21:13しかし、あの女の息子も一つの国民の父とする。彼もあなたの子であるからだ。」
創世記 21:14アブラハムは、次の朝早く起き、パンと水の革袋を取ってハガルに与え、背中に負わせて子供を連れ去らせた。ハガルは立ち去り、ベエル・シェバの荒れ野をさまよった。
創世記 21:15革袋の水が無くなると、彼女は子供を一本の灌木の下に寝かせ、
創世記 21:16「わたしは子供が死ぬのを見るのは忍びない」と言って、矢の届くほど離れ、子供の方を向いて座り込んだ。彼女は子供の方を向いて座ると、声をあげて泣いた。
創世記 21:17神は子供の泣き声を聞かれ、天から神の御使いがハガルに呼びかけて言った。「ハガルよ、どうしたのか。恐れることはない。神はあそこにいる子供の泣き声を聞かれた。
創世記 21:18立って行って、あの子を抱き上げ、お前の腕でしっかり抱き締めてやりなさい。わたしは、必ずあの子を大きな国民とする。」
創世記 21:19神がハガルの目を開かれたので、彼女は水のある井戸を見つけた。彼女は行って革袋に水を満たし、子供に飲ませた。
創世記 21:20神がその子と共におられたので、その子は成長し、荒れ野に住んで弓を射る者となった。
創世記 21:21彼がパランの荒れ野に住んでいたとき、母は彼のために妻をエジプトの国から迎えた。
創世記 21:22そのころ、アビメレクとその軍隊の長ピコルはアブラハムに言った。「神は、あなたが何をなさっても、あなたと共におられます。
創世記 21:23どうか、今ここでわたしとわたしの子、わたしの孫を欺かないと、神にかけて誓って(シャバ)ください。わたしがあなたに友好的な態度をとってきたように、あなたも、寄留しているこの国とわたしに友好的な態度をとってください。」
創世記 21:24アブラハムは答えた。「よろしい、誓いましょう。」
創世記 21:25アブラハムはアビメレクの部下たちが井戸を奪ったことについて、アビメレクを責めた。
創世記 21:26アビメレクは言った。「そんなことをした者がいたとは知りませんでした。あなたも告げなかったし、わたしも今日まで聞いていなかったのです。」
創世記 21:27アブラハムは、羊と牛の群れを連れて来て、アビメレクに贈り、二人は契約を結んだ。
創世記 21:28アブラハムは更に、羊の群れの中から七匹(シェバ)の雌の小羊を別にしたので、
創世記 21:29アビメレクがアブラハムに尋ねた。「この七匹の雌の小羊を別にしたのは、何のためですか。」
創世記 21:30アブラハムは答えた。「わたしの手からこの七匹の雌の小羊を受け取って、わたしがこの井戸(ベエル)を掘ったことの証拠としてください。」
創世記 21:31それで、この場所をベエル・シェバと呼ぶようになった。二人がそこで誓いを交わしたからである。
創世記 21:32二人はベエル・シェバで契約を結び、アビメレクと、その軍隊の長ピコルはペリシテの国に帰って行った。
創世記 21:33アブラハムは、ベエル・シェバに一本のぎょりゅうの木を植え、永遠の神、主の御名を呼んだ。
創世記 21:34アブラハムは、長い間、ペリシテの国に寄留した。
22章
創世記 22:01これらのことの後で、神はアブラハムを試された。神が、「アブラハムよ」と呼びかけ、彼が、「はい」と答えると、
創世記 22:02神は命じられた。「あなたの息子、あなたの愛する独り子イサクを連れて、モリヤの地に行きなさい。わたしが命じる山の一つに登り、彼を焼き尽くす献げ物としてささげなさい。」
創世記 22:03次の朝早く、アブラハムはろばに鞍を置き、献げ物に用いる薪を割り、二人の若者と息子イサクを連れ、神の命じられた所に向かって行った。
創世記 22:04三日目になって、アブラハムが目を凝らすと、遠くにその場所が見えたので、
創世記 22:05アブラハムは若者に言った。「お前たちは、ろばと一緒にここで待っていなさい。わたしと息子はあそこへ行って、礼拝をして、また戻ってくる。」
創世記 22:06アブラハムは、焼き尽くす献げ物に用いる薪を取って、息子イサクに背負わせ、自分は火と刃物を手に持った。二人は一緒に歩いて行った。
創世記 22:07イサクは父アブラハムに、「わたしのお父さん」と呼びかけた。彼が、「ここにいる。わたしの子よ」と答えると、イサクは言った。「火と薪はここにありますが、焼き尽くす献げ物にする小羊はどこにいるのですか。」
創世記 22:08アブラハムは答えた。「わたしの子よ、焼き尽くす献げ物の小羊はきっと神が備えてくださる。」二人は一緒に歩いて行った。
創世記 22:09神が命じられた場所に着くと、アブラハムはそこに祭壇を築き、薪を並べ、息子イサクを縛って祭壇の薪の上に載せた。
創世記 22:10そしてアブラハムは、手を伸ばして刃物を取り、息子を屠ろうとした。
創世記 22:11そのとき、天から主の御使いが、「アブラハム、アブラハム」と呼びかけた。彼が、「はい」と答えると、
創世記 22:12御使いは言った。「その子に手を下すな。何もしてはならない。あなたが神を畏れる者であることが、今、分かったからだ。あなたは、自分の独り子である息子すら、わたしにささげることを惜しまなかった。」
創世記 22:13アブラハムは目を凝らして見回した。すると、後ろの木の茂みに一匹の雄羊が角をとられていた。アブラハムは行ってその雄羊を捕まえ、息子の代わりに焼き尽くす献げ物としてささげた。
創世記 22:14アブラハムはその場所をヤーウェ・イルエ(主は備えてくださる)と名付けた。そこで、人々は今日でも「主の山に、備えあり(イエラエ)」と言っている。
創世記 22:15主の御使いは、再び天からアブラハムに呼びかけた。
創世記 22:16御使いは言った。「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、
創世記 22:17あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。あなたの子孫は敵の城門を勝ち取る。
創世記 22:18地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
創世記 22:19アブラハムは若者のいるところへ戻り、共にベエル・シェバへ向かった。アブラハムはベエル・シェバに住んだ。
創世記 22:20これらのことの後で、アブラハムに知らせが届いた。「ミルカもまた、あなたの兄弟ナホルとの間に子供を産みました。
創世記 22:21長男はウツ、その弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、
創世記 22:22それからケセド、ハゾ、ピルダシュ、イドラフ、ベトエルです。」
創世記 22:23ベトエルはリベカの父となった。ミルカは、アブラハムの兄弟ナホルとの間にこれら八人の子供を産んだ。
創世記 22:24ナホルの側女で、レウマという女性もまた、テバ、ガハム、タハシュ、マアカを産んだ。
23章
創世記 23:01サラの生涯は百二十七年であった。これがサラの生きた年数である。
創世記 23:02サラは、カナン地方のキルヤト・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムは、サラのために胸を打ち、嘆き悲しんだ。
創世記 23:03アブラハムは遺体の傍らから立ち上がり、ヘトの人々に頼んだ。
創世記 23:04「わたしは、あなたがたのところに一時滞在する寄留者ですが、あなたがたが所有する墓地を譲ってくださいませんか。亡くなった妻を葬ってやりたいのです。」
創世記 23:05ヘトの人々はアブラハムに答えた。「どうか、
創世記 23:06御主人、お聞きください。あなたは、わたしどもの中で神に選ばれた方です。どうぞ、わたしどもの最も良い墓地を選んで、亡くなられた方を葬ってください。わたしどもの中には墓地の提供を拒んで、亡くなられた方を葬らせない者など、一人もいません。」
創世記 23:07アブラハムは改めて国の民であるヘトの人々に挨拶をし、
創世記 23:08頼んだ。「もし、亡くなった妻を葬ることをお許しいただけるなら、ぜひ、わたしの願いを聞いてください。ツォハルの子、エフロンにお願いして、
創世記 23:09あの方の畑の端にあるマクペラの洞穴を譲っていただきたいのです。十分な銀をお支払いしますから、皆様方の間に墓地を所有させてください。」
創世記 23:10エフロンはそのとき、ヘトの人々の間に座っていた。ヘトの人エフロンは、町の門の広場に集まって来たすべてのヘトの人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。
創世記 23:11「どうか、御主人、お聞きください。あの畑は差し上げます。あそこにある洞穴も差し上げます。わたしの一族が立ち会っているところで、あなたに差し上げますから、早速、亡くなられた方を葬ってください。」
創世記 23:12アブラハムは国の民の前で挨拶をし、
創世記 23:13国の民の聞いているところで、エフロンに頼んだ。「わたしの願いを聞き入れてくださるなら、どうか、畑の代金を払わせてください。どうぞ、受け取ってください。そうすれば、亡くなった妻をあそこに葬ってやれます。」
創世記 23:14エフロンはアブラハムに答えた。「どうか、
創世記 23:15御主人、お聞きください。あの土地は銀四百シェケルのものです。それがあなたとわたしの間で、どれほどのことでしょう。早速、亡くなられた方を葬ってください。」
創世記 23:16アブラハムはこのエフロンの言葉を聞き入れ、エフロンがヘトの人々が聞いているところで言った値段、銀四百シェケルを商人の通用銀の重さで量り、エフロンに渡した。
創世記 23:17こうして、マムレの前のマクペラにあるエフロンの畑は、土地とそこの洞穴と、その周囲の境界内に生えている木を含め、
創世記 23:18町の門の広場に来ていたすべてのヘトの人々の立ち会いのもとに、アブラハムの所有となった。
創世記 23:19その後アブラハムは、カナン地方のヘブロンにあるマムレの前のマクペラの畑の洞穴に妻のサラを葬った。
創世記 23:20その畑とそこの洞穴は、こうして、ヘトの人々からアブラハムが買い取り、墓地として所有することになった。
24章
創世記 24:01アブラハムは多くの日を重ね老人になり、主は何事においてもアブラハムに祝福をお与えになっていた。
創世記 24:02アブラハムは家の全財産を任せている年寄りの僕に言った。「手をわたしの腿の間に入れ、
創世記 24:03天の神、地の神である主にかけて誓いなさい。あなたはわたしの息子の嫁をわたしが今住んでいるカナンの娘から取るのではなく、
創世記 24:04わたしの一族のいる故郷へ行って、嫁を息子イサクのために連れて来るように。」
創世記 24:05僕は尋ねた。「もしかすると、その娘がわたしに従ってこの土地へ来たくないと言うかもしれません。その場合には、御子息をあなたの故郷にお連れしてよいでしょうか。」
創世記 24:06アブラハムは答えた。「決して、息子をあちらへ行かせてはならない。
創世記 24:07天の神である主は、わたしを父の家、生まれ故郷から連れ出し、『あなたの子孫にこの土地を与える』と言って、わたしに誓い、約束してくださった。その方がお前の行く手に御使いを遣わして、そこから息子に嫁を連れて来ることができるようにしてくださる。
創世記 24:08もし女がお前に従ってこちらへ来たくないと言うならば、お前は、わたしに対するこの誓いを解かれる。ただわたしの息子をあちらへ行かせることだけはしてはならない。」
創世記 24:09そこで、僕は主人アブラハムの腿の間に手を入れ、このことを彼に誓った。
創世記 24:10僕は主人のらくだの中から十頭を選び、主人から預かった高価な贈り物を多く携え、アラム・ナハライムのナホルの町に向かって出発した。
創世記 24:11女たちが水くみに来る夕方、彼は、らくだを町外れの井戸の傍らに休ませて、
創世記 24:12祈った。「主人アブラハムの神、主よ。どうか、今日、わたしを顧みて、主人アブラハムに慈しみを示してください。
創世記 24:13わたしは今、御覧のように、泉の傍らに立っています。この町に住む人の娘たちが水をくみに来たとき、
創世記 24:14その一人に、『どうか、水がめを傾けて、飲ませてください』と頼んでみます。その娘が、『どうぞ、お飲みください。らくだにも飲ませてあげましょう』と答えれば、彼女こそ、あなたがあなたの僕イサクの嫁としてお決めになったものとさせてください。そのことによってわたしは、あなたが主人に慈しみを示されたのを知るでしょう。」
創世記 24:15僕がまだ祈り終わらないうちに、見よ、リベカが水がめを肩に載せてやって来た。彼女は、アブラハムの兄弟ナホルとその妻ミルカの息子ベトエルの娘で、
創世記 24:16際立って美しく、男を知らない処女であった。彼女が泉に下りて行き、水がめに水を満たして上がって来ると、
創世記 24:17僕は駆け寄り、彼女に向かい合って語りかけた。「水がめの水を少し飲ませてください。」
創世記 24:18すると彼女は、「どうぞ、お飲みください」と答え、すぐに水がめを下ろして手に抱え、彼に飲ませた。
創世記 24:19彼が飲み終わると、彼女は、「らくだにも水をくんで来て、たっぷり飲ませてあげましょう」と言いながら、
創世記 24:20すぐにかめの水を水槽に空け、また水をくみに井戸に走って行った。こうして、彼女はすべてのらくだに水をくんでやった。
創世記 24:21その間、僕は主がこの旅の目的をかなえてくださるかどうかを知ろうとして、黙って彼女を見つめていた。
創世記 24:22らくだが水を飲み終わると、彼は重さ一ベカの金の鼻輪一つと十シェケルの金の腕輪二つを取り出しながら、
創世記 24:23「あなたは、どなたの娘さんですか。教えてください。お父さまの家にはわたしどもが泊めていただける場所があるでしょうか」と尋ねた。
創世記 24:24すると彼女は、「わたしは、ナホルとその妻ミルカの子ベトエルの娘です」と答え、
創世記 24:25更に続けて、「わたしどもの所にはわらも餌もたくさんあります。お泊まりになる場所もございます」と言った。
創世記 24:26彼はひざまずいて主を伏し拝み、
創世記 24:27「主人アブラハムの神、主はたたえられますように。主の慈しみとまことはわたしの主人を離れず、主はわたしの旅路を導き、主人の一族の家にたどりつかせてくださいました」と祈った。
創世記 24:28娘は走って行き、母の家の者に出来事を告げた。
創世記 24:29リベカにはラバンという兄がいたが、ラバンはすぐに町の外れの泉の傍らにいるその人のところへ走った。
創世記 24:30妹が着けている鼻輪と腕輪を見、妹リベカが、「その人がこう言いました」と話しているのを聞いたためである。彼が行ってみると、確かに泉のほとりのらくだのそばにその人が立っていた。
創世記 24:31そこで、ラバンは言った。「おいでください。主に祝福されたお方。なぜ、町の外に立っておられるのですか。わたしが、お泊まりになる部屋もらくだの休む場所も整えました。」
創世記 24:32その人は家に来て、らくだの鞍をはずした。らくだにはわらと餌が与えられ、その人と従者たちには足を洗う水が運ばれた。
創世記 24:33やがて食事が前に並べられたが、その人は言った。「用件をお話しするまでは、食事をいただくわけにはまいりません。」「お話しください」とラバンが答えると、
創世記 24:34その人は語り始めた。「わたしはアブラハムの僕でございます。
創世記 24:35主がわたしの主人を大層祝福され、羊や牛の群れ、金銀、男女の奴隷、らくだやろばなどをお与えになったので、主人は裕福になりました。
創世記 24:36奥様のサラは、年をとっていましたのに、わたしの主人との間に男の子を産みました。その子にわたしの主人は全財産をお譲りになったのです。
創世記 24:37主人はわたしに誓いを立てさせ、『あなたはわたしの息子の嫁を、わたしが今住んでいるカナンの土地の娘から選び取るな。
創世記 24:38わたしの父の家、わたしの親族のところへ行って、息子の嫁を連れて来るように』と命じました。
創世記 24:39わたしが主人に、『もしかすると、相手の女がわたしに従って来たくないと言うかもしれません』と申しますと、
創世記 24:40主人は、『わたしは今まで主の導きに従って歩んできた。主は御使いを遣わしてお前に伴わせ、旅の目的をかなえてくださる。お前は、わたしの親族、父の家から息子のために嫁を連れて来ることができよう。
創世記 24:41そのとき初めて、お前はわたしに対する誓いを解かれる。またもし、わたしの親族のところに行っても、娘をもらえない場合には、お前はこの誓いを解かれる』と言いました。
創世記 24:42こういうわけで、わたしは、今日、泉の傍らにやって来て、祈っておりました。『主人アブラハムの神、主よ。わたしがたどってきたこの旅の目的を、もしあなたが本当にかなえてくださるおつもりなら、
創世記 24:43わたしは今、御覧のように、泉の傍らに立っていますから、どうか、おとめが水をくみにやって来るようになさってください。彼女に、あなたの水がめの水を少し飲ませてください、と頼んでみます。
創世記 24:44どうぞお飲みください、らくだにも水をくんであげましょう、と彼女が答えましたなら、その娘こそ、主が主人の息子のためにお決めになった方であるといたします。』
創世記 24:45わたしがまだ心に言い終わらないうちに、リベカさまが水がめを肩に載せて来られたではありませんか。そして、泉に下りて行き、水をおくみになりました。わたしが、『どうか、水を飲ませてください』と頼みますと、
創世記 24:46リベカさまはすぐに水がめを肩から下ろして、『どうぞお飲みください。らくだにも飲ませてあげましょう』と答えてくださいました。わたしも飲み、らくだも飲ませていただいたのです。
創世記 24:47『あなたは、どなたの娘さんですか』とお尋ねしたところ、『ナホルとミルカの子ベトエルの娘です』と答えられましたので、わたしは鼻輪を鼻に、腕輪を腕に着けて差し上げたのです。
創世記 24:48わたしはひざまずいて主を伏し拝み、主人アブラハムの神、主をほめたたえました。主は、主人の子息のために、ほかならぬ主人の一族のお嬢さまを迎えることができるように、わたしの旅路をまことをもって導いてくださいました。
創世記 24:49あなたがたが、今、わたしの主人に慈しみとまことを示してくださるおつもりならば、そうおっしゃってください。そうでなければ、そうとおっしゃってください。それによって、わたしは進退を決めたいと存じます。」
創世記 24:50ラバンとベトエルは答えた。「このことは主の御意志ですから、わたしどもが善し悪しを申すことはできません。
創世記 24:51リベカはここにおります。どうぞお連れください。主がお決めになったとおり、御主人の御子息の妻になさってください。」
創世記 24:52アブラハムの僕はこの言葉を聞くと、地に伏して主を拝した。
創世記 24:53そして、金銀の装身具や衣装を取り出してリベカに贈り、その兄と母にも高価な品物を贈った。
創世記 24:54僕と従者たちは酒食のもてなしを受け、そこに泊まった。次の朝、皆が起きたとき、僕が、「主人のところへ帰らせてください」と言うと、
創世記 24:55リベカの兄と母は、「娘をもうしばらく、十日ほど、わたしたちの手もとに置いて、それから行かせるようにしたいのです」と頼んだ。
創世記 24:56しかし僕は言った。「わたしを、お引き止めにならないでください。この旅の目的をかなえさせてくださったのは主なのですから。わたしを帰らせてください。主人のところへ参ります。」
創世記 24:57「娘を呼んで、その口から聞いてみましょう」と彼らは言い、
創世記 24:58リベカを呼んで、「お前はこの人と一緒に行きますか」と尋ねた。「はい、参ります」と彼女は答えた。
創世記 24:59彼らは妹であるリベカとその乳母、アブラハムの僕とその従者たちを一緒に出立させることにし、
創世記 24:60リベカを祝福して言った。「わたしたちの妹よあなたが幾千万の民となるように。あなたの子孫が敵の門を勝ち取るように。」
創世記 24:61リベカは、侍女たちと共に立ち上がり、らくだに乗り、その人の後ろに従った。僕はリベカを連れて行った。
創世記 24:62イサクはネゲブ地方に住んでいた。そのころ、ベエル・ラハイ・ロイから帰ったところであった。
創世記 24:63夕方暗くなるころ、野原を散策していた。目を上げて眺めると、らくだがやって来るのが見えた。
創世記 24:64リベカも目を上げて眺め、イサクを見た。リベカはらくだから下り、
創世記 24:65「野原を歩いて、わたしたちを迎えに来るあの人は誰ですか」と僕に尋ねた。「あの方がわたしの主人です」と僕が答えると、リベカはベールを取り出してかぶった。
創世記 24:66僕は、自分が成し遂げたことをすべてイサクに報告した。
創世記 24:67イサクは、母サラの天幕に彼女を案内した。彼はリベカを迎えて妻とした。イサクは、リベカを愛して、亡くなった母に代わる慰めを得た。
25章
創世記 25:01アブラハムは、再び妻をめとった。その名はケトラといった。
創世記 25:02彼女は、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。
創世記 25:03ヨクシャンにはシェバとデダンが生まれた。デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レウミム人であった。
創世記 25:04ミディアンの子孫は、エファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。これらは皆、ケトラの子孫であった。
創世記 25:05アブラハムは、全財産をイサクに譲った。
創世記 25:06側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。
創世記 25:07アブラハムの生涯は百七十五年であった。
創世記 25:08アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。
創世記 25:09息子イサクとイシュマエルは、マクペラの洞穴に彼を葬った。その洞穴はマムレの前の、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑の中にあったが、
創世記 25:10その畑は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったものである。そこに、アブラハムは妻サラと共に葬られた。
創世記 25:11アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。
創世記 25:12サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルの系図は次のとおりである。
創世記 25:13イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男がネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、
創世記 25:14ミシュマ、ドマ、マサ、
創世記 25:15ハダド、テマ、エトル、ナフィシュ、ケデマである。
創世記 25:16以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。
創世記 25:17イシュマエルの生涯は百三十七年であった。彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。
創世記 25:18イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシュルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互いに敵対しつつ生活していた。
創世記 25:19アブラハムの息子イサクの系図は次のとおりである。アブラハムにはイサクが生まれた。
創世記 25:20イサクは、リベカと結婚したとき四十歳であった。リベカは、パダン・アラムのアラム人ベトエルの娘で、アラム人ラバンの妹であった。
創世記 25:21イサクは、妻に子供ができなかったので、妻のために主に祈った。その祈りは主に聞き入れられ、妻リベカは身ごもった。
創世記 25:22ところが、胎内で子供たちが押し合うので、リベカは、「これでは、わたしはどうなるのでしょう」と言って、主の御心を尋ねるために出かけた。
創世記 25:23主は彼女に言われた。「二つの国民があなたの胎内に宿っており二つの民があなたの腹の内で分かれ争っている。一つの民が他の民より強くなり兄が弟に仕えるようになる。」
創世記 25:24月が満ちて出産の時が来ると、胎内にはまさしく双子がいた。
創世記 25:25先に出てきた子は赤くて、全身が毛皮の衣のようであったので、エサウと名付けた。
創世記 25:26その後で弟が出てきたが、その手がエサウのかかと(アケブ)をつかんでいたので、ヤコブと名付けた。リベカが二人を産んだとき、イサクは六十歳であった。
創世記 25:27二人の子供は成長して、エサウは巧みな狩人で野の人となったが、ヤコブは穏やかな人で天幕の周りで働くのを常とした。
創世記 25:28イサクはエサウを愛した。狩りの獲物が好物だったからである。しかし、リベカはヤコブを愛した。
創世記 25:29ある日のこと、ヤコブが煮物をしていると、エサウが疲れきって野原から帰って来た。
創世記 25:30エサウはヤコブに言った。「お願いだ、その赤いもの(アドム)、そこの赤いものを食べさせてほしい。わたしは疲れきっているんだ。」彼が名をエドムとも呼ばれたのはこのためである。
創世記 25:31ヤコブは言った。「まず、お兄さんの長子の権利を譲ってください。」
創世記 25:32「ああ、もう死にそうだ。長子の権利などどうでもよい」とエサウが答えると、
創世記 25:33ヤコブは言った。「では、今すぐ誓ってください。」エサウは誓い、長子の権利をヤコブに譲ってしまった。
創世記 25:34ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えた。エサウは飲み食いしたあげく立ち、去って行った。こうしてエサウは、長子の権利を軽んじた。
26章
創世記 26:01アブラハムの時代にあった飢饉とは別に、この地方にまた飢饉があったので、イサクはゲラルにいるペリシテ人の王アビメレクのところへ行った。
創世記 26:02そのとき、主がイサクに現れて言われた。「エジプトへ下って行ってはならない。わたしが命じる土地に滞在しなさい。
創世記 26:03あなたがこの土地に寄留するならば、わたしはあなたと共にいてあなたを祝福し、これらの土地をすべてあなたとその子孫に与え、あなたの父アブラハムに誓ったわたしの誓いを成就する。
創世記 26:04わたしはあなたの子孫を天の星のように増やし、これらの土地をすべてあなたの子孫に与える。地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。
創世記 26:05アブラハムがわたしの声に聞き従い、わたしの戒めや命令、掟や教えを守ったからである。」
創世記 26:06そこで、イサクはゲラルに住んだ。
創世記 26:07その土地の人たちがイサクの妻のことを尋ねたとき、彼は、自分の妻だと言うのを恐れて、「わたしの妹です」と答えた。リベカが美しかったので、土地の者たちがリベカのゆえに自分を殺すのではないかと思ったからである。
創世記 26:08イサクは長く滞在していたが、あるとき、ペリシテ人の王アビメレクが窓から下を眺めると、イサクが妻のリベカと戯れていた。
創世記 26:09アビメレクは早速イサクを呼びつけて言った。「あの女は、本当はあなたの妻ではないか。それなのになぜ、『わたしの妹です』などと言ったのか。」「彼女のゆえにわたしは死ぬことになるかもしれないと思ったからです」とイサクは答えると、
創世記 26:10アビメレクは言った。「あなたは何ということをしたのだ。民のだれかがあなたの妻と寝たら、あなたは我々を罪に陥れるところであった。」
創世記 26:11アビメレクはすべての民に命令を下した。「この人、またはその妻に危害を加える者は、必ず死刑に処せられる。」
創世記 26:12イサクがその土地に穀物の種を蒔くと、その年のうちに百倍もの収穫があった。イサクが主の祝福を受けて、
創世記 26:13豊かになり、ますます富み栄えて、
創世記 26:14多くの羊や牛の群れ、それに多くの召し使いを持つようになると、ペリシテ人はイサクをねたむようになった。
創世記 26:15ペリシテ人は、昔、イサクの父アブラハムが僕たちに掘らせた井戸をことごとくふさぎ、土で埋めた。
創世記 26:16アビメレクはイサクに言った。「あなたは我々と比べてあまりに強くなった。どうか、ここから出て行っていただきたい。」
創世記 26:17イサクはそこを去って、ゲラルの谷に天幕を張って住んだ。
創世記 26:18そこにも、父アブラハムの時代に掘った井戸が幾つかあったが、アブラハムの死後、ペリシテ人がそれらをふさいでしまっていた。イサクはそれらの井戸を掘り直し、父が付けたとおりの名前を付けた。
創世記 26:19イサクの僕たちが谷で井戸を掘り、水が豊かに湧き出る井戸を見つけると、
創世記 26:20ゲラルの羊飼いは、「この水は我々のものだ」とイサクの羊飼いと争った。そこで、イサクはその井戸をエセク(争い)と名付けた。彼らがイサクと争ったからである。
創世記 26:21イサクの僕たちがもう一つの井戸を掘り当てると、それについても争いが生じた。そこで、イサクはその井戸をシトナ(敵意)と名付けた。
創世記 26:22イサクはそこから移って、更にもう一つの井戸を掘り当てた。それについては、もはや争いは起こらなかった。イサクは、その井戸をレホボト(広い場所)と名付け、「今や、主は我々の繁栄のために広い場所をお与えになった」と言った。
創世記 26:23イサクは更に、そこからベエル・シェバに上った。
創世記 26:24その夜、主が現れて言われた。「わたしは、あなたの父アブラハムの神である。恐れてはならない。わたしはあなたと共にいる。わたしはあなたを祝福し、子孫を増やすわが僕アブラハムのゆえに。」
創世記 26:25イサクは、そこに祭壇を築き、主の御名を呼んで礼拝した。彼はそこに天幕を張り、イサクの僕たちは井戸を掘った。
創世記 26:26アビメレクが参謀のアフザトと軍隊の長のピコルと共に、ゲラルからイサクのところに来た。
創世記 26:27イサクは彼らに尋ねた。「あなたたちは、わたしを憎んで追い出したのに、なぜここに来たのですか。」
創世記 26:28彼らは答えた。「主があなたと共におられることがよく分かったからです。そこで考えたのですが、我々はお互いに、つまり、我々とあなたとの間で誓約を交わし、あなたと契約を結びたいのです。
創世記 26:29以前、我々はあなたに何ら危害を加えず、むしろあなたのためになるよう計り、あなたを無事に送り出しました。そのようにあなたも、我々にいかなる害も与えないでください。あなたは確かに、主に祝福された方です。」
創世記 26:30そこで、イサクは彼らのために祝宴を催し、共に飲み食いした。
創世記 26:31次の朝早く、互いに誓いを交わした後、イサクは彼らを送り出し、彼らは安らかに去って行った。
創世記 26:32その日に、井戸を掘っていたイサクの僕たちが帰って来て、「水が出ました」と報告した。
創世記 26:33そこで、イサクはその井戸をシブア(誓い)と名付けた。そこで、その町の名は、今日に至るまで、ベエル・シェバ(誓いの井戸)といわれている。
創世記 26:34エサウは、四十歳のときヘト人ベエリの娘ユディトとヘト人エロンの娘バセマトを妻として迎えた。
創世記 26:35彼女たちは、イサクとリベカにとって悩みの種となった。
27章
創世記 27:01イサクは年をとり、目がかすんで見えなくなってきた。そこで上の息子のエサウを呼び寄せて、「息子よ」と言った。エサウが、「はい」と答えると、
創世記 27:02イサクは言った。「こんなに年をとったので、わたしはいつ死ぬか分からない。
創世記 27:03今すぐに、弓と矢筒など、狩りの道具を持って野に行き、獲物を取って来て、
創世記 27:04わたしの好きなおいしい料理を作り、ここへ持って来てほしい。死ぬ前にそれを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えたい。」
創世記 27:05リベカは、イサクが息子のエサウに話しているのを聞いていた。エサウが獲物を取りに野に行くと、
創世記 27:06リベカは息子のヤコブに言った。「今、お父さんが兄さんのエサウにこう言っているのを耳にしました。
創世記 27:07『獲物を取って来て、あのおいしい料理を作ってほしい。わたしは死ぬ前にそれを食べて、主の御前でお前を祝福したい』と。
創世記 27:08わたしの子よ。今、わたしが言うことをよく聞いてそのとおりにしなさい。
創世記 27:09家畜の群れのところへ行って、よく肥えた子山羊を二匹取って来なさい。わたしが、それでお父さんの好きなおいしい料理を作りますから、
創世記 27:10それをお父さんのところへ持って行きなさい。お父さんは召し上がって、亡くなる前にお前を祝福してくださるでしょう。」
創世記 27:11しかし、ヤコブは母リベカに言った。「でも、エサウ兄さんはとても毛深いのに、わたしの肌は滑らかです。
創世記 27:12お父さんがわたしに触れば、だましているのが分かります。そうしたら、わたしは祝福どころか、反対に呪いを受けてしまいます。」
創世記 27:13母は言った。「わたしの子よ。そのときにはお母さんがその呪いを引き受けます。ただ、わたしの言うとおりに、行って取って来なさい。」
創世記 27:14ヤコブは取りに行き、母のところに持って来たので、母は父の好きなおいしい料理を作った。
創世記 27:15リベカは、家にしまっておいた上の息子エサウの晴れ着を取り出して、下の息子ヤコブに着せ、
創世記 27:16子山羊の毛皮を彼の腕や滑らかな首に巻きつけて、
創世記 27:17自分が作ったおいしい料理とパンを息子ヤコブに渡した。
創世記 27:18ヤコブは、父のもとへ行き、「わたしのお父さん」と呼びかけた。父が、「ここにいる。わたしの子よ。誰だ、お前は」と尋ねると、
創世記 27:19ヤコブは言った。「長男のエサウです。お父さんの言われたとおりにしてきました。さあ、どうぞ起きて、座ってわたしの獲物を召し上がり、お父さん自身の祝福をわたしに与えてください。」
創世記 27:20「わたしの子よ、どうしてまた、こんなに早くしとめられたのか」と、イサクが息子に尋ねると、ヤコブは答えた。「あなたの神、主がわたしのために計らってくださったからです。」
創世記 27:21イサクはヤコブに言った。「近寄りなさい。わたしの子に触って、本当にお前が息子のエサウかどうか、確かめたい。」
創世記 27:22ヤコブが父イサクに近寄ると、イサクは彼に触りながら言った。「声はヤコブの声だが、腕はエサウの腕だ。」
創世記 27:23イサクは、ヤコブの腕が兄エサウの腕のように毛深くなっていたので、見破ることができなかった。そこで、彼は祝福しようとして、
創世記 27:24言った。「お前は本当にわたしの子エサウなのだな。」ヤコブは、「もちろんです」と答えた。
創世記 27:25イサクは言った。「では、お前の獲物をここへ持って来なさい。それを食べて、わたし自身の祝福をお前に与えよう。」ヤコブが料理を差し出すと、イサクは食べ、ぶどう酒をつぐと、それを飲んだ。
創世記 27:26それから、父イサクは彼に言った。「わたしの子よ、近寄ってわたしに口づけをしなさい。」
創世記 27:27ヤコブが近寄って口づけをすると、イサクは、ヤコブの着物の匂いをかいで、祝福して言った。「ああ、わたしの子の香りは主が祝福された野の香りのようだ。
創世記 27:28どうか、神が天の露と地の産み出す豊かなもの穀物とぶどう酒をお前に与えてくださるように。
創世記 27:29多くの民がお前に仕え多くの国民がお前にひれ伏す。お前は兄弟たちの主人となり母の子らもお前にひれ伏す。お前を呪う者は呪われお前を祝福する者は祝福されるように。」
創世記 27:30イサクがヤコブを祝福し終えて、ヤコブが父イサクの前から立ち去るとすぐ、兄エサウが狩りから帰って来た。
創世記 27:31彼もおいしい料理を作り、父のところへ持って来て言った。「わたしのお父さん。起きて、息子の獲物を食べてください。そして、あなた自身の祝福をわたしに与えてください。」
創世記 27:32父イサクが、「お前は誰なのか」と聞くと、「わたしです。あなたの息子、長男のエサウです」と答えが返ってきた。
創世記 27:33イサクは激しく体を震わせて言った。「では、あれは、一体誰だったのだ。さっき獲物を取ってわたしのところに持って来たのは。実は、お前が来る前にわたしはみんな食べて、彼を祝福してしまった。だから、彼が祝福されたものになっている。」
創世記 27:34エサウはこの父の言葉を聞くと、悲痛な叫びをあげて激しく泣き、父に向かって言った。「わたしのお父さん。わたしも、このわたしも祝福してください。」
創世記 27:35イサクは言った。「お前の弟が来て策略を使い、お前の祝福を奪ってしまった。」
創世記 27:36エサウは叫んだ。「彼をヤコブとは、よくも名付けたものだ。これで二度も、わたしの足を引っ張り(アーカブ)欺いた。あのときはわたしの長子の権利を奪い、今度はわたしの祝福を奪ってしまった。」エサウは続けて言った。「お父さんは、わたしのために祝福を残しておいてくれなかったのですか。」
創世記 27:37イサクはエサウに答えた。「既にわたしは、彼をお前の主人とし、親族をすべて彼の僕とし、穀物もぶどう酒も彼のものにしてしまった。わたしの子よ。今となっては、お前のために何をしてやれようか。」
創世記 27:38エサウは父に叫んだ。「わたしのお父さん。祝福はたった一つしかないのですか。わたしも、このわたしも祝福してください、わたしのお父さん。」エサウは声をあげて泣いた。
創世記 27:39父イサクは言った。「ああ地の産み出す豊かなものから遠く離れた所この後お前はそこに住む天の露からも遠く隔てられて。
創世記 27:40お前は剣に頼って生きていく。しかしお前は弟に仕える。いつの日にかお前は反抗を企て自分の首から軛を振り落とす。」
創世記 27:41エサウは、父がヤコブを祝福したことを根に持って、ヤコブを憎むようになった。そして、心の中で言った。「父の喪の日も遠くない。そのときがきたら、必ず弟のヤコブを殺してやる。」
創世記 27:42ところが、上の息子エサウのこの言葉が母リベカの耳に入った。彼女は人をやって、下の息子のヤコブを呼び寄せて言った。「大変です。エサウ兄さんがお前を殺して恨みを晴らそうとしています。
創世記 27:43わたしの子よ。今、わたしの言うことをよく聞き、急いでハランに、わたしの兄ラバンの所へ逃げて行きなさい。
創世記 27:44そして、お兄さんの怒りが治まるまで、しばらく伯父さんの所に置いてもらいなさい。
創世記 27:45そのうちに、お兄さんの憤りも治まり、お前のしたことを忘れてくれるだろうから、そのときには人をやってお前を呼び戻します。一日のうちにお前たち二人を失うことなど、どうしてできましょう。」
創世記 27:46リベカはイサクに言った。「わたしは、ヘト人の娘たちのことで、生きているのが嫌になりました。もしヤコブまでも、この土地の娘の中からあんなヘト人の娘をめとったら、わたしは生きているかいがありません。」
28章
創世記 28:01イサクはヤコブを呼び寄せて祝福して、命じた。「お前はカナンの娘の中から妻を迎えてはいけない。
創世記 28:02ここをたって、パダン・アラムのベトエルおじいさんの家に行き、そこでラバン伯父さんの娘の中から結婚相手を見つけなさい。
創世記 28:03どうか、全能の神がお前を祝福して繁栄させ、お前を増やして多くの民の群れとしてくださるように。
創世記 28:04どうか、アブラハムの祝福がお前とその子孫に及び、神がアブラハムに与えられた土地、お前が寄留しているこの土地を受け継ぐことができるように。」
創世記 28:05ヤコブはイサクに送り出されて、パダン・アラムのラバンの所へ旅立った。ラバンはアラム人ベトエルの息子で、ヤコブとエサウの母リベカの兄であった。
創世記 28:06エサウは、イサクがヤコブを祝福し、パダン・アラムへ送り出し、そこから妻を迎えさせようとしたこと、しかも彼を祝福したとき、「カナンの娘の中から妻を迎えてはいけない」と命じたこと、
創世記 28:07そして、ヤコブが父と母の命令に従ってパダン・アラムへ旅立ったことなどを知った。
創世記 28:08エサウは、カナンの娘たちが父イサクの気に入らないことを知って、
創世記 28:09イシュマエルのところへ行き、既にいる妻のほかにもう一人、アブラハムの息子イシュマエルの娘で、ネバヨトの妹に当たるマハラトを妻とした。
創世記 28:10ヤコブはベエル・シェバを立ってハランへ向かった。
創世記 28:11とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。
創世記 28:12すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。
創世記 28:13見よ、主が傍らに立って言われた。「わたしは、あなたの父祖アブラハムの神、イサクの神、主である。あなたが今横たわっているこの土地を、あなたとあなたの子孫に与える。
創世記 28:14あなたの子孫は大地の砂粒のように多くなり、西へ、東へ、北へ、南へと広がっていくであろう。地上の氏族はすべて、あなたとあなたの子孫によって祝福に入る。
創世記 28:15見よ、わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない。」
創世記 28:16ヤコブは眠りから覚めて言った。「まことに主がこの場所におられるのに、わたしは知らなかった。」
創世記 28:17そして、恐れおののいて言った。「ここは、なんと畏れ多い場所だろう。これはまさしく神の家である。そうだ、ここは天の門だ。」
創世記 28:18ヤコブは次の朝早く起きて、枕にしていた石を取り、それを記念碑として立て、先端に油を注いで、
創世記 28:19その場所をベテル(神の家)と名付けた。ちなみに、その町の名はかつてルズと呼ばれていた。
創世記 28:20ヤコブはまた、誓願を立てて言った。「神がわたしと共におられ、わたしが歩むこの旅路を守り、食べ物、着る物を与え、
創世記 28:21無事に父の家に帰らせてくださり、主がわたしの神となられるなら、
創世記 28:22わたしが記念碑として立てたこの石を神の家とし、すべて、あなたがわたしに与えられるものの十分の一をささげます。」
29章
創世記 29:01ヤコブは旅を続けて、東方の人々の土地へ行った。
創世記 29:02ふと見ると、野原に井戸があり、そのそばに羊が三つの群れになって伏していた。その井戸から羊の群れに、水を飲ませることになっていたからである。ところが、井戸の口の上には大きな石が載せてあった。
創世記 29:03まず羊の群れを全部そこに集め、石を井戸の口から転がして羊の群れに水を飲ませ、また石を元の所に戻しておくことになっていた。
創世記 29:04ヤコブはそこにいた人たちに尋ねた。「皆さんはどちらの方ですか。」「わたしたちはハランの者です」と答えたので、
創世記 29:05ヤコブは尋ねた。「では、ナホルの息子のラバンを知っていますか。」「ええ、知っています」と彼らが答えたので、
創世記 29:06ヤコブは更に尋ねた。「元気でしょうか。」「元気です。もうすぐ、娘のラケルも羊の群れを連れてやって来ます」と彼らは答えた。
創世記 29:07ヤコブは言った。「まだこんなに日は高いし、家畜を集める時でもない。羊に水を飲ませて、もう一度草を食べさせに行ったらどうですか。」
創世記 29:08すると、彼らは答えた。「そうはできないのです。羊の群れを全部ここに集め、あの石を井戸の口から転がして羊に水を飲ませるのですから。」
創世記 29:09ヤコブが彼らと話しているうちに、ラケルが父の羊の群れを連れてやって来た。彼女も羊を飼っていたからである。
創世記 29:10ヤコブは、伯父ラバンの娘ラケルと伯父ラバンの羊の群れを見るとすぐに、井戸の口へ近寄り石を転がして、伯父ラバンの羊に水を飲ませた。
創世記 29:11ヤコブはラケルに口づけし、声をあげて泣いた。
創世記 29:12ヤコブはやがて、ラケルに、自分が彼女の父の甥に当たり、リベカの息子であることを打ち明けた。ラケルは走って行って、父に知らせた。
創世記 29:13ラバンは、妹の息子ヤコブの事を聞くと、走って迎えに行き、ヤコブを抱き締め口づけした。それから、ヤコブを自分の家に案内した。ヤコブがラバンに事の次第をすべて話すと、
創世記 29:14ラバンは彼に言った。「お前は、本当にわたしの骨肉の者だ。」ヤコブがラバンのもとにひと月ほど滞在したある日、
創世記 29:15ラバンはヤコブに言った。「お前は身内の者だからといって、ただで働くことはない。どんな報酬が欲しいか言ってみなさい。」
創世記 29:16ところで、ラバンには二人の娘があり、姉の方はレア、妹の方はラケルといった。
創世記 29:17レアは優しい目をしていたが、ラケルは顔も美しく、容姿も優れていた。
創世記 29:18ヤコブはラケルを愛していたので、「下の娘のラケルをくださるなら、わたしは七年間あなたの所で働きます」と言った。
創世記 29:19ラバンは答えた。「あの娘をほかの人に嫁がせるより、お前に嫁がせる方が良い。わたしの所にいなさい。」
創世記 29:20ヤコブはラケルのために七年間働いたが、彼女を愛していたので、それはほんの数日のように思われた。
創世記 29:21ヤコブはラバンに言った。「約束の年月が満ちましたから、わたしのいいなずけと一緒にならせてください。」
創世記 29:22ラバンは土地の人たちを皆集め祝宴を開き、
創世記 29:23夜になると、娘のレアをヤコブのもとに連れて行ったので、ヤコブは彼女のところに入った。
創世記 29:24ラバンはまた、女奴隷ジルパを娘レアに召し使いとして付けてやった。
創世記 29:25ところが、朝になってみると、それはレアであった。ヤコブがラバンに、「どうしてこんなことをなさったのですか。わたしがあなたのもとで働いたのは、ラケルのためではありませんか。なぜ、わたしをだましたのですか」と言うと、
創世記 29:26ラバンは答えた。「我々の所では、妹を姉より先に嫁がせることはしないのだ。
創世記 29:27とにかく、この一週間の婚礼の祝いを済ませなさい。そうすれば、妹の方もお前に嫁がせよう。だがもう七年間、うちで働いてもらわねばならない。」
創世記 29:28ヤコブが、言われたとおり一週間の婚礼の祝いを済ませると、ラバンは下の娘のラケルもヤコブに妻として与えた。
創世記 29:29ラバンはまた、女奴隷ビルハを娘ラケルに召し使いとして付けてやった。
創世記 29:30こうして、ヤコブはラケルをめとった。ヤコブはレアよりもラケルを愛した。そして、更にもう七年ラバンのもとで働いた。
創世記 29:31主は、レアが疎んじられているのを見て彼女の胎を開かれたが、ラケルには子供ができなかった。
創世記 29:32レアは身ごもって男の子を産み、ルベンと名付けた。それは、彼女が、「主はわたしの苦しみを顧みて(ラア)くださった。これからは夫もわたしを愛してくれるにちがいない」と言ったからである。
創世記 29:33レアはまた身ごもって男の子を産み、「主はわたしが疎んじられていることを耳にされ(シャマ)、またこの子をも授けてくださった」と言って、シメオンと名付けた。
創世記 29:34レアはまた身ごもって男の子を産み、「これからはきっと、夫はわたしに結び付いて(ラベ)くれるだろう。夫のために三人も男の子を産んだのだから」と言った。そこで、その子をレビと名付けた。
創世記 29:35レアはまた身ごもって男の子を産み、「今度こそ主をほめたたえ(ヤダ)よう」と言った。そこで、その子をユダと名付けた。しばらく、彼女は子を産まなくなった。
30章
創世記 30:01ラケルは、ヤコブとの間に子供ができないことが分かると、姉をねたむようになり、ヤコブに向かって、「わたしにもぜひ子供を与えてください。与えてくださらなければ、わたしは死にます」と言った。
創世記 30:02ヤコブは激しく怒って、言った。「わたしが神に代われると言うのか。お前の胎に子供を宿らせないのは神御自身なのだ。」
創世記 30:03ラケルは、「わたしの召し使いのビルハがいます。彼女のところに入ってください。彼女が子供を産み、わたしがその子を膝の上に迎えれば、彼女によってわたしも子供を持つことができます」と言った。
創世記 30:04ラケルはヤコブに召し使いビルハを側女として与えたので、ヤコブは彼女のところに入った。
創世記 30:05やがて、ビルハは身ごもってヤコブとの間に男の子を産んだ。
創世記 30:06そのときラケルは、「わたしの訴えを神は正しくお裁き(ディン)になり、わたしの願いを聞き入れ男の子を与えてくださった」と言った。そこで、彼女はその子をダンと名付けた。
創世記 30:07ラケルの召し使いビルハはまた身ごもって、ヤコブとの間に二人目の男の子を産んだ。
創世記 30:08そのときラケルは、「姉と死に物狂いの争いをして(ニフタル)、ついに勝った」と言って、その名をナフタリと名付けた。
創世記 30:09レアも自分に子供ができなくなったのを知ると、自分の召し使いジルパをヤコブに側女として与えたので、
創世記 30:10レアの召し使いジルパはヤコブとの間に男の子を産んだ。
創世記 30:11そのときレアは、「なんと幸運な(ガド)」と言って、その子をガドと名付けた。
創世記 30:12レアの召し使いジルパはヤコブとの間に二人目の男の子を産んだ。
創世記 30:13そのときレアは、「なんと幸せなこと(アシェル)か。娘たちはわたしを幸せ者と言うにちがいない」と言って、その子をアシェルと名付けた。
創世記 30:14小麦の刈り入れのころ、ルベンは野原で恋なすびを見つけ、母レアのところへ持って来た。ラケルがレアに、「あなたの子供が取って来た恋なすびをわたしに分けてください」と言うと、
創世記 30:15レアは言った。「あなたは、わたしの夫を取っただけでは気が済まず、わたしの息子の恋なすびまで取ろうとするのですか。」「それでは、あなたの子供の恋なすびの代わりに、今夜あの人があなたと床を共にするようにしましょう」とラケルは答えた。
創世記 30:16夕方になり、ヤコブが野原から帰って来ると、レアは出迎えて言った。「あなたはわたしのところに来なければなりません。わたしは、息子の恋なすびであなたを雇ったのですから。」その夜、ヤコブはレアと寝た。
創世記 30:17神がレアの願いを聞き入れられたので、レアは身ごもってヤコブとの間に五人目の男の子を産んだ。
創世記 30:18そのときレアは、「わたしが召し使いを夫に与えたので、神はその報酬(サカル)をくださった」と言って、その子をイサカルと名付けた。
創世記 30:19レアはまた身ごもって、ヤコブとの間に六人目の男の子を産んだ。
創世記 30:20そのときレアは、「神がすばらしい贈り物をわたしにくださった。今度こそ、夫はわたしを尊敬してくれる(ザバル)でしょう。夫のために六人も男の子を産んだのだから」と言って、その子をゼブルンと名付けた。
創世記 30:21その後、レアは女の子を産み、その子をディナと名付けた。
創世記 30:22しかし、神はラケルも御心に留め、彼女の願いを聞き入れその胎を開かれたので、
創世記 30:23ラケルは身ごもって男の子を産んだ。そのときラケルは、「神がわたしの恥をすすいでくださった」と言った。
創世記 30:24彼女は、「主がわたしにもう一人男の子を加えてくださいますように(ヨセフ)」と願っていたので、その子をヨセフと名付けた。
創世記 30:25ラケルがヨセフを産んだころ、ヤコブはラバンに言った。「わたしを独り立ちさせて、生まれ故郷へ帰らせてください。
創世記 30:26わたしは今まで、妻を得るためにあなたのところで働いてきたのですから、妻子と共に帰らせてください。あなたのために、わたしがどんなに尽くしてきたか、よくご存じのはずです。」
創世記 30:27「もし、お前さえ良ければ、もっといてほしいのだが。実は占いで、わたしはお前のお陰で、主から祝福をいただいていることが分かったのだ」とラバンは言い、
創世記 30:28更に続けて、「お前の望む報酬をはっきり言いなさい。必ず支払うから」と言った。
創世記 30:29ヤコブは言った。「わたしがどんなにあなたのために尽くし、家畜の世話をしてきたかよくご存じのはずです。
創世記 30:30わたしが来るまではわずかだった家畜が、今ではこんなに多くなっています。わたしが来てからは、主があなたを祝福しておられます。しかし今のままでは、いつになったらわたしは自分の家を持つことができるでしょうか。」
創世記 30:31「何をお前に支払えばよいのか」とラバンが尋ねると、ヤコブは答えた。「何もくださるには及びません。ただこういう条件なら、もう一度あなたの群れを飼い、世話をいたしましょう。
創世記 30:32今日、わたしはあなたの群れを全部見回って、その中から、ぶちとまだらの羊をすべてと羊の中で黒みがかったものをすべて、それからまだらとぶちの山羊を取り出しておきますから、それをわたしの報酬にしてください。
創世記 30:33明日、あなたが来てわたしの報酬をよく調べれば、わたしの正しいことは証明されるでしょう。山羊の中にぶちとまだらでないものや、羊の中に黒みがかっていないものがあったら、わたしが盗んだものと見なして結構です。」
創世記 30:34ラバンは言った。「よろしい。お前の言うとおりにしよう。」
創世記 30:35ところが、その日、ラバンは縞やまだらの雄山羊とぶちやまだらの雌山羊全部、つまり白いところが混じっているもの全部とそれに黒みがかった羊をみな取り出して自分の息子たちの手に渡し、
創世記 30:36ヤコブがラバンの残りの群れを飼っている間に、自分とヤコブとの間に歩いて三日かかるほどの距離をおいた。
創世記 30:37ヤコブは、ポプラとアーモンドとプラタナスの木の若枝を取って来て、皮をはぎ、枝に白い木肌の縞を作り、
創世記 30:38家畜の群れがやって来たときに群れの目につくように、皮をはいだ枝を家畜の水飲み場の水槽の中に入れた。そして、家畜の群れが水を飲みにやって来たとき、さかりがつくようにしたので、
創世記 30:39家畜の群れは、その枝の前で交尾して縞やぶちやまだらのものを産んだ。
創世記 30:40また、ヤコブは羊を二手に分けて、一方の群れをラバンの群れの中の縞のものと全体が黒みがかったものとに向かわせた。彼は、自分の群れだけにはそうしたが、ラバンの群れにはそうしなかった。
創世記 30:41また、丈夫な羊が交尾する時期になると、ヤコブは皮をはいだ枝をいつも水ぶねの中に入れて群れの前に置き、枝のそばで交尾させたが、
創世記 30:42弱い羊のときには枝を置かなかった。そこで、弱いのはラバンのものとなり、丈夫なのはヤコブのものとなった。
創世記 30:43こうして、ヤコブはますます豊かになり、多くの家畜や男女の奴隷、それにらくだやろばなどを持つようになった。
31章
創世記 31:01ヤコブは、ラバンの息子たちが、「ヤコブは我々の父のものを全部奪ってしまった。父のものをごまかして、あの富を築き上げたのだ」と言っているのを耳にした。
創世記 31:02また、ラバンの態度を見ると、確かに以前とは変わっていた。
創世記 31:03主はヤコブに言われた。「あなたは、あなたの故郷である先祖の土地に帰りなさい。わたしはあなたと共にいる。」
創世記 31:04ヤコブは人をやって、ラケルとレアを家畜の群れがいる野原に呼び寄せて、
創世記 31:05言った。「最近、気づいたのだが、あなたたちのお父さんは、わたしに対して以前とは態度が変わった。しかし、わたしの父の神は、ずっとわたしと共にいてくださった。
創世記 31:06あなたたちも知っているように、わたしは全力を尽くしてあなたたちのお父さんのもとで働いてきたのに、
創世記 31:07わたしをだまして、わたしの報酬を十回も変えた。しかし、神はわたしに害を加えることをお許しにならなかった。
創世記 31:08お父さんが、『ぶちのものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみなぶちのものを産むし、『縞のものがお前の報酬だ』と言えば、群れはみな縞のものを産んだ。
創世記 31:09神はあなたたちのお父さんの家畜を取り上げて、わたしにお与えになったのだ。
創世記 31:10群れの発情期のころのことだが、夢の中でわたしが目を上げて見ると、雌山羊の群れとつがっている雄山羊は縞とぶちとまだらのものばかりだった。
創世記 31:11そのとき、夢の中で神の御使いが、『ヤコブよ』と言われたので、『はい』と答えると、
創世記 31:12こう言われた。『目を上げて見なさい。雌山羊の群れとつがっている雄山羊はみな、縞とぶちとまだらのものだけだ。ラバンのあなたに対する仕打ちは、すべてわたしには分かっている。
創世記 31:13わたしはベテルの神である。かつてあなたは、そこに記念碑を立てて油を注ぎ、わたしに誓願を立てたではないか。さあ、今すぐこの土地を出て、あなたの故郷に帰りなさい。』」
創世記 31:14ラケルとレアはヤコブに答えた。「父の家に、わたしたちへの嗣業の割り当て分がまだあるでしょうか。
創世記 31:15わたしたちはもう、父にとって他人と同じではありませんか。父はわたしたちを売って、しかもそのお金を使い果たしてしまったのです。
創世記 31:16神様が父から取り上げられた財産は、確かに全部わたしたちと子供たちのものです。ですから、どうか今すぐ、神様があなたに告げられたとおりになさってください。」
創世記 31:17ヤコブは直ちに、子供たちと妻たちをらくだに乗せ、
創世記 31:18パダン・アラムで得たすべての財産である家畜を駆り立てて、父イサクのいるカナン地方へ向かって出発した。
創世記 31:19そのとき、ラバンは羊の毛を刈りに出かけていたので、ラケルは父の家の守り神の像を盗んだ。
創世記 31:20ヤコブもアラム人ラバンを欺いて、自分が逃げ去ることを悟られないようにした。
創世記 31:21ヤコブはこうして、すべての財産を持って逃げ出し、川を渡りギレアドの山地へ向かった。
創世記 31:22ヤコブが逃げたことがラバンに知れたのは、三日目であった。
創世記 31:23ラバンは一族を率いて、七日の道のりを追いかけて行き、ギレアドの山地でヤコブに追いついたが、
創世記 31:24その夜夢の中で神は、アラム人ラバンのもとに来て言われた。「ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい。」
創世記 31:25ラバンがヤコブに追いついたとき、ヤコブは山の上に天幕を張っていたので、ラバンも一族と共にギレアドの山に天幕を張った。
創世記 31:26ラバンはヤコブに言った。「一体何ということをしたのか。わたしを欺き、しかも娘たちを戦争の捕虜のように駆り立てて行くとは。
創世記 31:27なぜ、こっそり逃げ出したりして、わたしをだましたのか。ひとこと言ってくれさえすれば、わたしは太鼓や竪琴で喜び歌って、送り出してやったものを。
創世記 31:28孫や娘たちに別れの口づけもさせないとは愚かなことをしたものだ。
創世記 31:29わたしはお前たちをひどい目に遭わせることもできるが、夕べ、お前たちの父の神が、『ヤコブを一切非難せぬよう、よく心に留めておきなさい』とわたしにお告げになった。
創世記 31:30父の家が恋しくて去るのなら、去ってもよい。しかし、なぜわたしの守り神を盗んだのか。」
創世記 31:31ヤコブはラバンに答えた。「わたしは、あなたが娘たちをわたしから奪い取るのではないかと思って恐れただけです。
創世記 31:32もし、あなたの守り神がだれかのところで見つかれば、その者を生かしてはおきません。我々一同の前で、わたしのところにあなたのものがあるかどうか調べて、取り戻してください。」ヤコブは、ラケルがそれを盗んでいたことを知らなかったのである。
創世記 31:33そこで、ラバンはヤコブの天幕に入り、更にレアの天幕や二人の召し使いの天幕にも入って捜してみたが、見つからなかった。ラバンがレアの天幕を出てラケルの天幕に入ると、
創世記 31:34ラケルは既に守り神の像を取って、らくだの鞍の下に入れ、その上に座っていたので、ラバンは天幕の中をくまなく調べたが見つけることはできなかった。
創世記 31:35ラケルは父に言った。「お父さん、どうか悪く思わないでください。わたしは今、月のものがあるので立てません。」ラバンはなおも捜したが、守り神の像を見つけることはできなかった。
創世記 31:36ヤコブは怒ってラバンを責め、言い返した。「わたしに何の背反、何の罪があって、わたしの後を追って来られたのですか。
創世記 31:37あなたはわたしの物を一つ残らず調べられましたが、あなたの家の物が一つでも見つかりましたか。それをここに出して、わたしの一族とあなたの一族の前に置き、わたしたち二人の間を、皆に裁いてもらおうではありませんか。
創世記 31:38この二十年間というもの、わたしはあなたのもとにいましたが、あなたの雌羊や雌山羊が子を産み損ねたことはありません。わたしは、あなたの群れの雄羊を食べたこともありません。
創世記 31:39野獣にかみ裂かれたものがあっても、あなたのところへ持って行かないで自分で償いました。昼であろうと夜であろうと、盗まれたものはみな弁償するようにあなたは要求しました。
創世記 31:40しかも、わたしはしばしば、昼は猛暑に夜は極寒に悩まされ、眠ることもできませんでした。
創世記 31:41この二十年間というもの、わたしはあなたの家で過ごしましたが、そのうち十四年はあなたの二人の娘のため、六年はあなたの家畜の群れのために働きました。しかも、あなたはわたしの報酬を十回も変えました。
創世記 31:42もし、わたしの父の神、アブラハムの神、イサクの畏れ敬う方がわたしの味方でなかったなら、あなたはきっと何も持たせずにわたしを追い出したことでしょう。神は、わたしの労苦と悩みを目に留められ、昨夜、あなたを諭されたのです。」
創世記 31:43ラバンは、ヤコブに答えた。「この娘たちはわたしの娘だ。この孫たちもわたしの孫だ。この家畜の群れもわたしの群れ、いや、お前の目の前にあるものはみなわたしのものだ。しかし、娘たちや娘たちが産んだ孫たちのために、もはや、手出しをしようとは思わない。
創世記 31:44さあ、これから、お前とわたしは契約を結ぼうではないか。そして、お前とわたしの間に何か証拠となるものを立てよう。」
創世記 31:45ヤコブは一つの石を取り、それを記念碑として立て、
創世記 31:46一族の者に、「石を集めてきてくれ」と言った。彼らは石を取ってきて石塚を築き、その石塚の傍らで食事を共にした。
創世記 31:47ラバンはそれをエガル・サハドタと呼び、ヤコブはガルエドと呼んだ。
創世記 31:48ラバンはまた、「この石塚(ガル)は、今日からお前とわたしの間の証拠(エド)となる」とも言った。そこで、その名はガルエドと呼ばれるようになった。
創世記 31:49そこはまた、ミツパ(見張り所)とも呼ばれた。「我々が互いに離れているときも、主がお前とわたしの間を見張ってくださるように。
創世記 31:50もし、お前がわたしの娘たちを苦しめたり、わたしの娘たち以外にほかの女性をめとったりするなら、たとえ、ほかにだれもいなくても、神御自身がお前とわたしの証人であることを忘れるな」とラバンが言ったからである。
創世記 31:51ラバンは更に、ヤコブに言った。「ここに石塚がある。またここに、わたしがお前との間に立てた記念碑がある。
創世記 31:52この石塚は証拠であり、記念碑は証人だ。敵意をもって、わたしがこの石塚を越えてお前の方に侵入したり、お前がこの石塚とこの記念碑を越えてわたしの方に侵入したりすることがないようにしよう。
創世記 31:53どうか、アブラハムの神とナホルの神、彼らの先祖の神が我々の間を正しく裁いてくださいますように。」ヤコブも、父イサクの畏れ敬う方にかけて誓った。
創世記 31:54ヤコブは山の上でいけにえをささげ、一族を招いて食事を共にした。食事の後、彼らは山で一夜を過ごした。
32章
創世記 32:01次の朝早く、ラバンは孫や娘たちに口づけして祝福を与え、そこを去って自分の家へ帰って行った。
創世記 32:02ヤコブが旅を続けていると、突然、神の御使いたちが現れた。
創世記 32:03ヤコブは彼らを見たとき、「ここは神の陣営だ」と言い、その場所をマハナイム(二組の陣営)と名付けた。
創世記 32:04ヤコブは、あらかじめ、セイル地方、すなわちエドムの野にいる兄エサウのもとに使いの者を遣わすことにし、
創世記 32:05お前たちはわたしの主人エサウにこう言いなさいと命じた。「あなたの僕ヤコブはこう申しております。わたしはラバンのもとに滞在し今日に至りましたが、
創世記 32:06牛、ろば、羊、男女の奴隷を所有するようになりました。そこで、使いの者を御主人様のもとに送って御報告し、御機嫌をお伺いいたします。」
創世記 32:07使いの者はヤコブのところに帰って来て、「兄上のエサウさまのところへ行って参りました。兄上様の方でも、あなたを迎えるため、四百人のお供を連れてこちらへおいでになる途中でございます」と報告した。
創世記 32:08ヤコブは非常に恐れ、思い悩んだ末、連れている人々を、羊、牛、らくだなどと共に二組に分けた。
創世記 32:09エサウがやって来て、一方の組に攻撃を仕掛けても、残りの組は助かると思ったのである。
創世記 32:10ヤコブは祈った。「わたしの父アブラハムの神、わたしの父イサクの神、主よ、あなたはわたしにこう言われました。『あなたは生まれ故郷に帰りなさい。わたしはあなたに幸いを与える』と。
創世記 32:11わたしは、あなたが僕に示してくださったすべての慈しみとまことを受けるに足りない者です。かつてわたしは、一本の杖を頼りにこのヨルダン川を渡りましたが、今は二組の陣営を持つまでになりました。
創世記 32:12どうか、兄エサウの手から救ってください。わたしは兄が恐ろしいのです。兄は攻めて来て、わたしをはじめ母も子供も殺すかもしれません。
創世記 32:13あなたは、かつてこう言われました。『わたしは必ずあなたに幸いを与え、あなたの子孫を海辺の砂のように数えきれないほど多くする』と。」
創世記 32:14その夜、ヤコブはそこに野宿して、自分の持ち物の中から兄エサウへの贈り物を選んだ。
創世記 32:15それは、雌山羊二百匹、雄山羊二十匹、雌羊二百匹、雄羊二十匹、
創世記 32:16乳らくだ三十頭とその子供、雌牛四十頭、雄牛十頭、雌ろば二十頭、雄ろば十頭であった。
創世記 32:17それを群れごとに分け、召し使いたちの手に渡して言った。「群れと群れとの間に距離を置き、わたしの先に立って行きなさい。」
創世記 32:18また、先頭を行く者には次のように命じた。「兄のエサウがお前に出会って、『お前の主人は誰だ。どこへ行くのか。ここにいる家畜は誰のものだ』と尋ねたら、
創世記 32:19こう言いなさい。『これは、あなたさまの僕ヤコブのもので、御主人のエサウさまに差し上げる贈り物でございます。ヤコブも後から参ります』と。」
創世記 32:20ヤコブは、二番目の者にも、三番目の者にも、群れの後について行くすべての者に命じて言った。「エサウに出会ったら、これと同じことを述べ、
創世記 32:21『あなたさまの僕ヤコブも後から参ります』と言いなさい。」ヤコブは、贈り物を先に行かせて兄をなだめ、その後で顔を合わせれば、恐らく快く迎えてくれるだろうと思ったのである。
創世記 32:22こうして、贈り物を先に行かせ、ヤコブ自身は、その夜、野営地にとどまった。
創世記 32:23その夜、ヤコブは起きて、二人の妻と二人の側女、それに十一人の子供を連れてヤボクの渡しを渡った。
創世記 32:24皆を導いて川を渡らせ、持ち物も渡してしまうと、
創世記 32:25ヤコブは独り後に残った。そのとき、何者かが夜明けまでヤコブと格闘した。
創世記 32:26ところが、その人はヤコブに勝てないとみて、ヤコブの腿の関節を打ったので、格闘をしているうちに腿の関節がはずれた。
創世記 32:27「もう去らせてくれ。夜が明けてしまうから」とその人は言ったが、ヤコブは答えた。「いいえ、祝福してくださるまでは離しません。」
創世記 32:28「お前の名は何というのか」とその人が尋ね、「ヤコブです」と答えると、
創世記 32:29その人は言った。「お前の名はもうヤコブではなく、これからはイスラエルと呼ばれる。お前は神と人と闘って勝ったからだ。」
創世記 32:30「どうか、あなたのお名前を教えてください」とヤコブが尋ねると、「どうして、わたしの名を尋ねるのか」と言って、ヤコブをその場で祝福した。
創世記 32:31ヤコブは、「わたしは顔と顔とを合わせて神を見たのに、なお生きている」と言って、その場所をペヌエル(神の顔)と名付けた。
創世記 32:32ヤコブがペヌエルを過ぎたとき、太陽は彼の上に昇った。ヤコブは腿を痛めて足を引きずっていた。
創世記 32:33こういうわけで、イスラエルの人々は今でも腿の関節の上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブの腿の関節、つまり腰の筋のところを打ったからである。
33章
創世記 33:01ヤコブが目を上げると、エサウが四百人の者を引き連れて来るのが見えた。ヤコブは子供たちをそれぞれ、レアとラケルと二人の側女とに分け、
創世記 33:02側女とその子供たちを前に、レアとその子供たちをその後に、ラケルとヨセフを最後に置いた。
創世記 33:03ヤコブはそれから、先頭に進み出て、兄のもとに着くまでに七度地にひれ伏した。
創世記 33:04エサウは走って来てヤコブを迎え、抱き締め、首を抱えて口づけし、共に泣いた。
創世記 33:05やがて、エサウは顔を上げ、女たちや子供たちを見回して尋ねた。「一緒にいるこの人々は誰なのか。」「あなたの僕であるわたしに、神が恵んでくださった子供たちです。」ヤコブが答えると、
創世記 33:06側女たちが子供たちと共に進み出てひれ伏し、
創世記 33:07次に、レアが子供たちと共に進み出てひれ伏し、最後に、ヨセフとラケルが進み出てひれ伏した。
創世記 33:08エサウは尋ねた。「今、わたしが出会ったあの多くの家畜は何のつもりか。」ヤコブが、「御主人様の好意を得るためです」と答えると、
創世記 33:09エサウは言った。「弟よ、わたしのところには何でも十分ある。お前のものはお前が持っていなさい。」
創世記 33:10ヤコブは言った。「いいえ。もし御好意をいただけるのであれば、どうぞ贈り物をお受け取りください。兄上のお顔は、わたしには神の御顔のように見えます。このわたしを温かく迎えてくださったのですから。
創世記 33:11どうか、持参しました贈り物をお納めください。神がわたしに恵みをお与えになったので、わたしは何でも持っていますから。」ヤコブがしきりに勧めたので、エサウは受け取った。
創世記 33:12それからエサウは言った。「さあ、一緒に出かけよう。わたしが先導するから。」
創世記 33:13「御主人様。ご存じのように、子供たちはか弱く、わたしも羊や牛の子に乳を飲ませる世話をしなければなりません。群れは、一日でも無理に追い立てるとみな死んでしまいます。
創世記 33:14どうか御主人様、僕におかまいなく先にお進みください。わたしは、ここにいる家畜や子供たちの歩みに合わせてゆっくり進み、セイルの御主人様のもとへ参りましょう。」ヤコブがこう答えたので、
創世記 33:15エサウは言った。「では、わたしが連れている者を何人か、お前のところに残しておくことにしよう。」「いいえ。それには及びません。御好意だけで十分です」と答えたので、
創世記 33:16エサウは、その日セイルへの道を帰って行った。
創世記 33:17ヤコブはスコトへ行き、自分の家を建て、家畜の小屋を作った。そこで、その場所の名はスコト(小屋)と呼ばれている。
創世記 33:18ヤコブはこうして、パダン・アラムから無事にカナン地方にあるシケムの町に着き、町のそばに宿営した。
創世記 33:19ヤコブは、天幕を張った土地の一部を、シケムの父ハモルの息子たちから百ケシタで買い取り、
創世記 33:20そこに祭壇を建てて、それをエル・エロヘ・イスラエルと呼んだ。
34章
創世記 34:01あるとき、レアとヤコブとの間に生まれた娘のディナが土地の娘たちに会いに出かけたが、
創世記 34:02その土地の首長であるヒビ人ハモルの息子シケムが彼女を見かけて捕らえ、共に寝て辱めた。
創世記 34:03シケムはヤコブの娘ディナに心を奪われ、この若い娘を愛し、言い寄った。
創世記 34:04更にシケムは、父ハモルに言った。「どうか、この娘と結婚させてください。」
創世記 34:05ヤコブは、娘のディナが汚されたことを聞いたが、息子たちは家畜を連れて野に出ていたので、彼らが帰るまで黙っていた。
創世記 34:06シケムの父ハモルがヤコブと話し合うためにやって来たとき、
創世記 34:07ヤコブの息子たちが野から帰って来てこの事を聞き、皆、互いに嘆き、また激しく憤った。シケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルに対して恥ずべきことを行ったからである。それはしてはならないことであった。
創世記 34:08ハモルは彼らと話した。「息子のシケムは、あなたがたの娘さんを恋い慕っています。どうか、娘さんを息子の嫁にしてください。
創世記 34:09お互いに姻戚関係を結び、あなたがたの娘さんたちをわたしどもにくださり、わたしどもの娘を嫁にしてくださいませんか。
創世記 34:10そして、わたしどもと一緒に住んでください。あなたがたのための土地も十分あります。どうか、ここに移り住んで、自由に使ってください。」
創世記 34:11シケムも、ディナの父や兄弟たちに言った。「ぜひとも、よろしくお願いします。お申し出があれば何でも差し上げます。
創世記 34:12どんなに高い結納金でも贈り物でも、お望みどおりに差し上げます。ですから、ぜひあの方をわたしの妻にください。」
創世記 34:13しかし、シケムが妹のディナを汚したので、ヤコブの息子たちは、シケムとその父ハモルをだましてこう答えた。
創世記 34:14「割礼を受けていない男に、妹を妻として与えることはできません。そのようなことは我々の恥とするところです。
創世記 34:15ただ、次の条件がかなえられれば、あなたたちに同意しましょう。それは、あなたたちの男性が皆、割礼を受けて我々と同じようになることです。
創世記 34:16そうすれば、我々の娘たちをあなたたちに与え、あなたたちの娘を我々がめとります。そして我々は、あなたたちと一緒に住んで一つの民となります。
創世記 34:17しかし、もし割礼を受けることに同意しないなら、我々は娘を連れてここを立ち去ることにします。」
創世記 34:18ハモルとその息子シケムは、この条件なら受け入れてもよいと思った。
創世記 34:19とくにシケムは、ヤコブの娘を愛していたので、ためらわず実行することにした。彼は、ハモル家の中では最も尊敬されていた。
創世記 34:20ハモルと息子シケムは、町の門のところへ行き町の人々に提案した。
創世記 34:21「あの人たちは、我々と仲良くやっていける人たちだ。彼らをここに住まわせ、この土地を自由に使ってもらうことにしようではないか。土地は御覧のとおり十分広いから、彼らが来ても大丈夫だ。そして、彼らの娘たちを我々の嫁として迎え、我々の娘たちを彼らに与えようではないか。
創世記 34:22ただ、次の条件がかなえられれば、あの人たちは我々と一緒に住み、一つの民となることに同意するというのだ。それは、彼らが割礼を受けているように、我々も男性は皆、割礼を受けることだ。
創世記 34:23そうすれば、彼らの家畜の群れも財産も動物もみな、我々のものになるではないか。それには、ただ彼らの条件に同意さえすれば、彼らは我々と一緒に住むことができるのだ。」
創世記 34:24町の門のところに集まっていた人々は皆、ハモルと息子シケムの提案を受け入れた。町の門のところに集まっていた男性はこうして、すべて割礼を受けた。
創世記 34:25三日目になって、男たちがまだ傷の痛みに苦しんでいたとき、ヤコブの二人の息子、つまりディナの兄のシメオンとレビは、めいめい剣を取って難なく町に入り、男たちをことごとく殺した。
創世記 34:26ハモルと息子シケムも剣にかけて殺し、シケムの家からディナを連れ出した。
創世記 34:27ヤコブの息子たちは、倒れている者たちに襲いかかり、更に町中を略奪した。自分たちの妹を汚したからである。
創世記 34:28そして、羊や牛やろばなど、町の中のものも野にあるものも奪い取り、
創世記 34:29家の中にあるものもみな奪い、女も子供もすべて捕虜にした。
創世記 34:30「困ったことをしてくれたものだ。わたしはこの土地に住むカナン人やペリジ人の憎まれ者になり、のけ者になってしまった。こちらは少人数なのだから、彼らが集まって攻撃してきたら、わたしも家族も滅ぼされてしまうではないか」とヤコブがシメオンとレビに言うと、
創世記 34:31二人はこう言い返した。「わたしたちの妹が娼婦のように扱われてもかまわないのですか。」
35章
創世記 35:01神はヤコブに言われた。「さあ、ベテルに上り、そこに住みなさい。そしてその地に、あなたが兄エサウを避けて逃げて行ったとき、あなたに現れた神のための祭壇を造りなさい。」
創世記 35:02ヤコブは、家族の者や一緒にいるすべての人々に言った。「お前たちが身に着けている外国の神々を取り去り、身を清めて衣服を着替えなさい。
創世記 35:03さあ、これからベテルに上ろう。わたしはその地に、苦難の時わたしに答え、旅の間わたしと共にいてくださった神のために祭壇を造る。」
創世記 35:04人々は、持っていた外国のすべての神々と、着けていた耳飾りをヤコブに渡したので、ヤコブはそれらをシケムの近くにある樫の木の下に埋めた。
創世記 35:05こうして一同は出発したが、神が周囲の町々を恐れさせたので、ヤコブの息子たちを追跡する者はなかった。
創世記 35:06ヤコブはやがて、一族の者すべてと共に、カナン地方のルズ、すなわちベテルに着き、
創世記 35:07そこに祭壇を築いて、その場所をエル・ベテルと名付けた。兄を避けて逃げて行ったとき、神がそこでヤコブに現れたからである。
創世記 35:08リベカの乳母デボラが死に、ベテルの下手にある樫の木の下に葬られた。そこで、その名はアロン・バクト(嘆きの樫の木)と呼ばれるようになった。
創世記 35:09ヤコブがパダン・アラムから帰って来たとき、神は再びヤコブに現れて彼を祝福された。
創世記 35:10神は彼に言われた。「あなたの名はヤコブである。しかし、あなたの名はもはやヤコブと呼ばれない。イスラエルがあなたの名となる。」神はこうして、彼をイスラエルと名付けられた。
創世記 35:11神は、また彼に言われた。「わたしは全能の神である。産めよ、増えよ。あなたからつの国民、いや多くの国民の群れが起こりあなたの腰から王たちが出る。
創世記 35:12わたしは、アブラハムとイサクに与えた土地をあなたに与える。また、あなたに続く子孫にこの土地を与える。」
創世記 35:13神はヤコブと語られた場所を離れて昇って行かれた。
創世記 35:14ヤコブは、神が自分と語られた場所に記念碑を立てた。それは石の柱で、彼はその上にぶどう酒を注ぎかけ、また油を注いだ。
創世記 35:15そしてヤコブは、神が自分と語られた場所をベテルと名付けた。
創世記 35:16一同がベテルを出発し、エフラタまで行くにはまだかなりの道のりがあるときに、ラケルが産気づいたが、難産であった。
創世記 35:17ラケルが産みの苦しみをしているとき、助産婦は彼女に、「心配ありません。今度も男の子ですよ」と言った。
創世記 35:18ラケルが最後の息を引き取ろうとするとき、その子をベン・オニ(わたしの苦しみの子)と名付けたが、父はこれをベニヤミン(幸いの子)と呼んだ。
創世記 35:19ラケルは死んで、エフラタ、すなわち今日のベツレヘムへ向かう道の傍らに葬られた。
創世記 35:20ヤコブは、彼女の葬られた所に記念碑を立てた。それは、ラケルの葬りの碑として今でも残っている。
創世記 35:21イスラエルは更に旅を続け、ミグダル・エデルを過ぎた所に天幕を張った。
創世記 35:22イスラエルがそこに滞在していたとき、ルベンは父の側女ビルハのところへ入って寝た。このことはイスラエルの耳にも入った。
創世記 35:23レアの息子がヤコブの長男ルベン、それからシメオン、レビ、ユダ、イサカル、ゼブルン、
創世記 35:24ラケルの息子がヨセフとベニヤミン、
創世記 35:25ラケルの召し使いビルハの息子がダンとナフタリ、
創世記 35:26レアの召し使いジルパの息子がガドとアシェルである。これらは、パダン・アラムで生まれたヤコブの息子たちである。
創世記 35:27ヤコブは、キルヤト・アルバ、すなわちヘブロンのマムレにいる父イサクのところへ行った。そこは、イサクだけでなく、アブラハムも滞在していた所である。
創世記 35:28イサクの生涯は百八十年であった。
創世記 35:29イサクは息を引き取り、高齢のうちに満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。息子のエサウとヤコブが彼を葬った。
36章
創世記 36:01エサウ、すなわちエドムの系図は次のとおりである。
創世記 36:02エサウは、カナンの娘たちの中から妻を迎えた。ヘト人エロンの娘アダ、ヒビ人ツィブオンの孫娘でアナの娘オホリバマ、
創世記 36:03それに、ネバヨトの姉妹でイシュマエルの娘バセマトである。
創世記 36:04アダは、エサウとの間にエリファズを産み、バセマトはレウエルを産んだ。
創世記 36:05オホリバマは、エウシュ、ヤラム、コラを産んだ。これらは、カナン地方で生まれたエサウの息子たちである。
創世記 36:06エサウは、妻、息子、娘、家で働くすべての人々、家畜の群れ、すべての動物を連れ、カナンの土地で手に入れた全財産を携え、弟ヤコブのところから離れてほかの土地へ出て行った。
創世記 36:07彼らの所有物は一緒に住むにはあまりにも多く、滞在していた土地は彼らの家畜を養うには狭すぎたからである。
創世記 36:08エサウはこうして、セイルの山地に住むようになった。エサウとはエドムのことである。
創世記 36:09セイルの山地に住む、エドム人の先祖エサウの系図は次のとおりである。
創世記 36:10まず、エサウの息子たちの名前を挙げると、エリファズはエサウの妻アダの子で、レウエルはエサウの妻バセマトの子である。
創世記 36:11エリファズの息子たちは、テマン、オマル、ツェフォ、ガタム、ケナズである。
創世記 36:12エサウの息子エリファズの側女ティムナは、エリファズとの間にアマレクを産んだ。以上が、エサウの妻アダの子孫である。
創世記 36:13レウエルの息子たちは、ナハト、ゼラ、シャンマ、ミザである。以上が、エサウの妻バセマトの子孫である。
創世記 36:14ツィブオンの孫娘で、アナの娘であるエサウの妻オホリバマの息子たちは、次のとおりである。彼女は、エサウとの間にエウシュ、ヤラム、コラを産んだ。
創世記 36:15エサウの子孫である首長は次のとおりである。まず、エサウの長男エリファズの息子たちについていえば、首長テマン、首長オマル、首長ツェフォ、首長ケナズ、
創世記 36:16首長コラ、首長ガタム、首長アマレクである。これらは、エドム地方に住むエリファズ系の首長で、アダの子孫である。
創世記 36:17次に、エサウの子レウエルの息子たちについていえば、首長ナハト、首長ゼラ、首長シャンマ、首長ミザである。これらは、エドム地方に住むレウエル系の首長で、エサウの妻バセマトの子孫である。
創世記 36:18エサウの妻オホリバマの息子たちについていえば、首長エウシュ、首長ヤラム、首長コラである。これらは、アナの娘であるエサウの妻オホリバマから生まれた首長である。
創世記 36:19以上が、エサウ、すなわちエドムの子孫である首長たちである。
創世記 36:20この土地に住むフリ人セイルの息子たちは、ロタン、ショバル、ツィブオン、アナ、
創世記 36:21ディション、エツェル、ディシャンである。これらは、エドム地方に住むセイルの息子で、フリ人の首長たちである。
創世記 36:22ロタンの息子たちは、ホリとヘマムであり、ロタンの妹がティムナである。
創世記 36:23ショバルの息子たちは、アルワン、マナハト、エバル、シェフォ、オナムである。
創世記 36:24ツィブオンの息子たちは、アヤとアナである。アナは父ツィブオンのろばを飼っていたとき、荒れ野で泉を発見した人である。
創世記 36:25アナの子供たちは、ディションとアナの娘オホリバマである。
創世記 36:26ディションの息子たちは、ヘムダン、エシュバン、イトラン、ケランである。
創世記 36:27エツェルの息子たちは、ビルハン、ザアワン、アカンである。
創世記 36:28ディシャンの息子たちは、ウツとアランである。
創世記 36:29フリ人の首長は次のとおりである。首長ロタン、首長ショバル、首長ツィブオン、首長アナ、
創世記 36:30首長ディション、首長エツェル、首長ディシャン。以上がフリ人の首長であり、セイル地方に住むそれぞれの首長であった。
創世記 36:31イスラエルの人々を治める王がまだいなかった時代に、エドム地方を治めていた王たちは次のとおりである。
創世記 36:32エドムで治めていたのは、ベオルの息子ベラであり、その町の名はディンハバといった。
創世記 36:33ベラが死んで、代わりに王となったのは、ボツラ出身でゼラの息子ヨバブである。
創世記 36:34ヨバブが死んで、代わりに王となったのは、テマン人の土地から出たフシャムである。
創世記 36:35フシャムが死んで代わりに王となったのは、ベダドの息子ハダドであり、モアブの野でミディアン人を撃退した人である。その町の名はアビトといった。
創世記 36:36ハダドが死んで代わりに王となったのは、マスレカ出身のサムラである。
創世記 36:37サムラが死んで代わりに王となったのは、ユーフラテス川のレホボト出身のシャウルである。
創世記 36:38シャウルが死んで、代わりに王となったのは、アクボルの息子バアル・ハナンである。
創世記 36:39アクボルの息子バアル・ハナンが死んで代わりに王となったのは、ハダドである。その町の名はパウといい、その妻の名はメヘタブエルといった。彼女はマトレドの娘で、メ・ザハブの孫娘である。
創世記 36:40エサウ系の首長たちの名前を氏族と場所の名に従って挙げれば、首長ティムナ、首長アルワ、首長エテト、
創世記 36:41首長オホリバマ、首長エラ、首長ピノン、
創世記 36:42首長ケナズ、首長テマン、首長ミブツァル、
創世記 36:43首長マグディエル、首長イラムである。以上がエドムの首長であって、彼らが所有した領地に従って挙げたものである。エサウは、エドム人の先祖である
37章
創世記 37:01ヤコブは、父がかつて滞在していたカナン地方に住んでいた。
創世記 37:02ヤコブの家族の由来は次のとおりである。ヨセフは十七歳のとき、兄たちと羊の群れを飼っていた。まだ若く、父の側女ビルハやジルパの子供たちと一緒にいた。ヨセフは兄たちのことを父に告げ口した。
創世記 37:03イスラエルは、ヨセフが年寄り子であったので、どの息子よりもかわいがり、彼には裾の長い晴れ着を作ってやった。
創世記 37:04兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。
創世記 37:05ヨセフは夢を見て、それを兄たちに語ったので、彼らはますます憎むようになった。
創世記 37:06ヨセフは言った。「聞いてください。わたしはこんな夢を見ました。
創世記 37:07畑でわたしたちが束を結わえていると、いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」
創世記 37:08兄たちはヨセフに言った。「なに、お前が我々の王になるというのか。お前が我々を支配するというのか。」兄たちは夢とその言葉のために、ヨセフをますます憎んだ。
創世記 37:09ヨセフはまた別の夢を見て、それを兄たちに話した。「わたしはまた夢を見ました。太陽と月と十一の星がわたしにひれ伏しているのです。」
創世記 37:10今度は兄たちだけでなく、父にも話した。父はヨセフを叱って言った。「一体どういうことだ、お前が見たその夢は。わたしもお母さんも兄さんたちも、お前の前に行って、地面にひれ伏すというのか。」
創世記 37:11兄たちはヨセフをねたんだが、父はこのことを心に留めた。
創世記 37:12兄たちが出かけて行き、シケムで父の羊の群れを飼っていたとき、
創世記 37:13イスラエルはヨセフに言った。「兄さんたちはシケムで羊を飼っているはずだ。お前を彼らのところへやりたいのだが。」「はい、分かりました」とヨセフが答えると、
創世記 37:14更にこう言った。「では、早速出かけて、兄さんたちが元気にやっているか、羊の群れも無事か見届けて、様子を知らせてくれないか。」父はヨセフをヘブロンの谷から送り出した。ヨセフがシケムに着き、
創世記 37:15野原をさまよっていると、一人の人に出会った。その人はヨセフに尋ねた。「何を探しているのかね。」
創世記 37:16「兄たちを探しているのです。どこで羊の群れを飼っているか教えてください。」ヨセフがこう言うと、
創世記 37:17その人は答えた。「もうここをたってしまった。ドタンへ行こう、と言っていたのを聞いたが。」ヨセフは兄たちの後を追って行き、ドタンで一行を見つけた。
創世記 37:18兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、
創世記 37:19相談した。「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。
創世記 37:20さあ、今だ。あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。後は、野獣に食われたと言えばよい。あれの夢がどうなるか、見てやろう。」
創世記 37:21ルベンはこれを聞いて、ヨセフを彼らの手から助け出そうとして、言った。「命まで取るのはよそう。」
創世記 37:22ルベンは続けて言った。「血を流してはならない。荒れ野のこの穴に投げ入れよう。手を下してはならない。」ルベンは、ヨセフを彼らの手から助け出して、父のもとへ帰したかったのである。
創世記 37:23ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが着ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、
創世記 37:24彼を捕らえて、穴に投げ込んだ。その穴は空で水はなかった。
創世記 37:25彼らはそれから、腰を下ろして食事を始めたが、ふと目を上げると、イシュマエル人の隊商がギレアドの方からやって来るのが見えた。らくだに樹脂、乳香、没薬を積んで、エジプトに下って行こうとしているところであった。
創世記 37:26ユダは兄弟たちに言った。「弟を殺して、その血を覆っても、何の得にもならない。
創世記 37:27それより、あのイシュマエル人に売ろうではないか。弟に手をかけるのはよそう。あれだって、肉親の弟だから。」兄弟たちは、これを聞き入れた。
創世記 37:28ところが、その間にミディアン人の商人たちが通りかかって、ヨセフを穴から引き上げ、銀二十枚でイシュマエル人に売ったので、彼らはヨセフをエジプトに連れて行ってしまった。
創世記 37:29ルベンが穴のところに戻ってみると、意外にも穴の中にヨセフはいなかった。ルベンは自分の衣を引き裂き、
創世記 37:30兄弟たちのところへ帰り、「あの子がいない。わたしは、このわたしは、どうしたらいいのか」と言った。
創世記 37:31兄弟たちはヨセフの着物を拾い上げ、雄山羊を殺してその血に着物を浸した。
創世記 37:32彼らはそれから、裾の長い晴れ着を父のもとへ送り届け、「これを見つけましたが、あなたの息子の着物かどうか、お調べになってください」と言わせた。
創世記 37:33父は、それを調べて言った。「あの子の着物だ。野獣に食われたのだ。ああ、ヨセフはかみ裂かれてしまったのだ。」
創世記 37:34ヤコブは自分の衣を引き裂き、粗布を腰にまとい、幾日もその子のために嘆き悲しんだ。
創世記 37:35息子や娘たちが皆やって来て、慰めようとしたが、ヤコブは慰められることを拒んだ。「ああ、わたしもあの子のところへ、嘆きながら陰府へ下って行こう。」父はこう言って、ヨセフのために泣いた。
創世記 37:36一方、メダンの人たちがエジプトへ売ったヨセフは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長であったポティファルのものとなった。
38章
創世記 38:01そのころ、ユダは兄弟たちと別れて、アドラム人のヒラという人の近くに天幕を張った。
創世記 38:02ユダはそこで、カナン人のシュアという人の娘を見初めて結婚し、彼女のところに入った。
創世記 38:03彼女は身ごもり男の子を産んだ。ユダはその子をエルと名付けた。
創世記 38:04彼女はまた身ごもり男の子を産み、その子をオナンと名付けた。
創世記 38:05彼女は更にまた男の子を産み、その子をシェラと名付けた。彼女がシェラを産んだとき、ユダはケジブにいた。
創世記 38:06ユダは長男のエルに、タマルという嫁を迎えたが、
創世記 38:07ユダの長男エルは主の意に反したので、主は彼を殺された。
創世記 38:08ユダはオナンに言った。「兄嫁のところに入り、兄弟の義務を果たし、兄のために子孫をのこしなさい。」
創世記 38:09オナンはその子孫が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないように、兄嫁のところに入る度に子種を地面に流した。
創世記 38:10彼のしたことは主の意に反することであったので、彼もまた殺された。
創世記 38:11ユダは嫁のタマルに言った。「わたしの息子のシェラが成人するまで、あなたは父上の家で、やもめのまま暮らしていなさい。」それは、シェラもまた兄たちのように死んではいけないと思ったからであった。タマルは自分の父の家に帰って暮らした。
創世記 38:12かなりの年月がたって、シュアの娘であったユダの妻が死んだ。ユダは喪に服した後、友人のアドラム人ヒラと一緒に、ティムナの羊の毛を切る者のところへ上って行った。
創世記 38:13ある人がタマルに、「あなたのしゅうとが、羊の毛を切るために、ティムナへやって来ます」と知らせたので、
創世記 38:14タマルはやもめの着物を脱ぎ、ベールをかぶって身なりを変え、ティムナへ行く途中のエナイムの入り口に座った。シェラが成人したのに、自分がその妻にしてもらえない、と分かったからである。
創世記 38:15ユダは彼女を見て、顔を隠しているので娼婦だと思った。
創世記 38:16ユダは、路傍にいる彼女に近寄って、「さあ、あなたの所に入らせてくれ」と言った。彼女が自分の嫁だとは気づかなかったからである。「わたしの所にお入りになるのなら、何をくださいますか」と彼女が言うと、
創世記 38:17ユダは、「群れの中から子山羊を一匹、送り届けよう」と答えた。しかし彼女は言った。「でも、それを送り届けてくださるまで、保証の品をください。」
創世記 38:18「どんな保証がいいのか」と言うと、彼女は答えた。「あなたのひもの付いた印章と、持っていらっしゃるその杖です。」ユダはそれを渡し、彼女の所に入った。彼女はこうして、ユダによって身ごもった。
創世記 38:19彼女はそこを立ち去り、ベールを脱いで、再びやもめの着物を着た。
創世記 38:20ユダは子山羊を友人のアドラム人の手に託して送り届け、女から保証の品を取り戻そうとしたが、その女は見つからなかった。
創世記 38:21友人が土地の人々に、「エナイムの路傍にいた神殿娼婦は、どこにいるでしょうか」と尋ねると、人々は、「ここには、神殿娼婦などいたことはありません」と答えた。
創世記 38:22友人はユダのところに戻って来て言った。「女は見つかりませんでした。それに土地の人々も、『ここには、神殿娼婦などいたことはありません』と言うのです。」
創世記 38:23ユダは言った。「では、あの品はあの女にそのままやっておこう。さもないと、我々が物笑いの種になるから。とにかく、わたしは子山羊を届けたのだが、女が見つからなかったのだから。」
創世記 38:24三か月ほどたって、「あなたの嫁タマルは姦淫をし、しかも、姦淫によって身ごもりました」とユダに告げる者があったので、ユダは言った。「あの女を引きずり出して、焼き殺してしまえ。」
創世記 38:25ところが、引きずり出されようとしたとき、タマルはしゅうとに使いをやって言った。「わたしは、この品々の持ち主によって身ごもったのです。」彼女は続けて言った。「どうか、このひもの付いた印章とこの杖とが、どなたのものか、お調べください。」
創世記 38:26ユダは調べて言った。「わたしよりも彼女の方が正しい。わたしが彼女を息子のシェラに与えなかったからだ。」ユダは、再びタマルを知ることはなかった。
創世記 38:27タマルの出産の時が来たが、胎内には双子がいた。
創世記 38:28出産の時、一人の子が手を出したので、助産婦は、「これが先に出た」と言い、真っ赤な糸を取ってその手に結んだ。
創世記 38:29ところがその子は手を引っ込めてしまい、もう一人の方が出てきたので、助産婦は言った。「なんとまあ、この子は人を出し抜いたりして。」そこで、この子はペレツ(出し抜き)と名付けられた。
創世記 38:30その後から、手に真っ赤な糸を結んだ方の子が出てきたので、この子はゼラ(真っ赤)と名付けられた。
39章
創世記 39:01ヨセフはエジプトに連れて来られた。ヨセフをエジプトへ連れて来たイシュマエル人の手から彼を買い取ったのは、ファラオの宮廷の役人で、侍従長のエジプト人ポティファルであった。
創世記 39:02主がヨセフと共におられたので、彼はうまく事を運んだ。彼はエジプト人の主人の家にいた。
創世記 39:03主が共におられ、主が彼のすることをすべてうまく計らわれるのを見た主人は、
創世記 39:04ヨセフに目をかけて身近に仕えさせ、家の管理をゆだね、財産をすべて彼の手に任せた。
創世記 39:05主人が家の管理やすべての財産をヨセフに任せてから、主はヨセフのゆえにそのエジプト人の家を祝福された。主の祝福は、家の中にも農地にも、すべての財産に及んだ。
創世記 39:06主人は全財産をヨセフの手にゆだねてしまい、自分が食べるもの以外は全く気を遣わなかった。ヨセフは顔も美しく、体つきも優れていた。
創世記 39:07これらのことの後で、主人の妻はヨセフに目を注ぎながら言った。「わたしの床に入りなさい。」
創世記 39:08しかし、ヨセフは拒んで、主人の妻に言った。「ご存じのように、御主人はわたしを側に置き、家の中のことには一切気をお遣いになりません。財産もすべてわたしの手にゆだねてくださいました。
創世記 39:09この家では、わたしの上に立つ者はいませんから、わたしの意のままにならないものもありません。ただ、あなたは別です。あなたは御主人の妻ですから。わたしは、どうしてそのように大きな悪を働いて、神に罪を犯すことができましょう。」
創世記 39:10彼女は毎日ヨセフに言い寄ったが、ヨセフは耳を貸さず、彼女の傍らに寝ることも、共にいることもしなかった。
創世記 39:11こうして、ある日、ヨセフが仕事をしようと家に入ると、家の者が一人も家の中にいなかったので、
創世記 39:12彼女はヨセフの着物をつかんで言った。「わたしの床に入りなさい。」ヨセフは着物を彼女の手に残し、逃げて外へ出た。
創世記 39:13着物を彼女の手に残したまま、ヨセフが外へ逃げたのを見ると、
創世記 39:14彼女は家の者たちを呼び寄せて言った。「見てごらん。ヘブライ人などをわたしたちの所に連れて来たから、わたしたちはいたずらをされる。彼がわたしの所に来て、わたしと寝ようとしたから、大声で叫びました。
創世記 39:15わたしが大声をあげて叫んだのを聞いて、わたしの傍らに着物を残したまま外へ逃げて行きました。」
創世記 39:16彼女は、主人が家に帰って来るまで、その着物を傍らに置いていた。
創世記 39:17そして、主人に同じことを語った。「あなたがわたしたちの所に連れて来た、あのヘブライ人の奴隷はわたしの所に来て、いたずらをしようとしたのです。
創世記 39:18わたしが大声をあげて叫んだものですから、着物をわたしの傍らに残したまま、外へ逃げて行きました。」
創世記 39:19「あなたの奴隷がわたしにこんなことをしたのです」と訴える妻の言葉を聞いて、主人は怒り、
創世記 39:20ヨセフを捕らえて、王の囚人をつなぐ監獄に入れた。ヨセフはこうして、監獄にいた。
創世記 39:21しかし、主がヨセフと共におられ、恵みを施し、監守長の目にかなうように導かれたので、
創世記 39:22監守長は監獄にいる囚人を皆、ヨセフの手にゆだね、獄中の人のすることはすべてヨセフが取りしきるようになった。
創世記 39:23監守長は、ヨセフの手にゆだねたことには、一切目を配らなくてもよかった。主がヨセフと共におられ、ヨセフがすることを主がうまく計らわれたからである。
40章
創世記 40:01これらのことの後で、エジプト王の給仕役と料理役が主君であるエジプト王に過ちを犯した。
創世記 40:02ファラオは怒って、この二人の宮廷の役人、給仕役の長と料理役の長を、
創世記 40:03侍従長の家にある牢獄、つまりヨセフがつながれている監獄に引き渡した。
創世記 40:04侍従長は彼らをヨセフに預け、身辺の世話をさせた。牢獄の中で幾日かが過ぎたが、
創世記 40:05監獄につながれていたエジプト王の給仕役と料理役は、二人とも同じ夜にそれぞれ夢を見た。その夢には、それぞれ意味が隠されていた。
創世記 40:06朝になって、ヨセフが二人のところへ行ってみると、二人ともふさぎ込んでいた。
創世記 40:07ヨセフは主人の家の牢獄に自分と一緒に入れられているファラオの宮廷の役人に尋ねた。「今日は、どうしてそんなに憂うつな顔をしているのですか。」
創世記 40:08「我々は夢を見たのだが、それを解き明かしてくれる人がいない」と二人は答えた。ヨセフは、「解き明かしは神がなさることではありませんか。どうかわたしに話してみてください」と言った。
創世記 40:09給仕役の長はヨセフに自分の見た夢を話した。「わたしが夢を見ていると、一本のぶどうの木が目の前に現れたのです。
創世記 40:10そのぶどうの木には三本のつるがありました。それがみるみるうちに芽を出したかと思うと、すぐに花が咲き、ふさふさとしたぶどうが熟しました。
創世記 40:11ファラオの杯を手にしていたわたしは、そのぶどうを取って、ファラオの杯に搾り、その杯をファラオにささげました。」
創世記 40:12ヨセフは言った。「その解き明かしはこうです。三本のつるは三日です。
創世記 40:13三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて、元の職務に復帰させてくださいます。あなたは以前、給仕役であったときのように、ファラオに杯をささげる役目をするようになります。
創世記 40:14ついては、あなたがそのように幸せになられたときには、どうかわたしのことを思い出してください。わたしのためにファラオにわたしの身の上を話し、この家から出られるように取り計らってください。
創世記 40:15わたしはヘブライ人の国から無理やり連れて来られたのです。また、ここでも、牢屋に入れられるようなことは何もしていないのです。」
創世記 40:16料理役の長は、ヨセフが巧みに解き明かすのを見て言った。「わたしも夢を見ていると、編んだ籠が三個わたしの頭の上にありました。
創世記 40:17いちばん上の籠には、料理役がファラオのために調えたいろいろな料理が入っていましたが、鳥がわたしの頭の上の籠からそれを食べているのです。」
創世記 40:18ヨセフは答えた。「その解き明かしはこうです。三個の籠は三日です。
創世記 40:19三日たてば、ファラオがあなたの頭を上げて切り離し、あなたを木にかけます。そして、鳥があなたの肉をついばみます。」
創世記 40:20三日目はファラオの誕生日であったので、ファラオは家来たちを皆、招いて、祝宴を催した。そして、家来たちの居並ぶところで例の給仕役の長の頭と料理役の長の頭を上げて調べた。
創世記 40:21ファラオは給仕役の長を給仕の職に復帰させたので、彼はファラオに杯をささげる役目をするようになったが、
創世記 40:22料理役の長は、ヨセフが解き明かしたとおり木にかけられた。
創世記 40:23ところが、給仕役の長はヨセフのことを思い出さず、忘れてしまった。
41章
創世記 41:01二年の後、ファラオは夢を見た。ナイル川のほとりに立っていると、
創世記 41:02突然、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。
創世記 41:03すると、その後から、今度は醜い、やせ細った七頭の雌牛が川から上がって来て、岸辺にいる雌牛のそばに立った。
創世記 41:04そして、醜い、やせ細った雌牛が、つややかな、よく肥えた七頭の雌牛を食い尽くした。ファラオは、そこで目が覚めた。
創世記 41:05ファラオがまた眠ると、再び夢を見た。今度は、太って、よく実った七つの穂が、一本の茎から出てきた。
創世記 41:06すると、その後から、実が入っていない、東風で干からびた七つの穂が生えてきて、
創世記 41:07実の入っていない穂が、太って、実の入った七つの穂をのみ込んでしまった。ファラオは、そこで目が覚めた。それは夢であった。
創世記 41:08朝になって、ファラオはひどく心が騒ぎ、エジプト中の魔術師と賢者をすべて呼び集めさせ、自分の見た夢を彼らに話した。しかし、ファラオに解き明かすことができる者はいなかった。
創世記 41:09そのとき、例の給仕役の長がファラオに申し出た。「わたしは、今日になって自分の過ちを思い出しました。
創世記 41:10かつてファラオが僕どもについて憤られて、侍従長の家にある牢獄にわたしと料理役の長を入れられたとき、
創世記 41:11同じ夜に、わたしたちはそれぞれ夢を見たのですが、そのどちらにも意味が隠されていました。
創世記 41:12そこには、侍従長に仕えていたヘブライ人の若者がおりまして、彼に話をしたところ、わたしたちの夢を解き明かし、それぞれ、その夢に応じて解き明かしたのです。
創世記 41:13そしてまさしく、解き明かしたとおりになって、わたしは元の職務に復帰することを許され、彼は木にかけられました。」
創世記 41:14そこで、ファラオはヨセフを呼びにやった。ヨセフは直ちに牢屋から連れ出され、散髪をし着物を着替えてから、ファラオの前に出た。
創世記 41:15ファラオはヨセフに言った。「わたしは夢を見たのだが、それを解き明かす者がいない。聞くところによれば、お前は夢の話を聞いて、解き明かすことができるそうだが。」
創世記 41:16ヨセフはファラオに答えた。「わたしではありません。神がファラオの幸いについて告げられるのです。」
創世記 41:17ファラオはヨセフに話した。「夢の中で、わたしがナイル川の岸に立っていると、
創世記 41:18突然、よく肥えて、つややかな七頭の雌牛が川から上がって来て、葦辺で草を食べ始めた。
創世記 41:19すると、その後から、今度は貧弱で、とても醜い、やせた七頭の雌牛が上がって来た。あれほどひどいのは、エジプトでは見たことがない。
創世記 41:20そして、そのやせた、醜い雌牛が、初めのよく肥えた七頭の雌牛を食い尽くしてしまった。
創世記 41:21ところが、確かに腹の中に入れたのに、腹の中に入れたことがまるで分からないほど、最初と同じように醜いままなのだ。わたしは、そこで目が覚めた。
創世記 41:22それからまた、夢の中でわたしは見たのだが、今度は、とてもよく実の入った七つの穂が一本の茎から出てきた。
創世記 41:23すると、その後から、やせ細り、実が入っておらず、東風で干からびた七つの穂が生えてきた。
創世記 41:24そして、実の入っていないその穂が、よく実った七つの穂をのみ込んでしまった。わたしは魔術師たちに話したが、その意味を告げうる者は一人もいなかった。」
創世記 41:25ヨセフはファラオに言った。「ファラオの夢は、どちらも同じ意味でございます。神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお告げになったのです。
創世記 41:26七頭のよく育った雌牛は七年のことです。七つのよく実った穂も七年のことです。どちらの夢も同じ意味でございます。
創世記 41:27その後から上がって来た七頭のやせた、醜い雌牛も七年のことです。また、やせて、東風で干からびた七つの穂も同じで、これらは七年の飢饉のことです。
創世記 41:28これは、先程ファラオに申し上げましたように、神がこれからなさろうとしていることを、ファラオにお示しになったのです。
創世記 41:29今から七年間、エジプトの国全体に大豊作が訪れます。
創世記 41:30しかし、その後に七年間、飢饉が続き、エジプトの国に豊作があったことなど、すっかり忘れられてしまうでしょう。飢饉が国を滅ぼしてしまうのです。
創世記 41:31この国に豊作があったことは、その後に続く飢饉のために全く忘れられてしまうでしょう。飢饉はそれほどひどいのです。
創世記 41:32ファラオが夢を二度も重ねて見られたのは、神がこのことを既に決定しておられ、神が間もなく実行されようとしておられるからです。
創世記 41:33このような次第ですから、ファラオは今すぐ、聡明で知恵のある人物をお見つけになって、エジプトの国を治めさせ、
創世記 41:34また、国中に監督官をお立てになり、豊作の七年の間、エジプトの国の産物の五分の一を徴収なさいますように。
創世記 41:35このようにして、これから訪れる豊年の間に食糧をできるかぎり集めさせ、町々の食糧となる穀物をファラオの管理の下に蓄え、保管させるのです。
創世記 41:36そうすれば、その食糧がエジプトの国を襲う七年の飢饉に対する国の備蓄となり、飢饉によって国が滅びることはないでしょう。」
創世記 41:37ファラオと家来たちは皆、ヨセフの言葉に感心した。
創世記 41:38ファラオは家来たちに、「このように神の霊が宿っている人はほかにあるだろうか」と言い、
創世記 41:39ヨセフの方を向いてファラオは言った。「神がそういうことをみな示されたからには、お前ほど聡明で知恵のある者は、ほかにはいないであろう。
創世記 41:40お前をわが宮廷の責任者とする。わが国民は皆、お前の命に従うであろう。ただ王位にあるということでだけ、わたしはお前の上に立つ。」
創世記 41:41ファラオはヨセフに向かって、「見よ、わたしは今、お前をエジプト全国の上に立てる」と言い、
創世記 41:42印章のついた指輪を自分の指からはずしてヨセフの指にはめ、亜麻布の衣服を着せ、金の首飾りをヨセフの首にかけた。
創世記 41:43ヨセフを王の第二の車に乗せると、人々はヨセフの前で、「アブレク(敬礼)」と叫んだ。ファラオはこうして、ヨセフをエジプト全国の上に立て、
創世記 41:44ヨセフに言った。「わたしはファラオである。お前の許しなしには、このエジプト全国で、だれも、手足を上げてはならない。」
創世記 41:45ファラオは更に、ヨセフにツァフェナト・パネアという名を与え、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトを妻として与えた。ヨセフの威光はこうして、エジプトの国にあまねく及んだ。
創世記 41:46ヨセフは、エジプトの王ファラオの前に立ったとき三十歳であった。ヨセフはファラオの前をたって、エジプト全国を巡回した。
創世記 41:47豊作の七年の間、大地は豊かな実りに満ち溢れた。
創世記 41:48ヨセフはその七年の間に、エジプトの国中の食糧をできるかぎり集め、その食糧を町々に蓄えさせた。町の周囲の畑にできた食糧を、その町の中に蓄えさせたのである。
創世記 41:49ヨセフは、海辺の砂ほども多くの穀物を蓄え、ついに量りきれなくなったので、量るのをやめた。
創世記 41:50飢饉の年がやって来る前に、ヨセフに二人の息子が生まれた。この子供を産んだのは、オンの祭司ポティ・フェラの娘アセナトである。
創世記 41:51ヨセフは長男をマナセ(忘れさせる)と名付けて言った。「神が、わたしの苦労と父の家のことをすべて忘れさせてくださった。」
創世記 41:52また、次男をエフライム(増やす)と名付けて言った。「神は、悩みの地で、わたしに子孫を増やしてくださった。」
創世記 41:53エジプトの国に七年間の大豊作が終わると、
創世記 41:54ヨセフが言ったとおり、七年の飢饉が始まった。その飢饉はすべての国々を襲ったが、エジプトには、全国どこにでも食物があった。
創世記 41:55やがて、エジプト全国にも飢饉が広がり、民がファラオに食物を叫び求めた。ファラオはすべてのエジプト人に、「ヨセフのもとに行って、ヨセフの言うとおりにせよ」と命じた。
創世記 41:56飢饉は世界各地に及んだ。ヨセフはすべての穀倉を開いてエジプト人に穀物を売ったが、エジプトの国の飢饉は激しくなっていった。
創世記 41:57また、世界各地の人々も、穀物を買いにエジプトのヨセフのもとにやって来るようになった。世界各地の飢饉も激しくなったからである。
42章
創世記 42:01ヤコブは、エジプトに穀物があると知って、息子たちに、「どうしてお前たちは顔を見合わせてばかりいるのだ」と言い、更に、
創世記 42:02「聞くところでは、エジプトには穀物があるというではないか。エジプトへ下って行って穀物を買ってきなさい。そうすれば、我々は死なずに生き延びることができるではないか」と言った。
創世記 42:03そこでヨセフの十人の兄たちは、エジプトから穀物を買うために下って行った。
創世記 42:04ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンを兄たちに同行させなかった。何か不幸なことが彼の身に起こるといけないと思ったからであった。
創世記 42:05イスラエルの息子たちは、他の人々に混じって穀物を買いに出かけた。カナン地方にも飢饉が襲っていたからである。
創世記 42:06ところで、ヨセフはエジプトの司政者として、国民に穀物を販売する監督をしていた。ヨセフの兄たちは来て、地面にひれ伏し、ヨセフを拝した。
創世記 42:07ヨセフは一目で兄たちだと気づいたが、そしらぬ振りをして厳しい口調で、「お前たちは、どこからやって来たのか」と問いかけた。彼らは答えた。「食糧を買うために、カナン地方からやって参りました。」
創世記 42:08ヨセフは兄たちだと気づいていたが、兄たちはヨセフとは気づかなかった。
創世記 42:09ヨセフは、そのとき、かつて兄たちについて見た夢を思い起こした。ヨセフは彼らに言った。「お前たちは回し者だ。この国の手薄な所を探りに来たにちがいない。」
創世記 42:10彼らは答えた。「いいえ、御主君様。僕どもは食糧を買いに来ただけでございます。
創世記 42:11わたしどもは皆、ある男の息子で、正直な人間でございます。僕どもは決して回し者などではありません。」
創世記 42:12しかしヨセフが、「いや、お前たちはこの国の手薄な所を探りに来たにちがいない」と言うと、
創世記 42:13彼らは答えた。「僕どもは、本当に十二人兄弟で、カナン地方に住むある男の息子たちでございます。末の弟は、今、父のもとにおりますが、もう一人は失いました。」
創世記 42:14すると、ヨセフは言った。「お前たちは回し者だとわたしが言ったのは、そのことだ。
創世記 42:15その点について、お前たちを試すことにする。ファラオの命にかけて言う。いちばん末の弟を、ここに来させよ。それまでは、お前たちをここから出すわけにはいかぬ。
創世記 42:16お前たちのうち、だれか一人を行かせて、弟を連れて来い。それまでは、お前たちを監禁し、お前たちの言うことが本当かどうか試す。もしそのとおりでなかったら、ファラオの命にかけて言う。お前たちは間違いなく回し者だ。」
創世記 42:17ヨセフは、こうして彼らを三日間、牢獄に監禁しておいた。
創世記 42:18三日目になって、ヨセフは彼らに言った。「こうすれば、お前たちの命を助けてやろう。わたしは神を畏れる者だ。
創世記 42:19お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、
創世記 42:20末の弟をここへ連れて来い。そうして、お前たちの言い分が確かめられたら、殺されはしない。」彼らは同意して、
創世記 42:21互いに言った。「ああ、我々は弟のことで罰を受けているのだ。弟が我々に助けを求めたとき、あれほどの苦しみを見ながら、耳を貸そうともしなかった。それで、この苦しみが我々にふりかかった。」
創世記 42:22すると、ルベンが答えた。「あのときわたしは、『あの子に悪いことをするな』と言ったではないか。お前たちは耳を貸そうともしなかった。だから、あの子の血の報いを受けるのだ。」
創世記 42:23彼らはヨセフが聞いているのを知らなかった。ヨセフと兄弟たちの間に、通訳がいたからである。
創世記 42:24ヨセフは彼らから遠ざかって泣いた。それからまた戻って来て、話をしたうえでシメオンを選び出し、彼らの見ている前で縛り上げた。
創世記 42:25ヨセフは人々に命じて、兄たちの袋に穀物を詰め、支払った銀をめいめいの袋に返し、道中の食糧を与えるように指示し、そのとおり実行された。
創世記 42:26彼らは穀物をろばに積んでそこを立ち去った。
創世記 42:27途中の宿で、一人がろばに餌をやろうとして、自分の袋を開けてみると、袋の口のところに自分の銀があるのを見つけ、
創世記 42:28ほかの兄弟たちに言った。「戻されているぞ、わたしの銀が。ほら、わたしの袋の中に。」みんなの者は驚き、互いに震えながら言った。「これは一体、どういうことだ。神が我々になさったことは。」
創世記 42:29一行はカナン地方にいる父ヤコブのところへ帰って来て、自分たちの身に起こったことをすべて報告した。
創世記 42:30「あの国の主君である人が、我々を厳しい口調で問い詰めて、この国を探りに来た回し者にちがいないと言うのです。
創世記 42:31もちろん、我々は正直な人間で、決して回し者などではないと答えました。
創世記 42:32我々が十二人兄弟で、一人の父の息子であり、一人は失いましたが、末の弟は今、カナンの地方に住む父のもとにいますと言ったところ、
創世記 42:33あの国の主君である人が言いました。『では、お前たちが本当に正直な人間かどうかを、こうして確かめることにする。お前たち兄弟のうち、一人だけここに残し、飢えているお前たちの家族のために、穀物を持ち帰るがいい。
創世記 42:34ただし、末の弟を必ずここへ連れて来るのだ。そうすれば、お前たちが回し者ではなく、正直な人間であることが分かるから、お前たちに兄弟を返し、自由にこの国に出入りできるようにしてやろう。』」
創世記 42:35それから、彼らが袋を開けてみると、めいめいの袋の中にもそれぞれ自分の銀の包みが入っていた。彼らも父も、銀の包みを見て恐ろしくなった。
創世記 42:36父ヤコブは息子たちに言った。「お前たちは、わたしから次々と子供を奪ってしまった。ヨセフを失い、シメオンも失った。その上ベニヤミンまでも取り上げるのか。みんなわたしを苦しめることばかりだ。」
創世記 42:37ルベンは父に言った。「もしも、お父さんのところにベニヤミンを連れ帰らないようなことがあれば、わたしの二人の息子を殺してもかまいません。どうか、彼をわたしに任せてください。わたしが、必ずお父さんのところに連れ帰りますから。」
創世記 42:38しかし、ヤコブは言った。「いや、この子だけは、お前たちと一緒に行かせるわけにはいかぬ。この子の兄は死んでしまい、残っているのは、この子だけではないか。お前たちの旅の途中で、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちは、この白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのだ。」
43章
創世記 43:01この地方の飢饉はひどくなる一方であった。
創世記 43:02エジプトから持ち帰った穀物を食べ尽くすと、父は息子たちに言った。「もう一度行って、我々の食糧を少し買って来なさい。」
創世記 43:03しかし、ユダは答えた。「あの人は、『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、厳しく我々に言い渡したのです。
創世記 43:04もし弟を一緒に行かせてくださるなら、我々は下って行って、あなたのために食糧を買って参ります。
創世記 43:05しかし、一緒に行かせてくださらないのなら、行くわけにはいきません。『弟が一緒でないかぎり、わたしの顔を見ることは許さぬ』と、あの人が我々に言ったのですから。」
創世記 43:06「なぜお前たちは、その人にもう一人弟がいるなどと言って、わたしを苦しめるようなことをしたのか」とイスラエルが言うと、
創世記 43:07彼らは答えた。「あの人が、我々のことや家族のことについて、『お前たちの父親は、まだ生きているのか』とか、『お前たちには、まだほかに弟がいるのか』などと、しきりに尋ねるものですから、尋ねられるままに答えただけです。まさか、『弟を連れて来い』などと言われようとは思いも寄りませんでしたから。」
創世記 43:08ユダは、父イスラエルに言った。「あの子をぜひわたしと一緒に行かせてください。それなら、すぐにでも行って参ります。そうすれば、我々も、あなたも、子供たちも死なずに生き延びることができます。
創世記 43:09あの子のことはわたしが保障します。その責任をわたしに負わせてください。もしも、あの子をお父さんのもとに連れ帰らず、無事な姿をお目にかけられないようなことにでもなれば、わたしがあなたに対して生涯その罪を負い続けます。
創世記 43:10こんなにためらっていなければ、今ごろはもう二度も行って来たはずです。」
創世記 43:11すると、父イスラエルは息子たちに言った。「どうしてもそうしなければならないのなら、こうしなさい。この土地の名産の品を袋に入れて、その人への贈り物として持って行くのだ。乳香と蜜を少し、樹脂と没薬、ピスタチオやアーモンドの実。
創世記 43:12それから、銀を二倍用意して行きなさい。袋の口に戻されていた銀も持って行ってお返しするのだ。たぶん何かの間違いだったのだろうから。
創世記 43:13では、弟を連れて、早速その人のところへ戻りなさい。
創世記 43:14どうか、全能の神がその人の前でお前たちに憐れみを施し、もう一人の兄弟と、このベニヤミンを返してくださいますように。このわたしがどうしても子供を失わねばならないのなら、失ってもよい。」
創世記 43:15息子たちは贈り物と二倍の銀を用意すると、ベニヤミンを連れて、早速エジプトへ下って行った。さて、一行がヨセフの前に進み出ると、
創世記 43:16ヨセフはベニヤミンが一緒なのを見て、自分の家を任せている執事に言った。「この人たちを家へお連れしなさい。それから、家畜を屠って料理を調えなさい。昼の食事をこの人たちと一緒にするから。」
創世記 43:17執事はヨセフに言われたとおりにし、一同をヨセフの屋敷へ連れて行った。
創世記 43:18一同はヨセフの屋敷へ連れて来られたので、恐ろしくなって、「これはきっと、前に来たとき我々の袋に戻されていたあの銀のせいだ。それで、ここに連れ込まれようとしているのだ。今に、ろばもろとも捕らえられ、ひどい目に遭い、奴隷にされてしまうにちがいない」と思った。
創世記 43:19彼らは屋敷の入り口のところでヨセフの執事の前に進み出て、話しかけて、
創世記 43:20言った。「ああ、御主人様。実は、わたしどもは前に一度、食糧を買うためにここへ来たことがございます。
創世記 43:21ところが、帰りに宿で袋を開けてみると、一人一人の袋の口のところにそれぞれ自分の銀が入っておりました。しかも、銀の重さは元のままでした。それで、それをお返ししなければ、と持って参りました。
創世記 43:22もちろん、食糧を買うための銀は、別に用意してきております。一体誰がわたしどもの袋に銀を入れたのか分かりません。」
創世記 43:23執事は、「御安心なさい。心配することはありません。きっと、あなたたちの神、あなたたちの父の神が、その宝を袋に入れてくださったのでしょう。あなたたちの銀は、このわたしが確かに受け取ったのですから」と答え、シメオンを兄弟たちのところへ連れて来た。
創世記 43:24執事は一同をヨセフの屋敷に入れ、水を与えて足を洗わせ、ろばにも餌を与えた。
創世記 43:25彼らは贈り物を調えて、昼にヨセフが帰宅するのを待った。一緒に食事をすることになっていると聞いたからである。
創世記 43:26ヨセフが帰宅すると、一同は屋敷に持って来た贈り物を差し出して、地にひれ伏してヨセフを拝した。
創世記 43:27ヨセフは一同の安否を尋ねた後、言った。「前に話していた、年をとった父上は元気か。まだ生きておられるか。」
創世記 43:28「あなたさまの僕である父は元気で、まだ生きております」と彼らは答え、ひざまずいて、ヨセフを拝した。
創世記 43:29ヨセフは同じ母から生まれた弟ベニヤミンをじっと見つめて、「前に話していた末の弟はこれか」と尋ね、「わたしの子よ。神の恵みがお前にあるように」と言うと、
創世記 43:30ヨセフは急いで席を外した。弟懐かしさに、胸が熱くなり、涙がこぼれそうになったからである。ヨセフは奥の部屋に入ると泣いた。
創世記 43:31やがて、顔を洗って出て来ると、ヨセフは平静を装い、「さあ、食事を出しなさい」と言いつけた。
創世記 43:32食事は、ヨセフにはヨセフの、兄弟たちには兄弟たちの、相伴するエジプト人にはエジプト人のものと、別々に用意された。当時、エジプト人は、ヘブライ人と共に食事をすることはできなかったからである。それはエジプト人のいとうことであった。
創世記 43:33兄弟たちは、いちばん上の兄から末の弟まで、ヨセフに向かって年齢順に座らされたので、驚いて互いに顔を見合わせた。
創世記 43:34そして、料理がヨセフの前からみんなのところへ配られたが、ベニヤミンの分はほかのだれの分より五倍も多かった。一同はぶどう酒を飲み、ヨセフと共に酒宴を楽しんだ。
44章
創世記 44:01ヨセフは執事に命じた。「あの人たちの袋を、運べるかぎり多くの食糧でいっぱいにし、めいめいの銀をそれぞれの袋の口のところへ入れておけ。
創世記 44:02それから、わたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の者の袋の口に、穀物の代金の銀と一緒に入れておきなさい。」執事はヨセフが命じたとおりにした。
創世記 44:03次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。
創世記 44:04ところが、町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは執事に命じた。「すぐに、あの人たちを追いかけ、追いついたら彼らに言いなさい。『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。
創世記 44:05あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。よくもこんな悪いことができたものだ。』」
創世記 44:06執事は彼らに追いつくと、そのとおりに言った。
創世記 44:07すると、彼らは言った。「御主人様、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか。僕どもがそんなことをするなどとは、とんでもないことです。
創世記 44:08袋の口で見つけた銀でさえ、わたしどもはカナンの地から持ち帰って、御主人様にお返ししたではありませんか。そのわたしどもがどうして、あなたの御主君のお屋敷から銀や金を盗んだりするでしょうか。
創世記 44:09僕どもの中のだれからでも杯が見つかれば、その者は死罪に、ほかのわたしどもも皆、御主人様の奴隷になります。」
創世記 44:10すると、執事は言った。「今度もお前たちが言うとおりならよいが。だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。ほかの者には罪は無い。」
創世記 44:11彼らは急いで自分の袋を地面に降ろし、めいめいで袋を開けた。
創世記 44:12執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。
創世記 44:13彼らは衣を引き裂き、めいめい自分のろばに荷を積むと、町へ引き返した。
創世記 44:14ユダと兄弟たちがヨセフの屋敷に入って行くと、ヨセフはまだそこにいた。一同は彼の前で地にひれ伏した。
創世記 44:15「お前たちのしたこの仕業は何事か。わたしのような者は占い当てることを知らないのか」とヨセフが言うと、
創世記 44:16ユダが答えた。「御主君に何と申し開きできましょう。今更どう言えば、わたしどもの身の証しを立てることができましょう。神が僕どもの罪を暴かれたのです。この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」
創世記 44:17ヨセフは言った。「そんなことは全く考えていない。ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」
創世記 44:18ユダはヨセフの前に進み出て言った。「ああ、御主君様。何とぞお怒りにならず、僕の申し上げますことに耳を傾けてください。あなたはファラオに等しいお方でいらっしゃいますから。
創世記 44:19御主君は僕どもに向かって、『父や兄弟がいるのか』とお尋ねになりましたが、
創世記 44:20そのとき、御主君に、『年とった父と、それに父の年寄り子である末の弟がおります。その兄は亡くなり、同じ母の子で残っているのはその子だけですから、父は彼をかわいがっております』と申し上げました。
創世記 44:21すると、あなたさまは、『その子をここへ連れて来い。自分の目で確かめることにする』と僕どもにお命じになりました。
創世記 44:22わたしどもは、御主君に、『あの子は、父親のもとから離れるわけにはまいりません。あの子が父親のもとを離れれば、父は死んでしまいます』と申しましたが、
創世記 44:23あなたさまは、『その末の弟が一緒に来なければ、再びわたしの顔を見ることは許さぬ』と僕どもにおっしゃいました。
創世記 44:24わたしどもは、あなたさまの僕である父のところへ帰り、御主君のお言葉を伝えました。
創世記 44:25そして父が、『もう一度行って、我々の食糧を少し買って来い』と申しました折にも、
創世記 44:26『行くことはできません。もし、末の弟が一緒なら、行って参ります。末の弟が一緒でないかぎり、あの方の顔を見ることはできないのです』と答えました。
創世記 44:27すると、あなたさまの僕である父は、『お前たちも知っているように、わたしの妻は二人の息子を産んだ。
創世記 44:28ところが、そのうちの一人はわたしのところから出て行ったきりだ。きっとかみ裂かれてしまったと思うが、それ以来、会っていない。
創世記 44:29それなのに、お前たちはこの子までも、わたしから取り上げようとする。もしも、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちはこの白髪の父を、苦しめて陰府に下らせることになるのだ』と申しました。
創世記 44:30今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ帰れば、父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、
創世記 44:31この子がいないことを知って、父は死んでしまうでしょう。そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのです。
創世記 44:32実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れて帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。
創世記 44:33何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。
創世記 44:34この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」
創世記 45:01ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることができなくなり、「みんな、ここから出て行ってくれ」と叫んだ。だれもそばにいなくなってから、ヨセフは兄弟たちに自分の身を明かした。
45章
創世記 45:02ヨセフは、声をあげて泣いたので、エジプト人はそれを聞き、ファラオの宮廷にも伝わった。
創世記 45:03ヨセフは、兄弟たちに言った。「わたしはヨセフです。お父さんはまだ生きておられますか。」兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、答えることができなかった。
創世記 45:04ヨセフは兄弟たちに言った。「どうか、もっと近寄ってください。」兄弟たちがそばへ近づくと、ヨセフはまた言った。「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。
創世記 45:05しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。
創世記 45:06この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。
創世記 45:07神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。
創世記 45:08わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神がわたしをファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。
創世記 45:09急いで父上のもとへ帰って、伝えてください。『息子のヨセフがこう言っています。神が、わたしを全エジプトの主としてくださいました。ためらわずに、わたしのところへおいでください。
創世記 45:10そして、ゴシェンの地域に住んでください。そうすればあなたも、息子も孫も、羊や牛の群れも、そのほかすべてのものも、わたしの近くで暮らすことができます。
創世記 45:11そこでのお世話は、わたしがお引き受けいたします。まだ五年間は飢饉が続くのですから、父上も家族も、そのほかすべてのものも、困ることのないようになさらなければいけません。』
創世記 45:12さあ、お兄さんたちも、弟のベニヤミンも、自分の目で見てください。ほかならぬわたしがあなたたちに言っているのです。
創世記 45:13エジプトでわたしが受けているすべての栄誉と、あなたたちが見たすべてのことを父上に話してください。そして、急いで父上をここへ連れて来てください。」
創世記 45:14ヨセフは、弟ベニヤミンの首を抱いて泣いた。ベニヤミンもヨセフの首を抱いて泣いた。
創世記 45:15ヨセフは兄弟たち皆に口づけし、彼らを抱いて泣いた。その後、兄弟たちはヨセフと語り合った。
創世記 45:16ヨセフの兄弟たちがやって来たという知らせがファラオの宮廷に伝わると、ファラオも家来たちも喜んだ。
創世記 45:17ファラオはヨセフに言った。「兄弟たちに、こうするように言いなさい。『家畜に荷を積んでカナンの地に行き、
創世記 45:18父上と家族をここへ連れて来なさい。わたしは、エジプトの国の最良のものを与えよう。あなたたちはこの国の最上の産物を食べるがよい。』
創世記 45:19また、こうするよう命じなさい。『エジプトの国から、あなたたちの子供や妻たちを乗せる馬車を引いて行き、父上もそれに乗せて来るがよい。
創世記 45:20家財道具などには未練を残さないように。エジプトの国中で最良のものが、あなたたちのものになるのだから。』」
創世記 45:21イスラエルの息子たちはそのとおりにした。ヨセフは、ファラオの命令に従って、彼らに馬車を与え、また道中の食糧を与えた。
創世記 45:22ヨセフは更に、全員にそれぞれ晴れ着を与えたが、特にベニヤミンには銀三百枚と晴れ着五枚を与えた。
創世記 45:23父にも、エジプトの最良のものを積んだろば十頭と、穀物やパン、それに父の道中に必要な食糧を積んだ雌ろば十頭を贈った。
創世記 45:24いよいよ兄弟たちを送り出すとき、出発にあたってヨセフは、「途中で、争わないでください」と言った。
創世記 45:25兄弟たちはエジプトからカナン地方へ上って行き、父ヤコブのもとへ帰ると、
創世記 45:26直ちに報告した。「ヨセフがまだ生きています。しかも、エジプト全国を治める者になっています。」父は気が遠くなった。彼らの言うことが信じられなかったのである。
創世記 45:27彼らはヨセフが話したとおりのことを、残らず父に語り、ヨセフが父を乗せるために遣わした馬車を見せた。父ヤコブは元気を取り戻した。
創世記 45:28イスラエルは言った。「よかった。息子ヨセフがまだ生きていたとは。わたしは行こう。死ぬ前に、どうしても会いたい。」
46章
創世記 46:01イスラエルは、一家を挙げて旅立った。そして、ベエル・シェバに着くと、父イサクの神にいけにえをささげた。
創世記 46:02その夜、幻の中で神がイスラエルに、「ヤコブ、ヤコブ」と呼びかけた。彼が、「はい」と答えると、
創世記 46:03神は言われた。「わたしは神、あなたの父の神である。エジプトへ下ることを恐れてはならない。わたしはあなたをそこで大いなる国民にする。
創世記 46:04わたしがあなたと共にエジプトへ下り、わたしがあなたを必ず連れ戻す。ヨセフがあなたのまぶたを閉じてくれるであろう。」
創世記 46:05ヤコブはベエル・シェバを出発した。イスラエルの息子たちは、ファラオが遣わした馬車に父ヤコブと子供や妻たちを乗せた。
創世記 46:06ヤコブとその子孫は皆、カナン地方で得た家畜や財産を携えてエジプトへ向かった。
創世記 46:07こうしてヤコブは、息子や孫、娘や孫娘など、子孫を皆連れてエジプトへ行った。
創世記 46:08エジプトへ行ったイスラエルの人々、すなわちヤコブとその子らの名前は次のとおりである。ヤコブの長男ルベン。
創世記 46:09ルベンの息子のハノク、パル、ヘツロン、カルミ。
創世記 46:10シメオンの息子のエムエル、ヤミン、オハド、ヤキン、ツォハル、およびカナンの女による息子シャウル。
創世記 46:11レビの息子のゲルション、ケハト、メラリ。
創世記 46:12ユダの息子のエル、オナン、シェラ、ペレツ、ゼラ。ただし、エルとオナンはカナンの土地で死んだ。ペレツの息子のヘツロン、ハムル。
創世記 46:13イサカルの息子のトラ、プワ、ヨブ、シムロン。
創世記 46:14ゼブルンの息子のセレド、エロン、ヤフレエル。
創世記 46:15これらは、レアがパダン・アラムでヤコブとの間に産んだ子らである。ヤコブの娘ディナも含め、男女の総数は三十三名である。
創世記 46:16ガドの息子のツィフヨン、ハギ、シュニ、エツボン、エリ、アロディ、アルエリ。
創世記 46:17アシェルの息子のイムナ、イシュワ、イシュビ、ベリア、および妹セラ。ベリアの息子はヘベル、マルキエル。
創世記 46:18これらは、ラバンが娘レアに与えたジルパの子らである。ジルパがヤコブとの間に産んだのは十六名である。
創世記 46:19ヤコブの妻ラケルの息子のヨセフ、ベニヤミン。
創世記 46:20ヨセフには、エジプトの国で息子が生まれた。それは、オンの祭司のポティ・フェラの娘アセナトが彼との間に産んだマナセとエフライムである。
創世記 46:21ベニヤミンの息子のベラ、ベケル、アシュベル、ゲラ、ナアマン、エヒ、ロシュ、ムピム、フピム、アルド。
創世記 46:22これらは、ヤコブとの間に生まれたラケルの子らで、その総数は十四名である。
創世記 46:23ダンの息子のフシム。
創世記 46:24ナフタリの息子のヤフツェエル、グニ、イエツェル、シレム。
創世記 46:25これらは、ラバンが娘ラケルに与えたビルハの子らである。ビルハがヤコブとの間に産んだ者の総数は七名である。
創世記 46:26ヤコブの腰から出た者で、ヤコブと共にエジプトへ行った者は、ヤコブの息子の妻たちを除けば、総数六十六名である。
創世記 46:27エジプトで生まれたヨセフの息子は二人である。従って、エジプトへ行ったヤコブの家族は総数七十名であった。
創世記 46:28ヤコブは、ヨセフをゴシェンに連れて来るために、ユダを一足先にヨセフのところへ遣わした。そして一行はゴシェンの地に到着した。
創世記 46:29ヨセフは車を用意させると、父イスラエルに会いにゴシェンへやって来た。ヨセフは父を見るやいなや、父の首に抱きつき、その首にすがったまま、しばらく泣き続けた。
創世記 46:30イスラエルはヨセフに言った。「わたしはもう死んでもよい。お前がまだ生きていて、お前の顔を見ることができたのだから。」
創世記 46:31ヨセフは、兄弟や父の家族の者たちに言った。「わたしはファラオのところへ報告のため参上し、『カナン地方にいたわたしの兄弟と父の家族の者たちがわたしのところに参りました。
創世記 46:32この人たちは羊飼いで、家畜の群れを飼っていたのですが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えてやって来ました』と申します。
創世記 46:33ですから、ファラオがあなたたちをお召しになって、『仕事は何か』と言われたら、
創世記 46:34『あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、幼い時から今日まで家畜の群れを飼う者でございます』と答えてください。そうすれば、あなたたちはゴシェンの地域に住むことができるでしょう。」羊飼いはすべて、エジプト人のいとうものであったのである。
47章
創世記 47:01ヨセフはファラオのところへ行き、「わたしの父と兄弟たちが、羊や牛をはじめ、すべての財産を携えて、カナン地方からやって来て、今、ゴシェンの地におります」と報告した。
創世記 47:02そのときヨセフは、兄弟の中から五人を選んで、ファラオの前に連れて行った。
創世記 47:03ファラオはヨセフの兄弟たちに言った。「お前たちの仕事は何か。」兄弟たちが、「あなたの僕であるわたしどもは、先祖代々、羊飼いでございます」と答え、
創世記 47:04更に続けてファラオに言った。「わたしどもはこの国に寄留させていただきたいと思って、参りました。カナン地方は飢饉がひどく、僕たちの羊を飼うための牧草がありません。僕たちをゴシェンの地に住まわせてください。」
創世記 47:05ファラオはヨセフに向かって言った。「父上と兄弟たちが、お前のところにやって来たのだ。
創世記 47:06エジプトの国のことはお前に任せてあるのだから、最も良い土地に父上と兄弟たちを住まわせるがよい。ゴシェンの地に住まわせるのもよかろう。もし、一族の中に有能な者がいるなら、わたしの家畜の監督をさせるがよい。」
創世記 47:07それから、ヨセフは父ヤコブを連れて来て、ファラオの前に立たせた。ヤコブはファラオに祝福の言葉を述べた。
創世記 47:08ファラオが、「あなたは何歳におなりですか」とヤコブに語りかけると、
創世記 47:09ヤコブはファラオに答えた。「わたしの旅路の年月は百三十年です。わたしの生涯の年月は短く、苦しみ多く、わたしの先祖たちの生涯や旅路の年月には及びません。」
創世記 47:10ヤコブは、別れの挨拶をして、ファラオの前から退出した。
創世記 47:11ヨセフはファラオが命じたように、父と兄弟たちの住まいを定め、エジプトの国に所有地を与えた。そこは、ラメセス地方の最も良い土地であった。
創世記 47:12ヨセフはまた、父と兄弟たちと父の家族の者すべてを養い、扶養すべき者の数に従って食糧を与えた。
創世記 47:13飢饉が極めて激しく、世界中に食糧がなくなった。エジプトの国でも、カナン地方でも、人々は飢饉のために苦しみあえいだ。
創世記 47:14ヨセフは、エジプトの国とカナン地方の人々が穀物の代金として支払った銀をすべて集め、それをファラオの宮廷に納めた。
創世記 47:15エジプトの国にもカナン地方にも、銀が尽き果てると、エジプト人は皆、ヨセフのところにやって来て、「食べる物をください。あなたさまは、わたしどもを見殺しになさるおつもりですか。銀はなくなってしまいました」と言った。
創世記 47:16ヨセフは答えた。「家畜を連れて来なさい。もし銀がなくなったのなら、家畜と引き換えに与えよう。」
創世記 47:17人々が家畜をヨセフのところに連れて来ると、ヨセフは、馬や、羊や牛の群れや、ろばと引き換えに食糧を与えた。ヨセフはこうして、その年、すべての家畜と引き換えに人々に食糧を分け与えた。
創世記 47:18その年も終わり、次の年になると、人々はまたヨセフのところに来て、言った。「御主君には、何もかも隠さずに申し上げます。銀はすっかりなくなり、家畜の群れも御主君のものとなって、御覧のように残っているのは、わたしどもの体と農地だけです。
創世記 47:19どうしてあなたさまの前で、わたしどもと農地が滅んでしまってよいでしょうか。食糧と引き換えに、わたしどもと土地を買い上げてください。わたしどもは農地とともに、ファラオの奴隷になります。種をお与えください。そうすれば、わたしどもは死なずに生きることができ、農地も荒れ果てないでしょう。」
創世記 47:20ヨセフは、エジプト中のすべての農地をファラオのために買い上げた。飢饉が激しくなったので、エジプト人は皆自分の畑を売ったからである。土地はこうして、ファラオのものとなった。
創世記 47:21また民については、エジプト領の端から端まで、ヨセフが彼らを奴隷にした。
創世記 47:22ただし、祭司の農地だけは買い上げなかった。祭司にはファラオからの給与があって、ファラオが与える給与で生活していたので、農地を売らなかったからである。
創世記 47:23ヨセフは民に言った。「よいか、お前たちは今日、農地とともにファラオに買い取られたのだ。さあ、ここに種があるから、畑に蒔きなさい。
創世記 47:24収穫の時には、五分の一をファラオに納め、五分の四はお前たちのものとするがよい。それを畑に蒔く種にしたり、お前たちや家族の者の食糧とし、子供たちの食糧としなさい。」
創世記 47:25彼らは言った。「あなたさまはわたしどもの命の恩人です。御主君の御好意によって、わたしどもはファラオの奴隷にさせていただきます。」
創世記 47:26ヨセフはこのように、収穫の五分の一をファラオに納めることを、エジプトの農業の定めとした。それは今日まで続いている。ただし、祭司の農地だけはファラオのものにならなかった。
創世記 47:27イスラエルは、エジプトの国、ゴシェンの地域に住み、そこに土地を得て、子を産み、大いに数を増した。
創世記 47:28ヤコブは、エジプトの国で十七年生きた。ヤコブの生涯は百四十七年であった。
創世記 47:29イスラエルは死ぬ日が近づいたとき、息子ヨセフを呼び寄せて言った。「もし、お前がわたしの願いを聞いてくれるなら、お前の手をわたしの腿の間に入れ、わたしのために慈しみとまことをもって実行すると、誓ってほしい。どうか、わたしをこのエジプトには葬らないでくれ。
創世記 47:30わたしが先祖たちと共に眠りについたなら、わたしをエジプトから運び出して、先祖たちの墓に葬ってほしい。」ヨセフが、「必ず、おっしゃるとおりにいたします」と答えると、
創世記 47:31「では、誓ってくれ」と言ったので、ヨセフは誓った。イスラエルは、寝台の枕もとで感謝を表した。
48章
創世記 48:01これらのことの後で、ヨセフに、「お父上が御病気です」との知らせが入ったので、ヨセフは二人の息子マナセとエフライムを連れて行った。
創世記 48:02ある人がヤコブに、「御子息のヨセフさまが、ただいまお見えになりました」と知らせると、イスラエルは力を奮い起こして、寝台の上に座った。
創世記 48:03ヤコブはヨセフに言った。「全能の神がカナン地方のルズでわたしに現れて、わたしを祝福してくださったとき、
創世記 48:04こう言われた。『あなたの子孫を繁栄させ、数を増やしあなたを諸国民の群れとしよ。この土地をあなたに続く子孫に永遠の所有地として与えよう。』
創世記 48:05今、わたしがエジプトのお前のところに来る前に、エジプトの国で生まれたお前の二人の息子をわたしの子供にしたい。エフライムとマナセは、ルベンやシメオンと同じように、わたしの子となるが、
創世記 48:06その後に生まれる者はお前のものとしてよい。しかし、彼らの嗣業の土地は兄たちの名で呼ばれるであろう。
創世記 48:07わたしはパダンから帰る途中、ラケルに死なれてしまった。あれはカナン地方で、エフラトまで行くには、まだかなりの道のりがある途中でのことだった。わたしはラケルを、エフラト、つまり今のベツレヘムへ向かう道のほとりに葬った。」
創世記 48:08イスラエルは、ヨセフの息子たちを見ながら、「これは誰か」と尋ねた。
創世記 48:09ヨセフが父に、「神が、ここで授けてくださったわたしの息子です」と答えると、父は、「ここへ連れて来なさい。彼らを祝福しよう」と言った。
創世記 48:10イスラエルの目は老齢のためかすんでよく見えなかったので、ヨセフが二人の息子を父のもとに近寄らせると、父は彼らに口づけをして抱き締めた。
創世記 48:11イスラエルはヨセフに言った。「お前の顔さえ見ることができようとは思わなかったのに、なんと、神はお前の子供たちをも見させてくださった。」
創世記 48:12ヨセフは彼らを父の膝から離し、地にひれ伏して拝した。
創世記 48:13ヨセフは二人の息子のうち、エフライムを自分の右手でイスラエルの左手に向かわせ、マナセを自分の左手でイスラエルの右手に向かわせ、二人を近寄らせた。
創世記 48:14イスラエルは右手を伸ばして、弟であるエフライムの頭の上に置き、左手をマナセの頭の上に置いた。つまり、マナセが長男であるのに、彼は両手を交差して置いたのである。
創世記 48:15そして、ヨセフを祝福して言った。「わたしの先祖アブラハムとイサクがその御前に歩んだ神よ。わたしの生涯を今日まで導かれた牧者なる神よ。
創世記 48:16わたしをあらゆる苦しみから贖われた御使いよ。どうか、この子供たちの上に祝福をお与えください。どうか、わたしの名とわたしの先祖アブラハム、イサクの名が彼らによって覚えられますように。どうか、彼らがこの地上に数多く増え続けますように。」
創世記 48:17ヨセフは、父が右手をエフライムの頭の上に置いているのを見て、不満に思い、父の手を取ってエフライムの頭からマナセの頭へ移そうとした。
創世記 48:18ヨセフは父に言った。「父上、そうではありません。これが長男ですから、右手をこれの頭の上に置いてください。」
創世記 48:19ところが、父はそれを拒んで言った。「いや、分かっている。わたしの子よ、わたしには分かっている。この子も一つの民となり、大きくなるであろう。しかし、弟の方が彼よりも大きくなり、その子孫は国々に満ちるものとなる。」
創世記 48:20その日、父は彼らを祝福して言った。「あなたによってイスラエルは人を祝福して言うであろう。『どうか、神があなたをエフライムとマナセのようにしてくださるように。』」彼はこのように、エフライムをマナセの上に立てたのである。
創世記 48:21イスラエルはヨセフに言った。「間もなく、わたしは死ぬ。だが、神がお前たちと共にいてくださり、きっとお前たちを先祖の国に導き帰らせてくださる。
創世記 48:22わたしは、お前に兄弟たちよりも多く、わたしが剣と弓をもってアモリ人の手から取った一つの分け前(シェケム)を与えることにする。」
49章
創世記 49:01ヤコブは息子たちを呼び寄せて言った。「集まりなさい。わたしは後の日にお前たちに起こることを語っておきたい。
創世記 49:02ヤコブの息子たちよ、集まって耳を傾けよ。お前たちの父イスラエルに耳を傾けよ。
創世記 49:03ルベンよ、お前はわたしの長子わたしの勢い、命の力の初穂。気位が高く、力も強い。
創世記 49:04お前は水のように奔放で長子の誉れを失う。お前は父の寝台に上った。あのとき、わたしの寝台に上りそれを汚した。
創世記 49:05シメオンとレビは似た兄弟。彼らの剣は暴力の道具。
創世記 49:06わたしの魂よ、彼らの謀議に加わるな。わたしの心よ、彼らの仲間に連なるな。彼らは怒りのままに人を殺し思うがままに雄牛の足の筋を切った。
創世記 49:07呪われよ、彼らの怒りは激しく憤りは甚だしいゆえに。わたしは彼らをヤコブの間に分けイスラエルの間に散らす。
創世記 49:08ユダよ、あなたは兄弟たちにたたえられる。あなたの手は敵の首を押さえ父の子たちはあなたを伏し拝む。
創世記 49:09ユダは獅子の子。わたしの子よ、あなたは獲物を取って上って来る。彼は雄獅子のようにうずくまり雌獅子のように身を伏せる。誰がこれを起こすことができようか。
創世記 49:10王笏はユダから離れず統治の杖は足の間から離れない。ついにシロが来て、諸国の民は彼に従う。
創世記 49:11彼はろばをぶどうの木に雌ろばの子を良いぶどうの木につなぐ。彼は自分の衣をぶどう酒で着物をぶどうの汁で洗う。
創世記 49:12彼の目はぶどう酒によって輝き歯は乳によって白くなる。
創世記 49:13ゼブルンは海辺に住む。そこは舟の出入りする港となりその境はシドンに及ぶ。
創世記 49:14イサカルは骨太のろば二つの革袋の間に身を伏せる。
創世記 49:15彼にはその土地が快く好ましい休息の場となった。彼はそこで背をかがめて荷を担い苦役の奴隷に身を落とす。
創世記 49:16ダンは自分の民を裁くイスラエルのほかの部族のように。
創世記 49:17ダンは、道端の蛇小道のほとりに潜む蝮。馬のかかとをかむと乗り手はあおむけに落ちる。
創世記 49:18主よ、わたしはあなたの救いを待ち望む。
創世記 49:19ガドは略奪者に襲われる。しかし彼は、彼らのかかとを襲う。
創世記 49:20アシェルには豊かな食物があり
王の食卓に美味を供える。
創世記 49:21ナフタリは解き放たれた雌鹿美しい子鹿を産む。
創世記 49:22ヨセフは実を結ぶ若木泉のほとりの実を結ぶ若木。その枝は石垣を越えて伸びる。
創世記 49:23弓を射る者たちは彼に敵意を抱き矢を放ち、追いかけてくる。
創世記 49:24しかし、彼の弓はたるむことなく彼の腕と手は素早く動く。ヤコブの勇者の御手によりそれによって、イスラエルの石となり牧者となった。
創世記 49:25どうか、あなたの父の神があなたを助け全能者によってあなたは祝福を受けるように。上は天の祝福下は横たわる淵の祝福乳房と母の胎の祝福をもって。
創世記 49:26あなたの父の祝福は永遠の山の祝福にまさり永久の丘の賜物にまさる。これらの祝福がヨセフの頭の上にあり兄弟たちから選ばれた者の頭にあるように。
創世記 49:27ベニヤミンはかみ裂く狼 朝には獲物に食らいつき夕には奪ったものを分け合う。」
創世記 49:28これらはすべて、イスラエルの部族で、その数は十二である。これは彼らの父が語り、祝福した言葉である。父は彼らを、おのおのにふさわしい祝福をもって祝福したのである。
創世記 49:29ヤコブは息子たちに命じた。「間もなくわたしは、先祖の列に加えられる。わたしをヘト人エフロンの畑にある洞穴に、先祖たちと共に葬ってほしい。
創世記 49:30それはカナン地方のマムレの前のマクペラの畑にある洞穴で、アブラハムがヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになった。
創世記 49:31そこに、アブラハムと妻サラが葬られている。そこに、イサクと妻リベカも葬られている。そこに、わたしもレアを葬った。
創世記 49:32あの畑とあそこにある洞穴は、ヘトの人たちから買い取ったものだ。」
創世記 49:33ヤコブは、息子たちに命じ終えると、寝床の上に足をそろえ、息を引き取り、先祖の列に加えられた。
50章
創世記 50:01ヨセフは父の顔に伏して泣き、口づけした。
創世記 50:02ヨセフは自分の侍医たちに、父のなきがらに薬を塗り、防腐処置をするように命じたので、医者はイスラエルにその処置をした。
創世記 50:03そのために四十日を費やした。この処置をするにはそれだけの日数が必要であった。エジプト人は七十日の間喪に服した。
創世記 50:04喪が明けると、ヨセフはファラオの宮廷に願い出た。「ぜひともよろしくファラオにお取り次ぎください。
創世記 50:05実は、父がわたしに誓わせて、『わたしは間もなく死ぬ。そのときは、カナンの土地に用意してある墓にわたしを葬ってくれ』と申しました。ですから、どうか父を葬りに行かせてください。わたしはまた帰って参ります。」
創世記 50:06ファラオは答えた。「父上が誓わせたとおりに、葬りに行って来るがよい。」
創世記 50:07ヨセフは父を葬りに上って行った。ヨセフと共に上って行ったのは、ファラオの宮廷の元老である重臣たちすべてとエジプトの国の長老たちすべて、
創世記 50:08それにヨセフの家族全員と彼の兄弟たち、および父の一族であった。ただ幼児と、羊と牛の群れはゴシェンの地域に残した。
創世記 50:09また戦車も騎兵も共に上って行ったので、それはまことに盛大な行列となった。
創世記 50:10一行はヨルダン川の東側にあるゴレン・アタドに着き、そこで非常に荘厳な葬儀を行った。父の追悼の儀式は七日間にわたって行われた。
創世記 50:11その土地に住んでいるカナン人たちは、ゴレン・アタドで行われた追悼の儀式を見て、「あれは、エジプト流の盛大な追悼の儀式だ」と言った。それゆえ、その場所の名は、アベル・ミツライム(エジプト流の追悼の儀式)と呼ばれるようになった。それは、ヨルダン川の東側にある。
創世記 50:12それから、ヤコブの息子たちは父に命じられたとおりに行った。
創世記 50:13すなわち、ヤコブの息子たちは、父のなきがらをカナンの土地に運び、マクペラの畑の洞穴に葬った。それは、アブラハムがマムレの前にある畑とともにヘト人エフロンから買い取り、墓地として所有するようになったものである。
創世記 50:14ヨセフは父を葬った後、兄弟たちをはじめ、父を葬るために一緒に上って来たすべての人々と共にエジプトに帰った。
創世記 50:15ヨセフの兄弟たちは、父が死んでしまったので、ヨセフがことによると自分たちをまだ恨み、昔ヨセフにしたすべての悪に仕返しをするのではないかと思った。
創世記 50:16そこで、人を介してヨセフに言った。「お父さんは亡くなる前に、こう言っていました。
創世記 50:17『お前たちはヨセフにこう言いなさい。確かに、兄たちはお前に悪いことをしたが、どうか兄たちの咎と罪を赦してやってほしい。』お願いです。どうか、あなたの父の神に仕える僕たちの咎を赦してください。」これを聞いて、ヨセフは涙を流した。
創世記 50:18やがて、兄たち自身もやって来て、ヨセフの前にひれ伏して、「このとおり、私どもはあなたの僕です」と言うと、
創世記 50:19ヨセフは兄たちに言った。「恐れることはありません。わたしが神に代わることができましょうか。
創世記 50:20あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。
創世記 50:21どうか恐れないでください。このわたしが、あなたたちとあなたたちの子供を養いましょう。」ヨセフはこのように、兄たちを慰め、優しく語りかけた。
創世記 50:22ヨセフは父の家族と共にエジプトに住み、百十歳まで生き、
創世記 50:23エフライムの三代の子孫を見ることができた。マナセの息子マキルの子供たちも生まれると、ヨセフの膝に抱かれた。
創世記 50:24ヨセフは兄弟たちに言った。「わたしは間もなく死にます。しかし、神は必ずあなたたちを顧みてくださり、この国からアブラハム、イサク、ヤコブに誓われた土地に導き上ってくださいます。」
創世記 50:25それから、ヨセフはイスラエルの息子たちにこう言って誓わせた。「神は、必ずあなたたちを顧みてくださいます。そのときには、わたしの骨をここから携えて上ってください。」
創世記 50:26ヨセフはこうして、百十歳で死んだ。人々はエジプトで彼のなきがらに薬を塗り、防腐処置をして、ひつぎに納めた。